■くらり、スペイン〜イベリア半島ふらりジカタビ、の巻

湯川 カナ
(ゆかわ・かな)


1973年、長崎生まれ。受験戦争→学生起業→Yahoo! JAPAN第一号サーファーと、お調子者系ベビーブーマー人生まっしぐら。のはずが、ITバブル長者のチャンスもフイにして、「太陽が呼んでいた」とウソぶきながらスペインへ移住。昼からワイン飲んでシエスタする、スロウな生活実践中。ほぼ日刊イトイ新聞の連載もよろしく! 著書『カナ式ラテン生活』。


番外編:もろモロッコ!(1)

番外編:もろモロッコ!(2)

 

■移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻(連載完了分)

■イベリア半島ふらりジカタビ、の巻(連載完了分)

■更新予定日:毎週木曜日

番外編:もろモロッコ!(3)

更新日2004/02/26

12月27日

まずはマラケシュの中心、ジャマ・エル・フナ広場へ。道に迷っては通りすがりのひとに「フナ!」と叫び、あっちかこっちかと指差して反応を見る。途中でキャリーが「ヘイヘイ思い出した、フランス語で『左』は『アゴーシュ』よ!」と叫んでからは、指差し+「左?」で無理矢理コミュニケーション。結局、旅の最後まで「右」は思い出せなかったが、なんとかなるもんす。

さてフナ広場に出ると、ちょうど屋台を設営中。カタツムリ、ドライフルーツ、オレンジ、串焼き、羊の頭、スープなど食べ物に応じて大きくブロック分けされていて、店番号とメニューの看板が掲げられている。114番にはなんと日本語のメニューが。そこのスタッフふたりはこちらを見るや、両手をあわせて「キャイーン」とやった。あぁあ誰だこんなこと教えたやつは、と天を仰ぎつつも、努力に敬意を払って笑顔で「またね」と退散。と、背後から彼らが「ヤクソコ、ヤクソコ!」と叫ぶ声が聞こえてきた。うーん、惜しいっ!

広場をぐるっとひとまわりしてからハリラ、というモロッコの代表的なスープの屋台に座る。味見ということでみんなで1杯だけ、2.5DH(1DH=12.4円なのだけど、面倒なので10円だと計算)。トマトベースの野菜ポタージュで、ヒヨコ豆や小さなパスタも入り、それにコリアンダーがたっぷり。初のモロッコ料理だったが、美味しいしボリュームもあるわと大満足。なんでも、ラマダン期間中の料理なのだとか。


やがて夕暮れが近づくにつれ、周囲の席がどんどん埋まっていく。観光客の姿も多いが、地元のひとらしい姿も本当に多い。屋台の隣では、火を吹いたり、ヘビやサルをなんかしたりと、コータローたち曰く「10年前とちっとも変わらん」大道芸を観客がぐるりと取り囲む。この輪にもまた地元のひとらしい姿が多くて、見飽きないのかと不思議不思議。

それからまたぶらぶらし、今度はしぶいおじいの姿に釣られて炭焼きの屋台に。3人でチキンとレバーの串を1本ずつ、と頼んだのに、注文をとるあんちゃんは「ハイ3人とも2本ずつで6本ね」などと調子良くとぼけたこと言う。すかさずコータローが「オッケー、じゃあチキンとレバーを2本ずつの4本で」と間をとって手を打ったのに隣でぶーぶー文句をたれると、「2本50円くらいでそげん必死になって慌つんなって」と大笑いされる。ハハ、それもそうだ。しかも結局、さらに追加しようかと思ったほど美味しかったのだった。


 調理するひとはみんな、白い帽子と白いエプロン。
 アルミ?のテーブルも一様に清潔なかんじだった。

周辺の建物は、広場を見晴らすテラス席が売り物のレストランが並んでいる。今夜はちょっとリッチに、そのうちのひとつでディナー。席に座ると、眼下にもうもうと白い煙を上げる屋台群とその間を埋め尽くす人々の姿が見え、そこから視線を上げると右手にすっと立つ美しいモスクの四角い塔が、そしてその遥か彼方にはかすかにアトラスの山々の稜線の下のあたりが見える。あいにく天気は曇りで、山の上の方は見えない。

