確かにそうだと私も思った、そしてそう思ったとたん
私は自分がむかし、海に住んでいたことがあるのを不意に思い出した
冷たく澄んだ水の記憶や、揺らぐ光の美しさがハッキリと眼に浮かぶ
いつの頃かは分からない。それがどこだったかも分からない
生まれてから今日までの自分のことを振り返ってみれば
自分がかつて海に住んでいたという証拠は、何一つないけれど
それでも、私は自分が、かつては海に住んでいたのだと、そう確かに感じる
光が揺れる浅瀬で、下半身を海の水に浸し、裸の上半身を海の外に出したまま
一人で夕陽を見ながら、打ち寄せる波の音色を聴いている私がそこにいる
遠い遠い昔のようにも、ちょっと前のことのようにも思えるその記憶の中で
私は、ちょうど今の私くらいの年格好にみえる どうしてだろう?
それが昔のことだとしたら、どうして私は子供じゃないんだろう?
それが最近のことだとしたら、どうして私はそれを覚えていないんだろう?
ほんとに確かに感じるけれど、あれは夢?