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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第327回:リトルリーグ世界選手権

更新日2013/09/05



私はスポーツ音痴で、アメリカンフットボールのルールも知らず、スーパーボールも見たことが(もちろんテレビでも)なく、野球のワールドシリーズにどのチームが戦っているのかなども知りません。

ス-パーボールやワールドシリーズの前になると、学校の会議が始まる前や、ちょっと他の先生たちと(主に男性の先生ですが)打ち合わせをする時など、必ずその話が出てきます。私がプロスポーツの話題に全く付いていけないことを知ると、まるで宇宙人が目の前にいるように私を見るのです。

そんな私でも、先週の日曜日にあったリトルリーグの決勝戦の模様をテレビで、ツイツイ引きこまれて観てしまいました。決勝は日本の武蔵府中とアメリカ西海岸のチュウラヴィスタチームの間で戦われました。

まず、何より驚いたのは体格の差です。「これじゃ、まるで大リーガーと子供のチーム対戦だな」とウチのダンナさんが嘆いていましたが、実際、アメリカチームの投手は194センチの身長があり、他の選手にしろ180センチ以上がズラリとラインアップされているのです。

体重も少し太り気味の子?は88キロと出ていました。これが"リトル"とはとても言えない体格の子供ばかりなのです。13歳以下という制限ですから、12歳と何ヵ月なんでしょうけど、それはそれは大きいのです。

一方の日本チームの方ですが、可哀想なくらいチビでヤセッポチに見えてしまいます。小林一茶でなくても『やせカエル 負けるな 一茶ここにあり』と言いたくなります。

もう一つの大きな違いはヘアースタイルです。最初、私は元気のいい女の子もアメリカチームにいるのかと思ったほど、ほとんど肩まで届く金髪を野球帽からたなびかせている男の子が3人いたのです。もちろん、丸坊主にしている子はアメリカチームには一人もいません。

言うまでもないことですが、日本チームは全員丸坊主かそれに近いスポーツ刈りでした。さすがにバリカンに下駄を履かせない5厘刈り(と言うと、ダンナさんが教えてくれましたが)の子がいないだけ良かったかなとも思いますが、長髪の子が一人もいないのは、髪型にやはり何らかの規制、統制が働いているように見えます。

試合はどちらが勝っても、負けてもおかしくない接戦で、結果としては、チビ、ヤセッポチの日本チームがアメリカに勝ちました。負けたアメリカチームの子は泣いて悔しがっていました。私は、兼ねてからスポーツの勝った負けたで泣くのは日本人の専売特許だと思っていましたが、最近のスポーツイベントで涙はすっかり世界中に広がったようです。

それにしても、子供たちの豊かな表情は、嬉しさをこんなに素直に、美しく表すことができるものか…と観る人を感動させずにはおかきませんでした。これが高校や大学、プロのスポーツになると派手なパフォーマンスをしたり、自分をアピールし、下衆(ゲス)な精神に陥ってしまうのですが…。それは、まだ自意識が生まれる前の子供にだけ許される、全身から溢れ出る喜び、悲しみの表現なのでしょうね。日本の子供たちも、アメリカの子供たちも、とても良い表情をしていました。

このリトルリーグ・ワールドシリーズは、ワールド、世界選手権と呼んでいますが、実際にはアメリカ国内から8チーム、その他の国から8チームと、いたってアメリカ寄りの世界観のワールドです。もちろんアメリカ国内でも、その他の国でも予選を勝ち進み、出場権を獲得しなければならないのは同じです。

会場はいつもアメリカです。日本チームは何度も優勝していますから、3、4チームくらいワールドシリーズに出場する権利があって当然だと思いますし、国内の予選に参加したチームの数によってワールドシリーズの出場チーム数を決めていくのも一考でしょう。そうなると、国内予選に参加したチーム数が多いオーストラリアからワールドシリーズに出場できるチームが増えるでしょうね。

どうにも、アメリカだけが8チームも出場でき、他の国からブロックから1チームずつというのは納得できません。

しかしこうなると、すでにかなりお金、スポンサー、利権が絡んでいると言われるリトルリーグに、さらに政治を持ち込むことになるのでしょうか。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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