英語メモ付きのメニューを見ると、大きく分けて、クスクスと、タジンと、ブロシェットと、ケフタという種別になっているらしい。クスクスは小麦で作ったご飯粒より小さな小さなパスタだということと、ブロシェットは串焼きだということはわかるが、あとはなんのことやら。隣ではキャリーが「イエーイ、タジーン、タジーン、美味しいよーう」と歌い、コータローが「さぁこれから毎日タジンタジン」と腕まくりする。なんだなんだ? ともかくビーフ・クスクスと、レモン・チキン・タジンを注文する。

待つことしばし、ウェイターが重そうに運んできたのは、土色の大きな陶器。円錐を伏せた形、というか、しゃぶしゃぶ鍋の真ん中のところのような形をしている。テーブルでその円錐部分がどけられると、砂場のお山のようにこんもりと盛られたクスクスが現れた。黄色いクスクスの上に、ニンジンやキャベツなどの野菜が重ねられている。さっそく三方からフォークでつつくと、真ん中から牛肉の塊りがごろごろ出てきた。添えられたスープをかけつつ食べる。意外にあっさりとした味で肉は柔らかく、う、まい! ちょうど、すごく美味いポトフ、の味だ。

夢中で食べているうちに、また同じ土鍋がやってきた。蓋を開けると、彩り良く盛り付けられた野菜が現れた。カリフラワー、ジャガイモ、ズッキーニ、ニンジン、オリーブ、レモンなどなど。そして野菜の下には、骨付き鶏モモ肉があった。これがまた……、う、まぁぁぁい! 本当に私は叫んだ。肉は香ばしくて柔らかく、とてもジューシーなのに適度に脂っけもある。土鍋のおかげか舌が焼けるほど熱く、もうアフアフヒャーヒャー言いながらなんだけど止まらない。すごいぞ、タジン。一気にファンになった。


 感激のレモン・チキン・タジン。
 汁はパンにつけて最後の1滴まで。
 あぁ、美味かったなぁ。

この2皿とインゲンのサラダ、それにジュース3つで料金は200DH。約2000円と考えるともちろん安いのだが、さっきの屋台のブロシェットが80本食べられると思うと高くもある。しかし料理は、本当に、ぶるぶる震えるほど美味しかった。鮮やかなイスラム風タイルで飾られたレストランの階段を降りながら「うぉぉぉタジンタジーン!」と叫ぶ私を見て、コータローが「良かったたい、明日からイヤでも毎日タジンぞ、好きなだけ食えま」とニヤリと笑った。


ところでホテルは、古い邸宅を改装したリアドというタイプ。パティオやイスラム独特の内装など、とても趣がある。今回泊まったところはメディナ(旧市街)の中にあってロケーションは最高。さらに、キャリーとコータローの部屋には暖炉があり、トイレやバスタブは階段を上った中2階になっていて、とくに素敵な作りだ。ただ雨で薪が湿っていたために暖炉の煙が上階にどんどん溜まってしまい、風呂の準備をしていたコータローは酸欠で倒れるところだったらしい。ベッドのある1階部分はパティオに面する窓が壊れていて閉まらないので、換気は問題なかったのだが。って、なんだかなぁ。

そしてこの日感心したのは、コータローたちがトランシーバーを持ってきていたことだった。お互いに部屋に電話はなかったから、これで連絡を取り合った。夜はつけっぱなしにしておいたから、強盗なんかに入られたときにもちょっと安心だ、……ちょっとだけどね。モロッコ旅行にはトランシーバーをどうぞ。あとレモン・チキン・タジンを食べるのを忘れずに!

HOTEL DATA
Mouassine, Marrakech
doble with breakfast 100euros
single with breakfast 60euros

…つづく

 

 

 


 
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