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海の中は素敵だよ 君のような女の子がたくさんいるよ もちろん海の中のことだから、人間じゃないよ
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正直言ってこの世はとても退屈だけれど、それでもたまには
やっぱり生まれてきてよかったと、そう思えることだってある このまえも、わたしが自分の部屋の鏡の前で、柔らかなスカートをはいて 軽くダンスを踊りながら、そんな自分の姿に、何となくうっとりしていると
突然スカートが青く透明な海になり、そこから一匹の魚が ぴょんと飛び出してきて言った
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それにしてもまいったね かわいい女の子を見かけて、ちょっと海の外を覗いてみたけど この空気とやらの息苦しいのなんの、全く息が詰まっちゃう
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どうして魚が? とは思わなかった
だって私は、不思議なことが嫌いじゃない というより、不思議なことの方がずっとリアルだと思えることがよくある すべてが、まるであたりまえのような顔をしているけれど
どうして? と一度考え始めると なんだか訳が分からなくなってくる普通のことと比べれば 不思議なことはいつだって、いきなり始まってしまうのでむしろ気楽だ
だから私のスカートが突然海になって そこから魚が飛び出してきて、私に話しかけてきたときも 不思議というより、オオツ、なんだか面白いことになってきたなと
そう思った瞬間から、何もかも、すっかり忘れて 私の体は、魚に聞きたいことでいっぱいになってしまった 海の中は何がどんなふうに素敵なの? 私はそこでもかわいいの?
私みたいな魚が、ほんとにそこにいるの? 私もそこに行けるの?
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