原園 綾
(はらぞの・あや)

1967年生まれ。世田谷区立赤堤小卒。ニューヨーク在住。大きくなったら何になろうかな?

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第9回:フィンチのくちばし

何十億年という時間のなかで刻々と進化は続いているといっても、何十年と言う単位で生きているヒトにとってその進行を目の当たりにすることができるのかしらん? たしかに今の地球温暖化は実感できるよね。でもヒトを含めて動物の変化の様はあまりにも長い時間がかかる微妙な作業のようで、やはり化石と遺伝子の中だけ…と思いきや実は進行をちゃんと観察できる例もあるのだった。

有名なのはガラパゴス諸島にいるフィンチという手のひらで包み込めるくらいの小鳥。もともとダーウィンが進化論を編み出す過程で重要な役割も果たしてた鳥。

餌の住み分けをする過程で、くちばしの形を巧妙に変えていった。固い実を食べるものは頑丈な厚みのあるくちばし。密を吸うものは尖った細いくちばし。昆虫類を捕るものは平たいくちばし。などなど。その島の1つで20年以上フィンチを観察してきた学者は、気候の変化により餌の分布も変わり、従ってくちばしにも変化が起こるのを測定できたの!

干ばつがおこると柔らかい小さな種子類は減少して、大きめの固い種子が主な餌となり、くちばしの丈夫なものの方が餌にありつけ生き延びた。すると、次なる世代のくちばしのサイズの平均値が数パーセント拡大した。実際には1ミリぐらいの変化だけれど、小鳥にとっての一ミリは大きいぞ!これはいわゆる「自然選択」が働いたのです。

普通同じ種類の動物のなかでもいろいろな(体のサイズや形、色など)個体差がありますが、環境が変わるとそのなかから新しい環境に一番適応するタイプが、子供を多く残せて、あとの世代にも遺伝子をもっとも確実に伝えることができるという行程です。また数年後、エルニーニョで8カ月雨が降り続いた年には、今度は小さい方が有利な逆の現象が観測されたんです。「進化」って一つの方向に、まるである理想的な型に向かって進んでいるような言葉にきこえるけど、生物界での進化は何も長期的な展望もなく、実はその場(環境)しのぎの連続だなんて!まるで私の一夜漬けのようね。

そして、別の進行形。オットセイが陸上から海に戻っていったように、もしかしたら海に戻るかも知れないと思われている哺乳類がいる。スコットランドの海岸に面した農場のヒツジは、もう数百年来、海に入って海藻を食べている。ちょっと浅瀬を泳いでいって海藻を探したりもしてるらしい。はてまたタイの島では泳ぐブタ。珊瑚礁のビーチを水中に首を突っ込んで魚などの餌をあさるらしいぞ。まあこれらは過渡期の状態といえるのかな。

そしてヒトの進化は?最近の日本人も若い子はスタイルいいなあ、、なんてのが進化と呼べるかわからないけど、ある宇宙飛行士が面白い将来像を語っていた。 宇宙世代がくれば、今まで地球上の全生物にかかっていた重力から解放される。下に向かって集まりやすい血液を循環させるポンプ役の心臓は縮小するだろう。食べ物を飲み込み消化する過程も重力から解放され口と肛門の位置が上下である必要もなくなるだろう。そして大気圏外の放射能から守る強い皮膚は、昆虫のような堅さになるかもしれない。無重力状態では体重を支える足はもう重要でないので、むしろ手のような足になり、手のひらには吸盤のようなものがあれば体を固定できる。異性の魅力はそんなペトペトした手や足のひらに見い出されるかも。

ふふふー結構すごいことになりそうですな。今後の環境次第でっせ。ペトッ。

 

→ 第10回:NYも秋

  

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