第808回:マリファナの次はマジック・マッシュルーム?
この高台の草原の一角に、そこだけがいつも緑の草が茂っているところがあります。大半は牧草地か休耕地、灌漑用水の届かない荒地の中で、そこだけがいつも、まるで団地の中の手入れが行き届いた花壇か芝生のようなのです。
牧草、トウモロコシ畑と違うのは、そこが厳しく4本並列のバラ線で囲まれていることです。そこがマリファナの畑だと聞き、なるほどな~と納得しました。そりゃぁ、牧草を育てるよりマリファナの方が何十倍、何百倍も儲かるでしょうから、誰でもマリファナ農園に走るのは当然です。このマリファナ農園は一辺が200~300メートルはあるでしょうから、おそらく、トン単位の収穫になるでしょうね。
コロラド州でマリファナが合法化されてから、もうかれこれ6、7年になります。合法化されたと言っても、マリファナを育て、管理する規制は厳しく、畑や温室に定期的に監査が入り、作物の流通経路、どこのマリファナショップに売ったかまで明確にしなければなりません。畑も他の人が無断で切り取ったりしないよう、それなりの防犯対策をしなければなりません。マリファナ畑に入りこむ筆頭は牛です。収穫の終えたトウモロコシ畑や牧草畑に牛を放牧します。その牛が青々と繁ったマリファナ畑に入り込んだりしないよう、相当頑丈なフェンスを張り巡らせなければならないというのです。マリファナをたっぷり食べて育った牛の肉や牛乳に独特の風味があるかどうか知りませんが…。
最近、近所付き合いをするようになりました。互いにリタイアした者同志の気楽な付き合いで、月に一度くらいのペースで昼食、夕食に呼んだり、呼ばれたりします。でも、やはり話が合うのはある程度私たちと趣味というのか、生活感覚が似ているカップルになってしまいます。ジニーとスティーヴは大のアウトドア派で、この界隈で一番の友達になりました。
彼らと一緒に再三、日帰りのハイキングにも出かけます。一度、医療検査技師だったジニーの友達も一緒に峡谷ハイキングに行ったことがあります。その大男のボブは医療関係で働く退職前、現役でした。ボブは30~40分置きにに取る休息の時、「チョット失礼、この一服がこたえられないんでね~」とマリファナをいかにも美味しそうに吸うのです。香ばしい煙が漂い、学生の頃を思い出させました。
コロラド州のマリファナ合法化は上手く行っていると言って良いでしょう。鎮痛剤としての医療用とレジャー用両方とも認可になり、レジャー用は雨後の筍の如くオープンしたマリファナショップで買うことができます。店に入るには20歳以上である証明(運転免許など)が必要です。店の中のことは以前書きましたが、広い店内はマリファナ商品で溢れているのです。単純に吸うだけのマリファナでも20種類くらいはあったでしょうか。他にもクッキー、チョコレート、ケーキはもちろんマリファナ入りのありとあらゆる食品があり、化粧品、鎮痛用のクリームなどなど、これでもかという品揃えには驚いてしまいました。
私の同級生ジュディーはコロラドからミズーリーに帰郷する時、未だに“気のある?”同級生ボーイフレンドにお土産として必ずマリファナを持っていくと言っていました。ミズーリー州ではマリファナは禁止でしたから、とても喜ばれるお土産になるのだそうです。州境を超えてマリファナを持ち込むのは違法行為ですが、日に何百万台の車が行き来する州境で一々、車を止めて入国審査、税関のようなチェックは不可能ですから、コロラド産のマリファナは周囲の州へとドンドン流れていきます。
保守的なミズーリー州でも他の州でも、案外上手くいっていることだし、コロラド州だけに儲けさせておくのは賢明でないと判断したのでしょうか、重い腰を上げ、今年になって、やっとマリファナ許可法案が通りました。旧友ジュディーの帰省土産の価値がグンと下がってしまいます。それにミズーリー州は野生のマリファナだらけの土地柄ですから、美味しいマリファナが良く育つところです。上手くコントロールして税収入を増やした方が利口だということでしょうか。
暇に任せて日本のインターネットニュースを覗いていたら、俳優の永山絢斗さんが1グラムのマリファナを自宅に所持していたとして逮捕された記事が載っていました。1グラムは2回分の紙巻き喫煙が可能であると解説されていました。アメリカから観ると、何ともお気の毒なことです。日本でマリファナはコカイン、ヘロインと同じような麻薬に分類されており、非常に厳しい取り締まりがあるのは、とても良いことだと思っています。やはりどこかにはっきりとした線を引かなければなりません。
マア~、マリファナを吸いたい人はアメリカに飛んできて、思いっきり吸いまくり、でも日本に帰る前にシャワーを浴び、匂いのついた衣服を洗い、うがいをして飛行機に乗ることをお忘れなく!
マリファナを先駆けて合法化したコロラド州では、この春からマジック・マッシュルームや、インディアンが吸っていた幻覚を起こすキノコも許可になりました。これはシロシビン(psilocybin)という成分を含むキノコで、メキシコやニューメキシコではペヨーテ(Peyote)と呼ばれている、元々宗教的儀式の時に食されていたモノと同質のようです。
このマジック・マッシュルーム法案は今年3月の住民投票に掛けられ、開放賛成多数で許可されました。私個人としては、ベトナム戦争時代に流行った幻覚剤LSDの強さ、恐ろしさ、弊害を見聞きしていましたから反対に一票を入れたのですが…。
何事にもすぐ極端に走るのはアメリカの特徴ですが、先週デンバー(コロラド州の首都)で“マジック・マッシュルーム祭り”が大きな見本市会場を使って開かれたのです。ハデハデしい、サイケデリックの衣装に身を包んだ人たちで満員盛況の様子がテレビのニュースになっていました。
インディアンたちが幻覚を起こすキノコ、サボテンを使ったのは年に数回、宗教的儀式の時だけだったのですが、それを365日、いつでもどこでも使えるようにするのは行き過ぎだと思うのですが…。
インディアンたちの方が幻覚をもたらすキノコ類の危なさをよく知っていて、宗教的儀式、戦いの前だけに限っていたのではないかしら…。
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