第592回:アメリカ駐留軍と“思いやり予算”
アメリカの軍隊が最も多く駐在している国はどこでしょうか? イラク、アフガニスタン? とんでもありません、圧倒的に一番多くアメリカの軍人が駐留している国は日本なのです。
日本に駐在しているアメリカ軍人は53,660人もいます。アフガニスタンですら14,000人、イラクは5,200人で日本に駐留している米軍がダントツに多いのです。数字だけみると、アフガニスタンより、日本を統治、制圧するのために、大掛かりな軍隊が必要なようにさえ見受けられるのです。
日本にアメリカ軍最大の軍事基地があるのは、ベトナム戦争、朝鮮戦争があったからだと、もっともらしい理由付けをしていますが、ベトナム戦争が終わってからほぼ半世紀、50年近くにもなるのですから、そんな理由は成り立ちません。
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の脅威が増してきたからだ…と言うのもおかしな話で、日本にとって米軍基地は格好の攻撃目標になるのは当たり前のことですから、抑止力というより、爆弾庫を懐に抱えているようなものです。それに万が一、何かが起こった時、アメリカが本気で日本を守る可能性は、それこそ万に一つもありません。日本は手の良い人柱、イケニエになるだけです。アメリカの誰が太平洋を渡ったはずれにある小さな島国のことなとかまうもんですか。
日本にアメリカ最大の海外軍事基地があり、最多の兵隊さんを置ている理由ははっきりしています。日本人のお上に弱く、官僚、権威、権力に弱い性格のためです。アメリカさんにNOと言えないからです。おまけに信じられないことですが、日本がアメリカ軍にいてもらうために莫大なお金を支払っているからです。日本を守ってくれてどうもありがとう、感謝の気持ちを籠めて…とばかり大金を払っているのですから、アメリカ軍にとってこんな美味しい話はありません。
こんな負担金を日本では“思いやり予算”と公式に名付け、年に5,000億円もアメリカに払っているのです。それは、在日米軍の経費総額の75%近くになります。“思いやり予算”は防衛庁の予算の中に在日米軍駐留経費負担として組み込まれています。機密ではなく、誰でも覗くことができる数字では、沖縄特別対策費120億円、米軍再編(基地を移転したり、整備するための費用)が890億円、基地移転のための費用も日本モチなのです。その他、こもごも気前良く払っています。呆れてモノも言えません。よほど日本にお金が有り余っているのでしょうね。それにしても、日本は大枚を払って、全く頼りにできない傭兵を雇っているようなものですが…。
考えてみるまでもありませんが、アフガニスタンやイラク政府が、アメリカ軍にお金を支払っていると思いますか、とんでもない、海外に軍隊を派遣し、常駐させると言うことは本国の莫大な負担になるのは自明のことで、軍事基地のあるフィリピン、タイ、インドネシア、それに中南米の国でも、アメリカに一銭も払ってなんかいません。
恐らくアメリカの歴史上、素直な弟分として日本みたいに、進駐軍にお金を払ってくれる国は、サウジアラビア、クエート、カタールなど産油国が主で、その金額は僅かなものです。NATO(北大西洋条約機構)の国々は、それぞれの国が軍備、軍隊を出し、割り当てられた軍備を出せない国は分担金を支払う形で軍備と予算のバランスを取ろうとしています。ヨーロッパに数箇所米軍の軍事基地がありますが、それはNATOの一部としてある、NATO軍の基地です。自衛隊員ですら、自由に出入りできない米軍基地のような存在ではありません。
しかし、元はと言えば、NATOは共産圏の脅威から資本主義国を守るため、ワルシャワ条約機構に対応するように作られたものですから、共産圏がうたかたの夢のごとく消えた今、そんな膨大な軍事機構が必要なのかは別問題ですが…。
おまけに、天文学的価格で古いモデルか最新モデルでも肝心の“機密”心臓部を抜いた戦闘機を買ってくれる国は日本の他にありません。
実際の調査権を持たずに、非核三原則というお題目だけ唱えていたのは、滑稽を通り越してマンガ的ですらあります。しかも、アメリカサイドの高官が空母に核を装備して日本に入港していたと当たり前のことを言った後で、日本がアワテル様はまるでお伽の国の話のようです。
私のようなドシロトで全くの門外漢からみると、日本の軍事外交は、多少のお金はあるけどお人好しで、気弱な末っ子のように見えてしまうのです。アメリカはただ日本の地理的な条件の元で、おとなしく何でも言うことをきく弟を利用しているだけなのです。ですから、日本の頭を飛び越えて、気弱な弟抜きに、いきなりトランプと金正恩とが仲良くなったり、ケンカしたりできるのです。
西欧の社会では、筋道を立てて自己主張できない人は全く尊敬されません。ナアナア話は通じませんし、相手がコッチを思いやってくれるなどということもあり得ません。厳然と、しかし具体的に自己を主張しなければ、単なるアホとしかみなしません。最近の流行り言葉のようですが“忖度”など西欧には存在しないのです。
日本にも、そんな外交交渉をわきまえた政治家、お役人がたくさんいると思うのですが、小村寿太郎*1(これはウチのダンナさんの入れ知恵です)のような優れた外交官、政治家がしばらく出ていないように見えるのです。
日本の外交を見ていると、なんだか歯がゆい想いにさせられ、ついつい書いてしまいました。トランプ大統領と安部首相が居座っている間は、沖縄の基地問題の解決は難しいでしょうね。新年なのに、ナンダカ暗い書き始めになってしまいました。ごめんなさい。
一日も早く米軍基地が日本からなくなることを願って、新年の挨拶に変えさせてもらいます。
-…つづく
*1:小村寿太郎;こむら・じゅたろう;1855‐1911(安政2‐明治44): 陸奥宗光と並び明治を代表する外交家。1884年に外務省に入った。96年には朝鮮公使としてロシアとの間に小村=ウェーバー協定を調印。1901年,第1次桂内閣の外相に就任し,日英同盟の締結,日露戦争の戦時外交処理にあたり、05年ポーツマス講和会議の日本全権として講和条約を結んだ。06年駐英大使。08~11年,第2次桂内閣の外相をつとめ、日韓併合を行い、また関税自主権を回復、条約改正事業を完成させた。<ブリタニカ国際大百科事典より抜粋>
第593回:Only in America ~アメリカならではのこと
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