第6回: パキスタン・ギルギット
更新日2002/04/25
人気アニメ映画『風の谷のナウシカ』のモデル舞台として、一躍有名になったパキスタン北部の桃源郷「フンザ」。イスラム教国パキスタンの中で、中央アジア系の民族が生活する平和な村。女性も顔を出して歩き、バックパッカーには特に人気が高い。北に行くほど金髪で、青い目の住人の姿に変わっていく。
このフンザに行くための基点の街「ギルギット(Gilgit)」には、日本人ミドル女性Kさんが運営するゲストハウスがあった。もともと山が好きで、旅人としてこの地を何度も訪れていたKさんは、いつしかパキスタン人の前オーナーから経営を引き継いだとか。
「日本の山とは全く違うでしょう。ごつごつした殺風景な岩山ばかりだけど、季節によっても表情が変わるのよ。フンザに行ったら中心のカリマバードだけじゃなく、もっと北のグルミットやパスーにも足をのばすのがいいわ。パスーには手軽に楽しめるトレッキングコースもあって本当の山の素晴らしさがわかるから…」
こう話している間にも、時折Kさんの元に地元の観光業者やトレッキング・ガイドが訪ねてきては何やら相談事。すっかりこの街に根付いている様子である。
また、ここに泊っていると山小屋にいるような感覚になったりもする。停電の多い場所柄、夜はほとんどランプを囲んでの夕食。宿泊者が一堂に会し、大皿に盛られた料理を取り分けて食べる。宿で飲食したものは自己申告制でノートに書き込み、帰る時に精算。ホットシャワーは停電時には使えないので、近所の理髪店に行ってお湯をバケツに入れてのバケツ風呂となる。
「最近はフンザに行く日本人が多くてびっくり。パッカーだけでなく、サラリーマンやOLの人が1週間ほど休暇を取ってくる場合も多いのよ」
フンザに行くとすれ違う人がみんな笑顔で挨拶するので、挨拶疲れするほど。フンザの住人は言った。
「日本人が何故この村に大勢やって来るのかよく分からない。私たちはお金や便利な文明社会には関心がないし、ただ普通に助け合って暮らしているだけ。私たちにとっては、それが一番の幸せ。日本人の幸せは違うのか?」
日本では味わえない純粋な人と人との触れ合いを求めて、日本人はやって来るのだろうか?
パキスタン西部の異教徒の村"カラッシュバレー"に話がおよぶと、Kさんの目がさらに輝いた。カラッシュバレーは、伝統的な宗教や風習を重んじているために、パキスタン政府から特定地域に指定されている。村に入るには入域許可証が必要で、金髪で青い目の民たちが自給自足している。
「カラッシュバレーまで足をのばす日本人が、まだまだ少ないのがとても残念。フンザと同じでやさしい人々ばかり。フンザとはまた異なる別の世界が見られるわよ。山の風景も独特なものがあるし…」
山と少数民族にこだわる、日本人のひとつの生き方がここにあった。
→ 第7回:戦争を知りたい女子大生