第314回:ゲイ(芸)は人を助ける?
今度新しく入ってきた演劇の先生とは、学部も違い、凡そ共有するところが全くない…と思っていたところ、なにやら盛んに私と話しをしたがり、親交を結びたがっているようなのです。どうしてか全く分かりませんでしたが、やっと理由?(らしきもの)を知りました。
この先生、博士号まで持っているのに、なんと"忍者"だったのです。そこで、日本語を教えている私に、なんとなく日本文化に共鳴し、分かち合いたいことのようですが、いくら私が日本語を教え、お相撲好きでも、忍者業界など知るわけがないでしょうに。それに、忍者というのは人に隠れて、見えないようにコトをナスのが身上ではなかったかしら…。でも、この先生、コトあるごとに、自分のワザを披露したがる傾向があるのです。
ハリウッド映画でも、時代考証などゼロで、日本刀を抜いてのチャンバラシーンや忍者もどきのアクションシーンが結構あり、そんな闘争シーンの演技指導もしていたと言うのです。
忍者道というのがあるのかどうか、物知りらしいうちの仙人に尋ねても、「ドッカの好き者が、勝手に団体を作って、ジャポニカに弱い、イカレタ外人相手に金儲けしているじゃないか?」と、なんとも頼りない答えしか返ってきませんでした。
ところが、その先生に言わせれば、なかなかどうしてマジメな"道"で、彼は何とか流忍術何段、師範の免許も日本で修業して取ったと言うのです。
その先生が中心になって、護身術、痴漢退治術を学生さんに教えたりしていますが、ほんの2、3時間の練習で、痴漢を撃退できるのかしら。かえって、"ナマ兵法、怪我の元"とも言うではありませんか…。
でも、実際に日本武道で泥棒を撃退した宣教師さんがいます。ユタ州のミラクリークという小さな町に住むケントさんは、朝、隣りの女性の悲鳴を耳にした息子さんが、お父さんナントカして…というのに素早く反応し、日本刀を抜き放ち、隣りの家に駆けつけたところ、男が隣りに住む女性のハンドバックを引ったくろうとしているところでした。
そこで、ケントさん、日本刀を大上段に振りかぶり、気合を入れ、「お前のDNAはすでにハンドバックに付いている、お前の車のナンバーも忘れない」と告げたのだそうです。
男はハンドバックを諦め、「俺はもう辞めた。逃げるよ」と車で逃走したのでした。
ケントさんは空手の黒帯で、居合い、剣道もこなす日本武道ファンの変った宣教師さんで、テレビカメラの前で素振りを披露し、どのように泥棒を追い立てたか実演していました。ケントさんも好き者なのです。そして、地元のチョットした英雄になったのでした。
この話にはまだオチがあり、件の引ったくり未遂の犯人、グラント・エッガトン、37歳はナンバープレートは覚えられているし、ハンドバックを盗ろうとした時に自分のDNAがバックに付いているし…というので、警察に自首したのです。
もっとも、引ったくり未遂くらいの事件は警察に届け出ても、報告は受け付けてくれますが、まず未遂犯の捜査などはしないし、お金と時間のかかるDNAの鑑定などしないのだそうです。
これは、ケントさんの気合、一本勝ちでしょうね。
第315回:ショッピングモールと駅前商店街
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