坂本由起子
(さかもと・ゆきこ)

マーケティングの仕事に携わったあと結婚退社。その後数年間の海外生活を経験。地球をゴミだらけにしないためにも、自分にとって価値のあるものを探し出したいと日々願う主婦。東京在住。

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第17回:クリスマスの扉

カレンダーもいよいよ最後の一枚。気が付けば、街中がクリスマス一色になっている。ちかごろ寄り道が増えてしまうのは、あちこちで売られているクリスマスグッズを眺めてしまうからなのだ。 日本では恋人達が主役のように演出されているが、アメリカで過ごしたクリスマスは、家族の暖かさを感じる優しいものだった。

12月の声を聞くと、どの家もクリスマスの準備であわただしくなる。最初に用意するものといえばクリスマスツリーだろう。街のあちこちでツリー用に売られているのはもちろん本物のもみの木だ。背丈ほどの大きさはある立派なツリーは、幹からばっさりと切られて売っていた。「木がかわいそう」と思っていたら、クリスマスツリー用の畑(ツリーファーム)で栽培されたものだと聞き安心した。けれどやっぱり使い終わったら捨てるという行為になじめなくて、わが家ではフェイクのツリーを使っていた。 多くのアメリカ人は、もみの木の香りを嗅ぐと子供の頃の思い出とともにクリスマスがやってきたと感じるらしい。それと似たような気持ちになったのは、先日見つけたハーブのお店でクリスマスのポプリを見つけたときだ。もみの木やオレンジ、シナモン、クローブといった甘くて少しスパイシーな香りは、アメリカのクリスマスを思い出すのに充分で、懐かしさがこみ上げた。

ツリーを買ったら次はデコレーション。毎年ひとつひとつ家族の記念としてリースを増やしていく家、手作りのジンジャークッキーをいっぱい飾ったり、毎年テーマやカラーを決めてこだわりのツリーにしてみたり、家の数だけデコレーションがある。 わが家のツリーはというと、ガラスでできたオーナメントをメインに雪と氷をイメージしたツリーがお決まりになっている。これはアメリカに住む友人がクリスマスにプレゼントしてくれたもので、私の宝物のひとつだ。毎年それを飾るとき、彼女とそのファミリーを思い出し、私とアメリカを繋ぐ大切なものになった。

さて、週末ともなるとプレゼントの買い物客でショッピングセンターはどこも人で溢れていた。子供だけでなく、家族全員のプレゼントを買うためだ。そのプレゼントは、きれいにラッピングして、飾り付けの終わったツリーの下に置かれることになる。プレゼントを開けるのは25日の朝。それまではしばらくの間おあずけなのだ。25日の朝が待ち遠しくなるこの演出はなかなかだなと思う。そしてどこの家にも待ちきれない子供がいるらしく、別の小さなプレゼントをいくつも用意したり、ダミーのプレゼントをツリーの下に飾ったりしてプレゼントを開けてしまわないような工夫をしていた。

いつもの年なら今ごろはツリーを飾っているのだが、今年は飾れそうもない。わが家にやってきた子犬にいたずらされてしまうのが怖いのだ。ツリーがないから寄り道をしてしまうのではないかと気が付いて、せめて玄関だけでもと小さなリースを飾ってみた。これなら犬の心配はない。ドアの前で顔がゆるんでしまう。家に帰るのが楽しみになった。

 

→ 第18回:邂逅。電動歯ブラシ


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