第14回:不自由の国アメリカ
更新日2007/06/07
日本の親しい友人がキューバに行ってきました。
アメリカ人にとってカリブ海は、我が家の池のような感じで(カリブの人々にとっては迷惑かもしれませんが)、大きなクルーズシップを格安で運行し、大量の観光客を送り出していますし、ホテル、飛行機込みのパッケージツアーは大盛況で、こぞってカリブの島々へ押しかけています。アメリカ人にとってのカリブは、日本にとってのグアム、バリ、ハワイ以上の存在でしょう。
しかし、アメリカ人のカリブ地図からキューバだけが抜け落ちているのです。これだけ自由、自由と叫ぶ同国人ですが、キューバに行く自由が私たちにはありません。これはキューバ政府の問題ではなく、逆にキューバでは外貨獲得のためどこの国からでも、外貨を落としてくれるなら、観光客大歓迎の政策ですが、問題はアメリカ政府なのです。
アメリカ人がキューバに行くことは、可能なことは可能です。こんな持って回ったような言い方をするのは、もしあなたがアメリカ政府で働いているお役人なら、大きなネットワークのジャーナリストなら(小さなミニコミ誌、社会共産系の新聞、雑誌はダメです)、それともキューバでなければできないテーマを抱えた研究者なら、アメリカの政府、大蔵省にお伺いを立てることができます。そうなのです。外務省や国務省でなく、大蔵省なのです。
アメリカはキューバに対して経済制裁を敷いており、敵対するキューバでアメリカ人がお金を使うことは許されません。とりわけブッシュ大統領になってからその締め付けが厳しくなり、キューバに行ったというだけでブラックリストに載り、そこでいくらかのお金を使ったとなれば、高額な罰金刑を課され、使った額によっては牢屋に入らなければなりません。
アメリカ人がキューバに合法的に行くには、キューバから滞在費はすべて私たち、キューバ側が持つ、というような、できるだけ公式の手紙を書いてもらい、それを申告書に添えて飛行機代以外キューバ本土では一銭も(1セントもかな)お金は使いませんと誓約しなければなりません。それで、キューバ行きが許可になるという保障はないのですが。
ニューヨークとマイアミからハバナ行きの直行便が出ているのに、それを使える人は政府関係の人や特別な人だけなのです。
もう一つのキューバへ行く方法があります。アメリカ政府にとっては不法行為ですが、カナダ、メキシコ、ドミニカ共和国、ベネズエラなどに一度入り、そこからハバナに飛ぶ方法です。キューバ政府でもアメリカ人旅行者を不憫に思ってか、パスポートにキューバ入国のスタンプを押さず、別の用紙に入国スタンプを押し、その紙を出国のとき提出するやり方で、大変気を遣ってくれているようです。
アメリカに帰ってきた時には、入国審査の係官に万が一、どこに行っていたのかと訊かれたら、カナダ、メキシコにズーッいた、怪しげな国になんか行ってませんよ、とウソをつくのです。そんなやり方で年8万人ものアメリカ人がキューバを訪れていると言います。ですから、アメリカのキューバ経済制裁は、観光の部分ではあまり成功しているとは言えません。
アメリカ人が大量に押し寄せる前に、マクドナルドやピッザハットが支店を開く前に、私も是非キューバに行き、島の隅々まで時間をかけてゆっくり回りたいのですが、万が一、私のキューバ行きがバレてしまったら、天文学的な罰金を払わされる上、確実に今の仕事(一応州からお給料が出ています)を失い、ブラックリストに載せられ、これまでのように気軽に日本に行けなくなるので、二の足を踏んでいるのです。
どこにでも行ける日本人が羨ましいです。
第15回:討論の授業