■もう一つの世界との対話 〜谷口江里也と海藤春樹のイメージトリップ
第一話 スカートの向こうの海との対話  2/4
更新日2005/08/04
 
もちろん行けるさ、誰だって、そこに行こうと思いさえすればね
現にこうして僕はもう君のところに、君はもう
こうして青い海の中にいるじゃないか。


確かにそうだと私も思った、そしてそう思ったとたん
私は自分がむかし、海に住んでいたことがあるのを不意に思い出した
冷たく澄んだ水の記憶や、揺らぐ光の美しさがハッキリと眼に浮かぶ
いつの頃かは分からない。それがどこだったかも分からない
生まれてから今日までの自分のことを振り返ってみれば
自分がかつて海に住んでいたという証拠は、何一つないけれど
それでも、私は自分が、かつては海に住んでいたのだと、そう確かに感じる
光が揺れる浅瀬で、下半身を海の水に浸し、裸の上半身を海の外に出したまま
一人で夕陽を見ながら、打ち寄せる波の音色を聴いている私がそこにいる
遠い遠い昔のようにも、ちょっと前のことのようにも思えるその記憶の中で
私は、ちょうど今の私くらいの年格好にみえる

どうしてだろう?
それが昔のことだとしたら、どうして私は子供じゃないんだろう?
それが最近のことだとしたら、どうして私はそれを覚えていないんだろう?
ほんとに確かに感じるけれど、あれは夢?

 
何を言ってるんだよ、君らしくもない
時間をひとつながりの紐のようなものだなどと考えるから
捨ててしまうしかない記憶や、思い出せない未来なんかが出来てしまう
切ってしまったらもうおしまいとか、逆にはたどれないとか、ひとり一本しかないとか
なんだか、ややこしいことになってしまう、ほんとに全く君までが……

魚にそういわれてしまったので、私はややこしいことを考えるのを止めて
私は自分が海の中に住んでいた時のことだけを、その記憶だけを
私の体が覚えている感触だけを、一生懸命思い出してみることにした
するとひとつ、とても確かな、一つの場面を思い出した

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『もう一つの世界との対話』
定価 2,415円(税込み)
著者 :谷口江里也/TEXT 
カイトウハルキ/クレイドール
発行:(株)エスプレ
項数:247頁


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