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■イビサ物語~ロスモリーノスの夕陽カフェにて
 

第120回:モテる日本男児、モテない益荒男

更新日2020/06/04

 

日本でどこからどう見てもモテナイであろう男が、スペインにやって来て、俄然モテ始めることがママある。本国でそれなりに研鑽を積み、女性の扱いに長けた男が多少なりともスペイン語の会話を身に付けると、更に大輪の花を咲かせるのは分かるし、当然だと思うが、日本で女性に見向きもされなかったヤツ(なかばヤッカミでそう呼ぶ)、チビでデブ、しかもぶ男が、次々と若きセニョリータと結婚するのには、唖然とするばかりだ。しかも、相手のセニョリータたちはいずれもすこぶるつきの美形で、揃いも揃ってまるで人形のような容貌の持ち主なのだ。 

個人的にセニョリータと結婚した日本男子を十数人知っているが、彼等の結婚には一つのパターンがあることに気が付いた。日本男児の方は20代半ばから後半のバックパッカーなのに対し、セニョリータたちは申し合わせたように10代、それも15、6歳で結婚しているのだ。成熟した大人が年端の行かない娘っこを手篭めにしている構図なのだ。言い換えれば、あいつらは好奇心が先走った未熟な少女の幻想にうまく取り入っている…とヒガミたくもなるのだ。

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ロスモリーノスの海岸沿いに自生するサボテン

日本女性がスペイン男児と結婚している例も10組近く知っている。彼女たちの結婚は、日本男児とセニョリータとは違い、ヤマト撫子はスペインに来た時にはすでに大人で、20代のはじめから半ば、相手も職に就いている大人の場合がほとんどだ。

そして、ハッキリとした違いが10年後に現れる。
日本男児とセニョリータの離婚率が桁外れに多くなるのだ。うら若き10代の乙女が成熟し、彼女たちが愛を捧げた日本男児ロミオに対するジュリエット的感情が薄れ、現実を見る目ができてくるのだろうか。恋に燃えているティーンエイジャーに10年先を見ろというのはハナから無理な話だ。機会あるごとに寄り集まり、マージャンや呑み会ばかりやりっている夫に愛想をつかす日が来ることなど予想できるはずもない。

日本男児の方も、当初、情熱的な魅力溢れると思っていた乙女が、子供を持ち、20代になると太り始め、急激に口喧しいラテン系の女房に変身するのを、アレッ、こんなハズではなかったと気づくのだろう。若気の至りの結婚が、破綻する率は異常に高い。

こんなことを書く時、自分のことはサテオキ…という条件が付くものだ。私は、「オメーみたいな唐変木は見たことがない…」と言われていたことを付け加えておく。

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『カサ・デ・バンブー』からの海の眺め

20代後半のバックパッカー崩れ、長髪のヒッピーが15、6歳のセニョリータに舞い上がるのとは別に、本格的な日本男児のプレイボーイを二人知っている。Mさんはバルセロナにブティクを構えており、イビサファッションの買い付け、仕入れに年に何度かイビサを訪れる。その都度、どこでどう都合してくるのか、ファッショナブルな女性を連れて『カサ・デ・バンブー』にやって来るのだった。イビサで、レストランやバール、ホテルで働く男たちが漁っている女なら誰でもいいというような対象と違い、エッ? こんなエレガント、時には知的ですらある女性たちが簡単にMさんの軍門に下るものだろうか、と大いに私を羨ましがらせた。「どんな女性でも、イビサにバカンスに来るのは、程度の差こそあれ、太陽と海、そしてアバンチュールを求めているんだぞ。あとはアプローチの仕方だけだ…」とご指南してくれたものだ。

もう一人、Tさんはイビサ、それも『カサ・デ・バンブー』のあるロスモリーノス地区のピソ(アパート)に住んでいたから、より身近に、むしろツブサに動向を観察する機会があった。MさんもそうだがTさんはなかなかお洒落で流行に敏感だった。Mさんが短いイビサ滞在の間に、素早くしかも次々と女性をモノにするのと違い、Tさんは自分のピソに何ヵ月か、あるいは1年近く女性を住まわせた。

北欧やオランダ、ベルギーの女性が多かったと思うが、二人のスイス女性とはとりわけ長かった。なんでも最初のスイス女性が、あそこに行けばタダで泊まれるよと、彼女の友達を紹介し、送り込んだことのようだった。彼女たちは実にアッケラカンとしていて、長年付き合い、同棲している恋人同士のように振舞っていた。Tさんのアパートに女気が絶えることはないと言われていた。不思議なのは、女性がかち合うことがなく、一人が去ると、ハイ次とばかりニューフェイスが現れることだった。

日本男児ここにありと勇名を馳せたMさん、Tさんは、ともかく優しく、マメなことは傍目にも分かるのだが、どうにも女性にしか感じ取れない特別なフェロモンを体から発しているのではないか…と、ヒガミたくもなろうというものだ。二人はそれほどモテた。

スイスNo.2は胸も腰もバーンと張った大きな体に、そばかすだらけの小さな顔を載せた、とても明るい性格のエネルギッシュな女性だった。TさんとスイスNo.2は連れ立って時折開店前の『カサ・デ・バンブー』に降りてきた。Tさんはどこか疲れきった表情なのに比べ、No.2はほとんど陽気なほど、はしゃぎまくるのだった。 

Tさんはカウンターに陣取り、「イヤー、米の飯を食って育った人種は、とてもチーズ、牛乳、肉を食べつけている人間に適わない…。長生きしようと思ったら、西洋人と結婚したらダメだ…」とコボスのだった。 

彼の名言通りかどうか、Mさんは40代で亡くなり、Tさんは日本女性と結婚し、生きながらえている。

-…つづく

 

 

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佐野 草介
(さの そうすけ)
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海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

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