■ダンス・ウィズ・キッズ~親として育つために私が考えたこと

井上 香
(いのうえ・かおり)


神戸生まれ。大阪のベッドタウン育ち。シンガポール、ニューヨーク、サンフランシスコ郊外シリコンバレーと流れて、湘南の地にやっと落ち着く。人間2女、犬1雄の母。モットーは「充実した楽しい人生をのうのうと生きよう」!


第23回:ニューヨークの惨事について私たちができること
第24回:相手の立場に…

第25回:「罪」から子供を守る

第26回:子供に伝える愛の言葉
第27回:子供の自立。親の工夫

第28回:ふりかかる危険と自らの責任

第29回:子供はいつ大人になるのか? ~その1

第30回:子供はいつ大人になるのか? ~その2

第31回:子供はいつ大人になるのか? ~その3

第32回:Point of No Return
第33回:かみさまは見えない
第34回:ああ、反抗期!
第35回:日本のおじさんは子供に優しい??
第36回:子供にわいろを贈る
第37回:面罵された時の対処法
第38回:子供を叱るのは難しい!

 
第39回:トイレへの長き道のり

更新日2002/07/01 


ああ、またやって来ました。下の娘のトイレトレーニングを始めたのだ。2歳9ヶ月になっているので、この夏の間におしめをとってしまいたい。上の娘の時も2歳半頃の夏に取ったから、というのが私の目安でもある。

しかし、予想はしていたが、これがスムーズに行かない。上の娘の時はある日突然おしめを止めてパンツをはかせ、「これはおしめじゃないからね。おしっこしたい時はママに言ってね」 と告げた。当然、失敗はした。けれども、一番最初におしっこが出た時、両足をつたって流れるおしっこに心底びっくりした環は「あ!! ママ、なんか!! 」 と叫んだ。「たまちゃん、これがおしっこなんだよ。だからトイレに行こうね」 と言うと、案外スムーズに次からトイレを知らせるようになった。

もちろん、失敗はした。出先で失敗したこともある。でも、ペーパータオルと着替えを持参して、失敗のあとを片付け着替えさせた。そうすると、夏が終わる頃にはすっかり「終了」していた。

しかし、である。やっぱり、下の子は簡単には行かない。例えうんちが出ていても教えないのだ。家の中でおしっこが出るとさすがに知らせに来るが、外だと平気でそのまま遊んでいるのだ。ころ合いを見計らって「ふーちゃん、おしっこは? 」 と聞くと、後ずさりしながら、顔の前で手を振りながら「いいの。いいの」 と言う。「!?」 と調べてみると案の定パンツだけならず、スカートもしっかり濡れている。どういうこと!!??


どうやら、パンツを履いていると自分がとっても楽しく遊んでいる時にママがやって来てそれを邪魔する、くらいに思っているらしいのだ。だから、朝布のパンツを履かせようとすると「ミッキーがいいの~」 と言って紙おむつに走るのだ。


そこで、「トレーニングパンツ」 というのを買った。紙おむつなのだが、濡れた感じがわかる、というものだ。さらに、濡れると困った顔のくまのプーさんが浮かび上がるようになっている。「おしっこがでちゃうと、困ったプーさんがでてくるよ~」 と言うと、しばらくするとなんと自分から「困ったプーさん~」 と言って来た。内心「おお、これは成功か!? 」 と喜んだのもつかの間、困ったプーさんをつけたまま逃げ回り、頑としてトイレに行くことを拒むのだ。どうやら、困ったプーさんを見るのに飽きたらしい。なんてことだ。


アメリカではトイレトレーニングの手順は、言葉でコミュニケーションが取れるようになったらうんちから始めるようにすすめている。それは、おしっこがでる感覚よりもうんちが出る感覚のほうがはっきりと子供にわかるからだ。


そこで、友だちにシマジロウのトイレトレーニングのビデオを借りて来た。すっかりシマジロウのファンになった娘はシマジロウが「おしりがむずむずする~」 と言うのを真似して、ある日「ふみにょん、おしりがむずむずするの~」 と知らせた。そこで、トイレに連れて行くと、ちゃんとトイレで用を足した。


それから? もちろん、娘はシマジロウの真似をするのに飽きたらしい。もう、おしりがむずむずしようがおかまいなく、走り回って逃げている。


トイレへの道のりは、彼女にとっては限り無く遠いらしい。いや、トイレで用を足す、ということを目標にかかげていない彼女にとっては、どうでもいいことであろう。トイレへの道のりは私にとって、長いのである。はあ~。

 

→ 第40回:私はアメリカの病院が好きだ! ~その1