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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第268回:自分はイイけど、お前はダメの論理

更新日2012/07/12



お酒やタバコを未青年が飲んだり吸ったりしたとき、本人はタバコをふかし、お酒を飲みながら、大人たちは、「お前にはまだ早い、まだそんなものに手をつけるな」と平気で言います。青少年に悪いことなら、大人にとっても悪いに決まっているのですが、色々理屈をつけて、成長過程の身体には毒で、脳が固まり判断力が付くまではダメと言い訳をしています。

北朝鮮(朝鮮人民民主義共和国)の長距離弾道ミサイル(人工衛星と彼らは呼んでいますが)は予想通り、見事に失敗しました。NASAのトップクラスの要職にいる、高校時代の同級生が言っていましたが、元々制御というのかしら北朝鮮のコントロール装置はラジコンに毛が生えた程度のものらしく、どこに落ちるか分からない怪しげなロケットのようでした。

以後、彼からの受け売りになりますが、元々ミサイルと人工衛星打ち上げのロケットの違いはほとんどないのだそうです。どのような目的で使うかで呼び名が変り、誰が打ち上げたかで、世界の世論も極端に動く性格のものだというのです。

日本でも可愛らしい花の名前をつけたりして、うめ、もも、アジサイ、ひまわり、めどり、さくら、ふじ、など、30個以上の人工衛星を打ち上げています。気象観測用の停止衛星が大半を占めていますが、中には鯨の生態観測のための人工衛星もあります。日本はすでに高度の技術を持っており、もしその気になれば、人工衛星の発射、コントロール技術は、簡単に長距離ミサイルに転用できるでしょう。

日本がいくらたくさん人工衛星を打ち上げても、国内、国外から非難の声は上がりません。それは日本が平和国家であり、長距離ミサイルに転用しない……と認められて(ある程度かな?)いるからでしょう。

4月20日にインドで長距離弾道ミサイル"アグニ5号"の打ち上げに成功しました。このアグニ5号は5,000キロ離れた標的に当てることができるそうで、今までのアグニ4号が3,500キロの射程距離だったのを大幅に延ばしました。

このミサイル実験の成功を祝って、インドではお祭り騒ぎをしたそうです。考えて見れば、そんなに深く考えなくても、インドでは国民の半数近くが赤貧で、5歳未満の子供の40%が栄養失調だという、とんでもな格差社会です。

それが、同じことを北朝鮮がやると、世界中からケンケンゴウゴウの非難の嵐になりました。インドのミサイルは、インドがすでに核兵器原子爆弾保有国であり、アグニ5号の先に原子爆弾を付ければ、恐ろしいことになるはずなのですが、中国以外の国はどこも、誰も、非難したり騒ぎません。これは北朝鮮が何をしでかすか分からない、ティーンエイジの不良のように世界中が見ているからでしょうね。日本のことわざで言えば、『気違いに刃物』です。同じ"モノ"を持っても、インドは中国を牽制してくれるから、やらせておけということになるのでしょうか。

核兵器も、イスラエルが持つのは構わないが、イランが持つのは困る……というのはどうも理屈が通りません。私は、だからイランも核兵器を持つべきだと言っているのではなく、イランもイスラエルもアメリカもロシアも中国、インドも今持っている核兵器はすべて破棄すべきだ……と思うのです。

広島型のはウラニュウム、長崎はプルトニュウムの原子爆弾でしたが、世界中の原始力発電所で使われいるのは、プルトニュウムが主流で、日本の原発もすべてプルトニュウムです。そして今、日本の原子力発電所から出る高濃度のプルトニュウム廃棄物は、その気になれば、すぐに原子爆弾に転用できるのだそうです。それが45トンあるそうですから、そうなると、長崎の原子爆弾規模で4,000発の原爆を作ることができます。

日本が戦後、長いこと唱えていたお題目"非核三原則"が全くのデタラメ、ウソだったことは、今では、誰でも知っています(それにしても、ウソをついていた政治家を徹底的に追及、弾劾しないのは、日本の政治の特徴なのかしら、ウソも方便? なのかしら)。

原子力の平和利用と核兵器転用は、もろ刃の刀のようなもので、一枚のトランプの裏表と言っていいでしょう。やはり、核は平和利用も含めこの世からすべてなくさなくてはならないものの筆頭です。自分はいいけど、お前はダメ式の奇妙な理論を捨て、イランに許さないなら、イスラエルも核を捨て、同時にアメリカ、ロシアも捨てなければなりません。"核"は、まだ人類がコントロールできる"火"ではないのですから。

 

 

第269回:リス撲滅作戦

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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