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■インディアンの唄が聴こえる
 

第4回:インディアンの社会 その2

更新日2023/02/02

 

もう一つ、私たちに強い印象を与えた踊りに“太陽の踊り”がある。
太陽の踊りは“ウィワァンヤグ・ワチピ”(太陽を見つめる踊り)というダコタ族の行事で、サンダンスとしてインディアンの象徴的な祭りのようにとられているが、ダコタ系族以外の部族では行われていなかった。この祭り、行事は4日間続き、最終日の4日目の朝、朝日を拝み、それから、男どもは鋭く尖らせた木の棒を胸や背中に差し通し、その木の棒に革紐を結び、神の木から吊り下げられたり、揺らしたりする。あるいは、革紐にバッファローを結びつけ、それを引きずって行進したりした。この自虐的であり、いかに苦痛に耐える能力があるかを誇示する行為は、映画『馬と呼ばれた男』(A MAN CALLED HORSE;リチャード・ハリス主演;1970年)で再現された。

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この絵は1833年にジョージ・カトリンが、マンダン族のサンダンスを描いたもの

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部族や年代が不明のサンダンスの写真

これが随分原始的で野蛮な風習だとばかりは言えない。スペインはセビリアのセマナ・サンタ(聖週間;4月前後)で、キリストが処刑された時の苦悩を自身で体現しようと、男どもがイバラの冠を被り、裸の上半身の背をトゲ、あるいは鉛の玉の付いた鞭(むち)で自ら激しく打ちながら行進するのを見たことがある。まさに血だらけの背中、イバラの冠で刺さったトゲから流れる血が額、顔を覆っていた。こんな血生臭いカトリックの行事が現在でも行なわれている。
 
ポーニー族(ネブラスカ州)にも太陽の踊りのバリエーション的な儀式がある。これは“夜明けの明星”と呼ばれる儀式で、成人に達した若者に“夢”を通してお告げがあり、お告げに従い、敵陣の女性、未婚の20歳未満の処女を夕刻、金星が輝き始めた時に誘拐してくる。その女性を4日間、新しく建てたティピー(インディアン式のテント小屋)に閉じ込め、酋長や呪術師、シャーマンが集まり、祈りを捧げ、タバコを吸い、神への詩を唄う。

4日目に囚われの女性の半身を赤く、半身を黒く塗られ、外に運び出され、4本の丸太に女性を縛り付け、夜明けの明星が輝き出すと同時に、女性、生贄になる犠牲者の両脇、股を松明で焼き、夢のお告げがあった部族の男(シャーマンがやることが多かったようだが)が弓で女性の心臓を射る。

シャーマンは犠牲者の胸から腹にかけて切り開き、その血を自分の顔、体に塗りつける。同時にバッファローの心臓と舌を女性の下に置き、女性の血がバッファローの心臓と舌にかかるようにしながら、焼き上げる。まるでバーベキューソースでもかけるように…。シャーマンはそのバッファローの心臓と舌を“夜明けの明星”に捧げる。

これが終わると同時に、部族の全員、女、子供までが、すでに息絶えた女性に弓矢を打ち込み、犠牲者の周りを4回まわり、それぞれの家、ティピーテント小屋に帰る。この後、シャーマンは女性から矢を引き抜き、死体を木枠から外し、安置され、狼、ハゲ鷹、ボブキャット、狐、カラスなどがやってきて、後始末する。

これは一種の豊猟を祈る儀式なのだろうか。その儀式の締めくくりは、数日間の飽食と乱交になるのだが、これも子孫繁栄のためととれなくもない。流石に、ハリウッドもこの儀式は映画化しなかった。あまりにも血生臭く、残酷であり、第一、主演女優が見つからなかったのだろうか…。

この儀式を止めさせようようという運動が起こった。もちろん、ヨーロッパからの移民、キリスト教徒たちによるものだ。記録によれば、1817年にコマンチ族の女性が木に縛り付けられ、生贄にされそうになったところを、ポーニー族の一派、スキディー族の若者が彼女の革紐を切り、救ったとある。

このような生贄を伴う儀式をもってして、インディアンは野蛮で原始的な人種だとはもちろん言えない。

もう一つ、インディアンの象徴的なイメージは、敵の頭の皮を剥ぐことだ。頭の皮を剥ぐ習慣は、狩猟インディアンの間で広く見られた。部族間の闘争で勝った者が、負けた者の頭の皮を剥ぐのだ。

日本のサムライ時代に、相手の首を掻く慣わしと似ている。戦国時代の大掛かりな戦争では、相手の首を幾つ取ったかが褒賞に大いに影響するので、生首集めは重要だった。戦争の首謀者にとって、これほど効率の悪い戦い方はなく、なんとか首取り合戦を止めさせようとしている。

頭の皮は周囲にクルリと切れ目を入れると非常に簡単に剥けるものだそうだ。私は何でも自分でやってみようをモットーにしてはいるが、私自身、頭の皮を剥いだことも、剥がれたこともない。剥がれてもよいようにハゲてはいるのだが…。
 
この習慣は、白人に恐れられた。頭の皮を剥がれるのは男子、戦士だけなのだが、この風習はアメリカ奇兵隊の間に広がり、インディアンに対してだけではなく、南北戦争の時、両軍とも相手の性器を切り取り、それをその相手の口に突っ込むような蛮行が見られた。確か、本多勝一著『戦場の村』にあったと記憶しているのだが、ベトコンの耳を削ぎ落とし、針金を通して、戦車に飾っていた米軍の記述があった。

インディアンの風習は、奇兵隊を経て立派に米軍に引き継がれているのだ。奇兵隊は時にインディアンの女、子供まで虐殺した。そして、インディアンが俺たちの頭の皮を剥ぐなら、俺たちはお前たちの性器を切り取ってやる、とばかり、女性の性器まで切り取り、それをサドルホーン(馬にかけるサドルの前方に子供の握り拳のようにとび出ている突起物)に引っ掛け、勲章とした。

 

 

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佐野 草介
(さの そうすけ)
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海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

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