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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第409回:増加する女学生と男性優位社会

更新日2015/04/16



私たちが住んでいる山の家には、テレビの電波もFM放送も届かない…と以前書きましたが、インターネットを使うことができないのが、今、現在とても大きな欠陥になっています。 アメリカ全土の99%をカバーしていると豪語しているAT&Tの携帯も使えません。どうやら、私たちが住んでいる山裾は残りの1%の地域に当たるようなのです。

私は週に4日、下界(と私たちは呼んでいます)に降りて大学で教えていますが、ダンナさんも週に1回は下界に降り、大学の図書館でインターネットを利用し、新聞、雑誌などにまとめて目を通しています。なにやら窓際の指定席があるらしく、シラベモノをすると称してパソコンやノート、本、雑誌など、まるで自分の家の机のように派手に広げています。

広い閲覧室で、ウチのダンナさんを見つけるのはとても簡単です。彼のような、禿げ白髪のお爺さんは一人もいませんから、遠くからでもヒト目で分かるのです。どう見ても学生にも、教授にも見えません。カラスの群れに紛れ込んだ禿げ鷹です。良くて用務員のお爺さんが休みの日に趣味の調べ物をしている…といったところでしょうか。

急に暖かくなり、学生さんは短パンに、ティーシャツ、タンクトップでキャンパスを闊歩し始めました。ウチのダンナさん、「オイ、この大学は女学生が多いんじゃないか、スゲー格好しているのがたくさんいるぞ。ありゃ、男子生徒の勉学の妨げ、集中力を散らすんじゃないか」と窓から何を見ているのか、何をしに図書館にきているのか、分かったものではありません。 集中力を削がれ、惑わされたがっているのはダンナさん、アナタでしょうが…。

確かに私の働いているこの地方大学は女学生が男性をほんの少し上回りますが、女学生の皆が皆、"スゲー格好"をしているわけではありません。私の教えている言語学系の授業では、女学生が圧倒的に多く、極端な例ですが、今学期の"英語の歴史"の授業には20人中女子19人に対し男子学生は一人しかいません。どうしても人文系は女子が多く、工学系は男子の生徒さんが多くなる傾向は昔から変わりません。

アメリカでは、女性全体の45%が大卒ですが、男性では32%しか大学を出ていません。 近年、特に社会福祉関係、慢性的に不足している看護婦、介護師の資格を求めて大学に入る女学生が増えています。 

女性と男性の開きに大きな差のある国はスウェーデンで、全女性の47%が大学を出ているのに、26%の男性しか大卒はいないのです。スウェーデンの男どもはいったいどこで何をしているのだと言いたくなるほどの差があります。

女性が高い教育を受け、社会で重要な役割を果たしていくようになってから、もうずいぶん年月が経ちました。ヨーロッパの国々では軒並み、女性の大卒組が男性のそれを上回っています。それも大きな差をつけています。

ところが、日本ではまだ男性優位というのか、女性蔑視、軽視というのか、男性全体の44%が大卒なのに対し、女性の36%しか大学を出ていません。

これだけ大学で女性上位になったのですから、社会的な差別もなくなっている…、なくなってくると思っていましたが、どうしてどうして、賃金の差はまだ歴然としています。スウェーデンですら、平均賃金では女性は男性より14%も低いのです。アメリカでも18%、ドイツでも21%、そして日本ではなんと27%も低いのです。同じ仕事をしていてこんなに差があるなら、誰だってやる気をなくしますよ。

ついでに、よく比較される政治家、国会議員の性別では、スウェーデンでは女性が45%、アメリカでは17%、メルケルさんのドイツですら33%、日本ではなんと11%の女性議員しかいないのです。日本の地方議会ではさらに悲惨なことになっていて、1,788ある地方議会(狭い島国にそんなにたくさんの議会があることにも驚きましたが…)で女性議員が一人もいない議会が379もあるというのです。これでは、とても女性の地位を高める法案など、日本で通るはずがありません。

フランスのように男女のペアで立候補し、そのペアに投票するような過激な方法でも取らない限り、日本の地方議会から女性が消えていくかもしれません。どうにも、日本は大変なマッチョ・カントリー、男性優位の国とみられても仕方がないでしょうね。

1年間、客員教授として日本のかなり優秀な私立大学で教えたことがあります。その大学の女学生さんは、今私が働いているコロラドの大学の学生に爪の垢でも煎じて飲ませたくなるほど、皆、優秀でしたし、勤勉でした。ところが、卒業後にプロのキャリアーに就いた女学生がとても少ないことにショックを受けました。本当にもったいないことです。彼女らのように優秀な女性を活用すれば、日本はもっともっと豊かなそして良い国になる…と思うのですが…。

偉い経済学者がよく指摘しますが、日本女性がヨーロッパ並みに活動したら、日本のGNPはすぐに30%は跳ね上がるだろう…と言われてから、もう十数年経ちます。

日本社会がそこまで成熟していないとも言えますが、尽きるところは、日本女性の意識の問題ということになるのでしょうね。それを望み、それに対して積極的に働きかけない限り、社会は変わらないモノなのですが…。

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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