第846回:急成長のビックビジネス
コロラド州がマリファナを合法化したのは2014年のことです。認可を受けたマリファナ販売店だけが売ることができるのですが、それに消費税(これは地元、郡に行く)、加えて州が25%の税金を掛け、その税収入はすべて教育関係、学校、図書館、公園などに振り向ける法案を敷き、これがとても上手くいっているので、今では多くの州が、何もコロラド州だけに旨い汁を吸わせておく手はないとばかり、マリファナ公認を打ち出ました。
今では医療用とレジャー用を併せ37の州で解禁、残りの州はどんな事情があろうが断固違法だとしています。それは30ビリヨンドル(300億ドル、4兆5千億円相当?)の大ビジネスで、ワシントン州の田舎でマリファナショップを始めた若いカップルの法的手続き、会計をみている知人が、ほんのちっぽけな店での売り上げは、彼が会計弁護士をしているのがバカらしくなるほどだ、彼らは2、3年で億万長者の仲間入りをするぞ、とため息をついていました。
マリファナを違法だとする州は毎年減りつつあります。というのは、車社会のアメリカで2、3時間ドライブすれば他の州に行けるし、州をまたがるハイウエイで何百万台もの車を一々チェックするのは不可能だからです。他の州でマリファナ・ショッピングをして持ち帰り、家の中とか、内輪のパーティーでマリファナを吸うことができるからです。法の実定性から言えば、アメリカでマリファナ厳禁は意味がないことだと言い切って良いでしょう。
私が育ったミズーリー州の田舎では、野生の大麻、マリファナがそこここに生い茂っており、高校生の時、牧草畑の中で、男子生徒がマリファナの葉を集め乾燥させ、どうにか吸えるようなシロモノにしたのを回し吸い?したものです。
コロラド州ではマリファナショップに入る時、入口で20歳以上であることを証明する書類、多くの場合は運転免許証ですが、の提示を求められ、記載されます。私が入ったことがある3軒のマリファナショップは、内装がとても素敵で、明るく、商品というのでしょうか、品揃えが豊富で、タバコのように吸うものですら何十種類もあり、その他、マリファナのオイル、クリーム、それにクッキー、チョコレート、ドリンクとマ~呆れるくらい、何でもかんでもマリファナ入りの商品が並んでいるのです。打ち身や筋肉、関節痛用のマリファナ入りクリームを使ってみたところ、これは効きます。やたらにぶつけたり、捻ったりの多いダンナさん、「こんな良いものがあったのか」と、彼に取られてしまいました。
マリファナの身体に対する影響、習慣性のあるなしが良く議論されます。ですが、マリファナは他のドラッグと比べるのはチョット無理があります。ドラッグで命を落とす人は年間10万人に及びますが(2020年の総計)、統計上ではアルコールが引き金になり死ぬ人は14万人に及びます。交通事故を起こした件数でも、マリファナを吸いながらの交通事故はるかに少ないことを示しています。
極端な例かもしれませんが、コロラド州の北東のコーナーにあるセジウィック(Sedgwick)という小さな町、ほとんどゴーストタウンになりかけており、人口170人でしたが、マリファナで蘇りました。元々農業の町で、住民の離脱が進み、固定資産税、消費税の歳入が激減し、町の道路、上下水道の整備どころか運営することもできなかった…と、現在の町長さん、ダニー・スミスさんは語っています。
2014年の歳入は2万ドルで、2015年に3軒のマリファナショップがオープンし、そこから5%の消費税だけで24万5,000ドルになり、マリファナ様様だと喜んでいます。こんな田舎町に誰が来るものかと、最初にマリファナショップを開いたルーペ・カシアスさんは笑われたそうですが、今では隣のマリファナ違法州、ナブラスカ州から、マリファナ・ショッピング・ドライブに来るは、来るは、の大繁盛なのです。マリファナ違法のネブラスカ州が、コロラドの死にかけていた町を甦らせたのです。
ルーペさんも町長さんももちろんこんなブームはネブラスカ州、カンサス州がマリファナの合法化を打ち出せば、終わることを十分承知しています。町長さんは、今のうちに町を整備し、ルーペさんは預金し、ブームが終わる日に備え、今まで散々良い目をみたからそれで良いとアッケラカンとしています。
マリファナ絡みで大儲けをした人はたくさんいますが、マイケル・ディアス・リーヴァス君はデンバーでマリファナの宅配業を始め大成功しました。医療品、薬などをインターネットで購入することは合法ですし、身体が不自由でベッドを離れることができない人への薬の宅配は必要です。だから医療用のマリファナもそれに準ずるべきだと、何やら面倒な法的手続きを踏んで、医療用マリファナ配達業を始め、次第にその枠を広げ、コロラド州で合法的な商品であるマリファナを州内に限って配送し始めたのが大当たりを取ったのです。
日本では、マリファナはまだ麻薬の仲間ととられていますから、もし、マリファナを吸いたくなったら、コロラド州へ来て、大自然の中で存分に吸い、命の洗濯をし、ついでにマリファナの匂いの染み付いた衣服も洗い、日本へは一カケラのマリファナも持ち帰らないことです。日本ではマリファナを所持しているだけで、極悪犯罪人扱いになりますので、どうぞマリファナ・ツアーを組んでコロラド州に来てお金を落としていってください。
第847回:旅は道連れ、世は地獄…?
|