原園 綾
(はらぞの・あや)

1967年生まれ。世田谷区立赤堤小卒。ニューヨーク在住。大きくなったら何になろうかな?

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第3回:日本の大学の話だゲコ

今回は日本の大学での話だゲコ。カッパはこちら(NY)に来る前、専攻分野を変更をすべく、編入予定のお茶大生物学科で聴講を始めていたのだった(結局、突然の引越しで春の入学前に日本を離れてしまうことになったけれど)。授業は理系出身ではないカッパには難しく、夜もキュウリを食べながら参考書とか読んだもんじゃった。

ある日の授業で、推薦入試の面接を終えた先生が学生たちに質問した。面接のとき、生物学科を志望する高校生は、自分が研究する分野に向いているという根拠を必ずその言葉を使って説明するのだけれど、それはなにか? カッパは、彼ら受験生たちが、まず間違いなくその言葉を使ったという話に驚いた。周りの大学2年生は結構すぐに言い当てたの。

じつはこれ「根気がある」なんだけど、先生は「そんなに暗いイメージなのかなあ、研究者って」とがっかりした様子だった。「研究は面白いと思うものがあるからやるのであって、そんな『おしん』みたいに耐え忍びながらやるものではないんだよ」と。「研究にはむしろ独創性が必要で、何よりも『これが面白い!』というものを見つける力が大切」ということを関西弁で言っていた。これはどんな研究にも通じる科学者の神髄ではないか! お勉強に耐え切れなくなりつつあったカッパちゃんにとって、この言葉は一筋の救いの光となったのだ。面白いこと、見つけちゃうぞ!!

面白いことといえばキリがないけれど、その夏、京大の霊長類研究所で夏期セミナーというのに参加してみた。このセミナーは受験希望の学部生が対象で、カッパはこれまた世代の違うなかに入るという、ちょっと緊張する場でもあったのですが、ちょっと若者気分にもなったりしたのも事実。一緒にお弁当食べたり住所交換したりとカッパも仲間にまぎれたのじゃ。ケケッ!

さすが理系の学生は、実験だ卒研だとサークルやってる暇もないらしい。真剣で、それなりに方向性も見い出していて偉いわあ。東京出身で、自然に浸りたく宮崎で植物の勉強している人、生物学をやるために農学部に進んだのに鶏の下ろし方などを覚えた人、海の微生物を研究してる人、教育学部理科専攻の人、人類学の人、心理学の人、分子生物学の人、と様々。

サル学の総本山、霊長類研究所は名古屋の北、犬山という木曽川の流れる城下町にありんす。世界でも有数の霊長類──サル──の研究をあらゆる分野(遺伝子などのミクロなレベルから群れなどのマクロなレベル、そして人類学、野生動物管理など)で実践していて、対象は飼育下のサルだけでなく、研究者は国内、海外の野生のサルがいるフィールドにも出かけてゆく。もちろん霊長類にはヒトも属しているわけで、サルからヒトへの進化は各分野のテーマであるし、サルの社会構造や認知機能を知ることからヒトとの比較や考察も行われている。

セミナーでは各分野のレクチャーがあったのだが、社会的知性の実験がすごい。2匹のサルが上と下のケージに入れられ、下のケージだけ外が見えるようになっている。外ではバナナがどこかに置かれる。上のサルは下のサルが外の様子を見ているのだけが見える。そして2匹を外に放すとどうなったか?

下のサルは一目散にバナナに行くと思いきや、上のサルとの駆け引きがあった。上のサルは下のサルの先回りをしようとして、下のサルの見る方向、進む方向に突進する。そして下のサルは素直に一直線には進まないどころか、わざと他の方向に上のサルを誘導して自分だけバナナにありつこうとする。お互い動きを読み合いながらだまし合いながら、最後のダッシュではなんと上のサルが勝ってしまった! もっともホットなテーマの1つ「欺き」の行為である。ヒトとは何たるかを考えている研究所のセミナーで、カッパはますます勉強したくなったのであった。

 

→ 第4回:この夏、水族館で進化


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