考えてみれば、すぐに誰かを好きになるのも、誰からも好かれたいと思うのも
むかし人魚だったからかもしれない
けれど、自分が必ずしも、みんなから愛されているというわけではないし
みんなを愛することが、必ずしもハッピーではないと思い始めてからは
いつのまにか、自分の気持ちに、薄くベールを被せる女の子になっていた
それは、下半身がウロコでおおわれているより、ずっとずっと不自由だったが
でもいつのまにか、それをあたりまえと思う女の子になっていた
だから、きっとそれを心配して、こうしてこの魚は
私のスカートを海にするという荒技まで駆使して私の前に現れたのだ
私が、私らしくなくなり始めているのが悲しかったのだ
むかしのように、あるいはそれ以上に、きれいな私になって欲しいのだ
ありがとう。私は思わずそうつぶやいていた
だってみんなが、もう一つの世界から私のことを見守ってくれている
もう心配しなくていいからね、私のスカートの中の、この小さな海が消えても
私は自分が、喜びのシンボルだったということを、もうきっと忘れないから