■くらり、スペイン〜イベリア半島ふらりジカタビ、の巻

湯川カナ
(ゆかわ・かな)


1973年、長崎生まれ。受験戦争→学生起業→Yahoo! JAPAN第一号サーファーと、お調子者系ベビーブーマー人生まっしぐら。のはずが、ITバブル長者のチャンスもフイにして、「太陽が呼んでいた」とウソぶきながらスペインへ移住。昼からワイン飲んでシエスタする、スロウな生活実践中。ほぼ日刊イトイ新聞の連載もよろしく! 著書『カナ式ラテン生活』。


■移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻(連載完了分)

■イベリア半島ふらりジカタビ、の巻
第1回:旅立ち、0キロメートル地点にて
第2回:移動遊園地で、命を惜しむ
第3回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(1)
第4回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(2)
第5回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(3)
第6回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(1)
第7回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(2)
第8回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(3)
第9回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(4)
第10回:奇才の故郷に、ごめんくさーい(1)

■更新予定日:毎週木曜日




第11回:奇才の故郷に、ごめんくさーい(2)

更新日2003/1/9


「ちょっとちょっと、見て見て」 窓際の席をじゃいけんでせしめた私は、『連想ゲーム』のワンワンニャンニャンのコーナーみたいに言葉を繰り返して叫んだ。呼んだのは渡辺(文雄)さんでも坪内(ミキ子)さんでも「いつも元気な水島さん、『ハイッ!』」でもなくて、三人席の真ん中で窮屈そうにしているダンナさん。

というのも、いったん地中海の上に出た飛行機の窓から眺めるバルセロナが、実に美しいのだ。手前は穏やかな青い海、奥には緑豊かな山並み、その間に上品な雰囲気の市街が広がっている。彼は精いっぱい首を伸ばしてその光景をしばし眺めると、「あぁ、神戸みたいや」とつぶやいた。あとで調べてわかったのだが、人口はどちらも約150万。立地だけではなく、規模もよく似ているらしい。

空港から市内までは、エアポートバスで片道3.6ユーロ(約430円)、所要時間30分ほど。うん。空港から市街地までは、これくらいの値段と時間だと不満ない。ちなみにマドリードの空港なんて地下鉄が開通したから、市内ならだいたいどこまででも片道0.95ユーロ(約115円)で行ける。治安面から深夜や早朝はタクシーをすすめるけれど、この安さと便利さは、すごくうれしい。ちょっと遠いのだよね、日本の国際空港の場合。


まず、とにもかくにもあのおかしな教会へ。その名も「サグラダ・ファミリア」という名の駅で地下鉄を降り、地上に出ると……。わ、いきなりあったよ。

サグラダ・ファミリアは、奇才ガウディの代表建築として世界でももっとも有名な建物のひとつ。建築開始は1882年。40年後、プロジェクト・リーダーのガウディが路面電車にはねられるという切ない死を遂げてからも、工事はずーっと続けられている。現在完成している部分は、まだ全体の3割くらいらしい。なんせ高さ170メートルになるはずの中央ドームが、まるまる手付かずなのだから。工事完了にはあと200年かかるとか、いやその気になって最新技術を駆使すれば20〜30年で良いとか、いろいろな噂がある。

塔の中はそれぞれ螺旋階段あるいはエレベーターとなっていて、塔ごとに上り専用と下り専用に分かれている。下り専用のところを無理に上ってきて「ちょっと姉ちゃん、道譲ってんかー。ほら、そこの踊り場までバックしたらええがな」という二人組がいたら、まず強盗である。踊り場に押し込んで金品を強奪するというのが手口。残念だけど、観光スポットでもあまり気を抜いちゃならんのだ。

上の写真のように、塔の間にはいくつか渡り廊下があって、あみだくじをするように隣の塔へと渡れるようになっている。指示に従って進めば、写真で右端の塔の下からぐりぐり上り、左端の塔の下へぐるぐるになって出てくることになる。ぐりぐり上って正面真ん中の渡り廊下に出たら、バルセロナの街にサグラダ・ファミリアの影が伸びていた。なんというか、本当に美しいなぁ。

ぐるぐるぐりぐり回りながら階段を上下していて、ふと思った。これは、旅だ。巡礼の旅なのだ、たぶん。私はこのところ巡礼の旅やお遍路さんへの憧れがあるので、そう思ったら急にうれしくなった。いつか全部完成したら、一ヶ月くらいこの中でぐるぐるぐりぐり歩き続けてみたいなぁ。景色は良いし、直射日光や雨の心配もなさそうだし。あ、でもそうすぐには完成しないのだっけか。残念。ちなみに入場料はひとり5.11ユーロ(約615円)、使わなかったけど途中までのエレベーターは1.2ユーロ(約145円)。


まずはガウディ攻め、ということで、次はグエル公園へ。ここはバルセロナの山手側、小高い丘の上にある。地下鉄駅からだと15分くらい歩くことになるので、タクシーで。入口にはお菓子の家みたいな建物、中に進めば色とりどりのタイルで作られたトカゲの噴水、波打つベンチ、思い出して列挙するだけでおかしくなるほど楽しい。

波打つベンチは、手作りタルトの縁みたいにうねうねしながら広場を囲んでいる。一席一席に切れ目があるわけじゃないので、好きな場所に腰を下ろせば良い。ひんやりしたタイルは気持ち良いし、カーブの角度が絶妙に背中にフィットして座り心地は抜群。うねうねが深いところではグループが向き合って座れるし、正面から太陽が当たって眩しければちょっと移動すればだいじょうぶ。それに高台にあるため、風は爽やかで、サグラダ・ファミリアから地中海まで見渡す景色も最高に素晴らしい。極めつけに、公園なので無料なのだよな。心ゆくまで、ほけーっと座っていられる。観光疲れが癒せる観光地、というのも珍しいかもしれない。


ガウディに圧倒され、疲れ、癒されたところで、再びタクシーでピカソ美術館へ。南のアンダルシアはマラガ生まれの彼もまた、バルセロナで青春を送っているのだ。

どうも画家や建築家は、バルセロナと縁が深い。出版関係も服飾関係も、バルセロナが中心だし。これがマドリードだと、やって来るのは闘牛士やフラメンコ・アーティストなのだな。バルセロナに似合うキーワードを考えると、「アート、都会、新らしもの好き」か。一方のマドリードは「情熱・田舎・伝統的」ね。代表的な画家で考えると、一目瞭然だ。「ピカソ、ミロ、ダリ」のバルセロナと、「ベラスケス、ゴヤ、グレコ」のマドリード。

というわけでピカソ美術館に、「ごめんくさーい、これまた天才」(チャーリー浜でね)。入場料は4.65ユーロ(約560円)。展示は年代別に工夫されていて、絵の変遷がわかりやすい。出てきたら、ドッと疲れた。だってバルセロナ、どこを見ても奇才・天才の作品なのだもの。さぁ明日は、もうひとりの奇才に会いに行くぞー! 15年間憧れてきた、あの場所へ。

 

 

第12回:奇才の故郷に、ごめんくさーい(3)

 
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