第273回:アメリカの乱射事件と銃規制
デンバー郊外のアウローラでの乱射事件の余韻がさめない8月5日に、またまた乱射事件が起きました。ミルウォーキー近くのオーククリークという町で、シーク教の教会に拳銃を持った男が入り込み、6人を殺害し、本人も駆けつけた警察に射殺されたのです。
無差別大量殺戮は、もうアメリカの年中行事、恒例の行事になってしまい、ギネスブックに載るために争っているのではないかと思えるほど増えていて、平均して月に1.5回以上起きているのです(1990年から2010年までの間)。もちろん、この数字には町の中での撃ち合い、強盗殺人など、膨大な数に及ぶ"毎日起こるチイサナ殺人"は含まれていません。
機関銃のように50発、100発と連射できる自動小銃を禁止しようという動きがあるにはあるのですが、とても大きな社会運動にまでにはなっていません。それどころか、大量虐殺のあった私たちが住むコロラド州の銃、弾薬の売り上げが、事件後70%以上売り上げを伸ばしているのです。拳銃、ライフル、自動小銃業界、弾薬を作っている会社は、時ならぬ好景気に沸いています。
アメリカでは、銃火器を誰でも自由に買えると言っていいでしょう。スポーツ用品店、大きなスーパーマーケット、インターネットのような通信販売では一応、無犯罪証明書が必要ですが、過去に窃盗、暴行などで逮捕され、実刑判決を受けていない限り、その場で購入できます。
たとえ前科何犯の人でも、新聞やインターネットの売りたし買いたしの欄で、無犯罪証明なしに買うことができます。奇妙なことに、この無犯罪証明書やバックグラウンドチェックは、中古の銃の売買には適応されないのです。したがって、アメリカ中の町で四六時中開かれている"ガン・ショー"(武器展示即売会)に大挙して参加している中古武器ディーラーから無制限に買うことができるのです。
そして、弾薬も通信販売、インターネットで無制限に買うことができます。アウローラの乱射事件の犯人、ジェームス・ホームズは6,000発以上の弾丸を彼のアパートに溜め込んでいました。日本では、自衛隊の駐屯地でもない限り、町の警察署、交番でもそんなに多くの弾薬を持っていないでしょうね。
アウローラでバットマンのジョーカーを気取り、無差別の殺戮を行ったジェームズ・ホームズは、すべて合法的に武器、弾薬を買っています。彼が兵器に使ったお金はおよそですが120万円から150万円くらいでした。アメリカで兵器を自由に買えるのは……お金があればという条件を満たすだけでいいのです。
どうして、アメリカだけが銃火器を野放しにしているのでしょう。理由は簡単です。 圧力団体のNRA(National
Rifle Association)がフンダンに国会議員にお金をばらまき、銃規制の法案をことごとく潰しているからです。NRAは1990年から2000年までの間に20億円相当のお金を政治資金として議員さんたちに手渡しています。その82%は共和党議員ですが、18%は民主党議員にも渡っています。NRAへの資金はもちろん、兵器会社、弾薬会社が豊富に提供しています。
アウローラでの乱射事件が起こった次の日、大統領のオバマと対立候補のロムニーは、それぞれ違う表現ですが、「このような事件はアメリカで起ってはならない、まことに遺憾だ」という見解を発表し、その翌日だけは選挙運動のキャンペーンで互いに相手の"悪口を言い、ノノシル"のを控えました。でも翌々日からは、相手候補を悪し様に言う、汚い選挙戦を展開しています。
アウローラで殺された12人の命と負傷した59人は、たった一日だけ選挙戦の休戦日を作っただけの影響しかアメリカ社会に与えませんでした。
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