■Have a Nice Trip! ~もうひとつの生き方。日本を離れて……

安田 修
(やすだ・おさむ)


1958年、神戸生まれ。ルポライター、JTB 系広告代理店(マーケティング・制作)等を経て、現在はフリーとしてライターや出版企画などのプランナーとして活躍する。世界の辺境が大好きな現役バックパッカーで、ネットサークル「海外に住もう会」を主宰している。世界各国の移住情報や長期旅行の情報をまとめた「海外移住情報」をネットで公開中。
著書『日本脱出マニュアル』


第1回:ベトナム・ホーチミン
第2回:中国・大連
第3回:フィリピン・セブ島
第4回: ネパール・カトマンズ




第4回: ネパール・カトマンズ

更新日2002/04/11 


世界中からバックパッカーが集まるネパールのカトマンズ(Kathmandu)。タメル地区の中心には、安くて美味しいと評判の日本レストラン『味のシルクロード』が、日本人の憩の場になっている。人気の理由は日本の雑誌や新聞が揃い、何よりもおいしい日本米を輸入して出していること。久しぶりにおいしいお米が食べたくなり訪れると、関西の若い女の子Nさんがテキパキと働いていた。

「何度かネパールに来ているうちに、ここのオーナーさんと親しくなって、ボランティアで手伝っています。無給だけど、食事と住居が無料なので助かっているんですよ」

ネパール人スタッフにあれこれ指示を出している姿は、手伝っているというよりは、仕切っているといった感じ。23歳位だろうか、とても感じの良い女の子。
いろいろ聞いてみると、カトマンズに数多くある日本レストランの中で人気を維持するには、本物の日本米と日本の調味料は絶対に欠かせないという。もちろんNさんは調理スタッフに日本の味やメニューをいろいろ伝授しているとか。

「いつかはネパールで観光客向けのお店を出したいと思っていて、今度ネパールに来る時はオーナーの薦めもあって、学生査証で滞在する予定です。ネパールは学費も安いし、ネパール語も学べて長期滞在するには最適ですから…」

またNさんには、起業をアドバイスしてくれる女性の良き友人もいた。そのネパールの友人は在日経験3年、日本語を学びながら渋谷の居酒屋でアルバイト。もともとネパール人は日本人に似ているものの、彼女は特に色が白いために、どこからみても日本人。よく間違えられて日本語で話しかけられるらしい。今は日本で貯めたお金を元手に、近くの比較的大きなゲストハウスの庭を借りて、家族でガーデンレストランを経営。

訪ねて行くと、日本人を対象にしていないので日本人客はいなかったものの、イギリス人やフランス人で込み合っていた。おいしいヨーロピアン・デザートが人気だという。

「彼女にはネパールでビジネスするために、いろいろアドバイスしてもらっているんです。観光客の目からは分からなかったことも色々分かってきて大変。でもネパールで生活しようと思ったら収入が必要ですし、それにはパートナーと一緒に会社を作って、会社形態にしないといけないので、ゆっくりと準備していこうと思っています」

ネパールは物価が安いので、3万円あれば1ヶ月は充分に生活可能。20万円程度の資金で、小さなお土産屋さんを遊び気分で開いている日本人もいたりして、お金がかからないのが魅力のひとつ。しかしそれだけで観光客にうけているわけでもない。

「私も初めは物価が安いのが一番の魅力でした。でも滞在しているうちに、宗教的な部分も分かってきて、色々興味が尽きないというか、奥が深いというか、いつまでたっても全然飽きないんですよね。もともと好奇心が旺盛な方なので、不可解なことが多いと、よけいに興味が湧いてくる感じかな。もちろんカースト制度のような身分制度があったりして、決して理想の国ではありませんが…」

好奇心にこだわる、日本人のひとつの生き方がここにあった。

 

→ 第5回:メキシコ、オーストラリア