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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第173回:家庭内暴力と生理用品

更新日2010/08/26


こんな題をつけると、すぐにアメリカのウーマンリブのことかと敬遠されてしまいそうですが、少し違う方面からアプローチしますので、ご安心ください。

「ソロプティミスト」という会があります。1921年にカルフォルニア州、オークランドでバイオレット・リチャードソンさんが初代会長になり、女性の地位向上のために設立したクラブです。当初は、管理職とか専門技術職に就いている女性だけを対象にして、彼女たちの社内や社会的立場を守り、向上させるのが目的でした。今では、アメリカの中くらいの町ならどこにでもある女性商工会議所のような役目を担っていたようです。

発足当時たった80人だった会員が、今では125ヵ国、3,000ものクラブ、9万人の会員がいる、女性版ライオンズクラブ、ローターリークラブに育っています。男だけのビジネス界に女性が進出するための機関ではなく、主に積極的なボランティア活動で知られています。ビジネス界で得たノウハウを生かし、ボランティアを組織し、義援金を上手に活用し、慈善事業を効果的に運営しています。

このクラブの活躍は、シエラレオンの子供たちを救おうという運動、"Hope and Homes for Children"で知られているかもしれませんね。

日本にも支部というのでしょうか、五つの地区があり、1万4,000人の会員がいます。会員の数ではアメリカに次いで2番目に大きな国です。その国際ソロプティミストのルビー賞を日本女性が受賞しました。川本弥生さんです。

通例、この賞はボランティア活動を長年積極的に続けてきた人に与えられる性格のものだそうです。ところが、川本さんは女性用生理用品に家庭内暴力ホットラインの連絡先を印刷するよう、メーカーに交渉し、実行させたという、一風変った功績によるものです。

このニュースを初めて読んだ時、なぜ生理用品なの、それと家庭内暴力とどんな関係があるのか分かりませんでした。ですが、川本さん自身の体験を読み、偏執狂的な夫がいかに妻の持ち物すべてをチェックし、コントロールしようとするものかを知り慄然としてしまいました。

常習的に暴力を振るう人間は、もし怪しげな電話番号を妻が持っているだけで、それを理由にまた際限のない暴力を振るうものだそうです。一度でも夫が手を挙げたら、すぐに家を出なさいというのは簡単ですが、子供や赤ちゃんがいたり、どこにも行く先のない女性が沢山いるのも事実です。誰にも相談できずに、ただ耐えている女性が大半だといいます。

そんな時のホットライン、連絡先電話番号を女性用生理用品に刷り込んでおけば、妻の持ち物のすべてを重箱の隅をつつくように調べる疑い深い夫でも、生理用品まではチェックしないだろうという、行き詰まりからの発想なのです。奇想天外の発想といってよいでしょう。川本さんは、そのアイディアをたくさんのメーカーに持ち込み、長い交渉と説得の末、実際にホットラインを印刷してくれる会社を見つけるところまで漕ぎ着けたのです。 

彼女の発想の奇抜さ、それを実行に移す粘り強さにはただ感心するばかりです。

偉い人、立派な人というのは、日常生活のごく身近なことからでも、社会、世界を変えていくものですね。川本さんのおかげで何人か、何十人かの女性が救われるなら、ルビー賞受賞以上の価値があると思います。

アメリカで行方不明になった子供の写真情報を牛乳のパックに印刷し、そのおかげで多くの子供たちが見つかり、親元に帰ることができたように、女性すべてが家庭内暴力ホットラインが書いてある生理用品を使用し、家庭内暴力から逃れることができるようになることを祈っています。

 

 

第174回:タージ・マハール学校

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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