■くらり、スペイン〜イベリア半島ふらりジカタビ、の巻

湯川カナ
(ゆかわ・かな)


1973年、長崎生まれ。受験戦争→学生起業→Yahoo! JAPAN第一号サーファーと、お調子者系ベビーブーマー人生まっしぐら。のはずが、ITバブル長者のチャンスもフイにして、「太陽が呼んでいた」とウソぶきながらスペインへ移住。昼からワイン飲んでシエスタする、スロウな生活実践中。ほぼ日刊イトイ新聞の連載もよろしく! 著書『カナ式ラテン生活』。


■移住を選んだ12人のアミーガたち、の巻(連載完了分)

■イベリア半島ふらりジカタビ、の巻
第1回:旅立ち、0キロメートル地点にて
第2回:移動遊園地で、命を惜しむ
第3回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(1)
第4回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(2)
第5回:佐賀的な町でジョン・レノンを探す(3)
第6回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(1)
第7回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(2)
第8回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(3)
第9回:パエージャ発祥の地、浜名な湖へ(4)

■更新予定日:毎週木曜日




第10回:奇才の故郷に、ごめんくさーい(1)

更新日2002/12/26


何度も書いたのだけど、私は実際に引っ越してくるその日まで、マドリードは海の近くにあって冬でも温暖なホンワカ地中海性気候(ケッペンの区分でCsね)だと思っていた。ところが実は、ヨーロッパで唯一のステップ気候(こちらはBs)。ケッペン氏によると、夏は熱帯で冬は寒冷、本来なら砂漠周辺に広がってしかるべきの厳しい気候ということになる。飛行機を降りるタラップ、湿度をほとんど感じない風に頬をザリザリ撫でられながら、私はようやく自分の間違いに気がついた。

「あぁ、私がイメージしてたスペインは、バルセロナだったんだ」

バルセロナは、カタルーニャの州都。日本で『カタロニア』と呼ばれることもあるこの州は、スペインの北東部に位置し、キラキラ輝く地中海に面する。海岸をそのまま北上すれば、フランス南部コートダジュールへ。あぁなんだか小粋じゃないの。

一年を通じて温暖なホンワカ地中海性気候で、冬でも天気が良ければ薄着でOK。ビーチにはヨーロッパ各国からのバカンス客が溢れ、レストランでは新鮮な魚介類がフレンチ風の繊細な盛り付けで出され、街では「ボン・ディアー」と柔らかい響きのカタルーニャ語が交わされている。あぁなんだか小粋じゃないのさ。

ここはスペイン統一がなされる15世紀まではアラゴン王国といって、マドリードあたりのカスティージャ王国と、そりゃもう激しく争い続けてきた。一時はサルディニア島、シチリア島、南イタリア、ギリシャの一部まで支配し、地中海とその富との光を浴びてキンラキンラ輝いていたのだ。そのせいもあって、スペイン統一後500年経ったいまも、胸を張って「私はスペイン人じゃなくて、カタルーニャ人」と言うひとが多い。あのド田舎者の集まりのマドリードなんかと一緒にせんといてくれ、ってね。

そして芸術面で、カタルーニャはもうなんちゅうの、とーにかくすごいんである。この地出身あるいは長く滞在した三大画家といえば、ピカソにミロにダリ。こいつは天才ばかりでごめんくさーい、これまた奇才、の大集合。最近では「世界一予約が取りにくい」と言われるミシュランの三ツ星レストラン『エル・ブジ』も、ここだし。そして忘れちゃいけない、これまた奇才の建築家ガウディ。あぁもうちくしょう、アートだなぁ、小粋だなぁ。


バルセロナには、『12人のアミーガたち』編の最終回に、マルタの取材で訪れた。マドリードからの距離は、約650km。バスで片道8時間。東京から北上すれば八戸の港に到着し、車を降り、ひとつ伸びをして缶コーヒーを買い、苫小牧行きのフェリーを見ながらプルタブを引っぱるあたりになる、だいたい。取材の日は行きが夜0時30分マドリード発、帰りが17時30分バルセロナ発の、日帰りバス旅。これで現地に8時間ちょっと滞在できる。

が、しかーし。カタルーニャには中学生の頃からいつか行きたいと願っているところがあるのだが、そこにはまず日帰りでは行けない。というか、行けはするけど、あまりゆっくり楽しむ時間はない。というのもそこ、バルセロナからさらに約140km(道路地図より想定)も離れた場所なのだ。東京から直線で計算すると、苫小牧行きのフェリーを待たずとも北海道に到着してしまう距離になる。

行ったことあるひとが、本当に例外なく声を揃えて「あそこは良い!」と言う場所。あの奇才の、生まれ故郷にある美術館。ミロもピカソも美術館はバルセロナ市内にあるのに、このひとのだけ遠くにあるんだよね。マドリードのソフィア王妃芸術センターにも作品は展示されているけど、ここはピカソの『ゲルニカ』のためにある美術館だから、彼の作品はあくまで脇役。それよりも、彼の美術館に行きたい。生前に自身の手でプロデュースしたという美術館で、見たい。奇才ダリの、作品を。


そうずーっとフツフツと考えていたのだが、滞在3年目にようやくチャンスがやってきた。ダンナさんの休暇にあわせて、2泊3日のバルセロナ旅行。ダンナさんは滞在5年目にして2度目のバルセロナになるのだけど、唯一の滞在は日帰り出張で観光なし。あぁ国内とはいえ、バルセロナはかくも遠いのだった。

ちょうど航空会社の全線半額フェアーがあったため、飛行機は往復77ユーロ(約9250円)+空港使用税という安さ。前回のバスが往復52.08ユーロ(約6250円)だったことを考えても、充分な割安感。だってバスが片道8時間かかるところを、飛行機なら1時間なのだから。すまんが今回は、飛行機でひとっとびさせていただきやす。


3日間しかないというのに、2日目はまるまる一日、ダリ美術館のためだけに空けておく。さぁ待っていろよ、サルバドール・ダリ。あなたは1989年に亡くなってしまったけど、作品はいまもあなたの望んだ姿でそこに展示されているはず。ついでに待っていろよ、ドイツの気象学者ウラジミール・ピョートル・ケッペンによるところのCs気候よ。爽やかな湿度ってのを、久々に感じてやる。近くて遠いバルセロナで、潮と芸術の風を、存分に受けてくるぜ!

 

 

第11回:奇才の故郷に、ごめんくさーい(2)

 
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