今日は千葉の湾岸にあるふたつのモノレールに乗るが、天気がいいので、愛車の400ccのスクーターで出発する。電車だと、東京駅の地下から京葉線に乗るか、大井町から臨海線に乗るところだが、こんな快晴の日にわざわざ地下駅に出向くことはないだろう。
大田区とお台場が一般道の臨海トンネルで結ばれ、お台場からは国道357号線を使って千葉へ行ける。どちらも私の好きな道だ。視界が開け、信号もスムーズで、程よいスピードで走行できる。難点があるとすれば、時間にルーズになりがちなことだ。発車時刻を気にせず、いつでも出かけられると思うと、つい出発が遅れてしまう。幸い渋滞もなく、自宅からお台場までは15分、そこから約30分で舞浜に着いたが、時刻は14時を過ぎていた。すでに影が長い。
舞浜リゾートライン、通称ディズニーリゾートラインは、JR舞浜駅前のイクスピアリという商業ビルの階上から発車する。パステルカラーの階段を上がると、意外にも普通の私鉄のような切符販売機と自動改札機がある。これが公共交通機関であることの証明である。ディズニーにも遊園地にも興味がないけれど、ディズニーリゾートラインが公共交通機関ならば私の旅の対象だ。
まるで遊園地の乗り物のようなデザイン。
駅の佇まいも列車のデザインも、遊園地のアトラクションのように夢あふれるデザインだ。ディズニーランドとの調和を狙ったもの、というより、やはりアトラクションとして作られたと言っていい。ディズニーランドの繁忙期の駐車場不足は深刻であり、ディズニーとしては公共交通機関の利用を推奨したい。そのためには、親子が乗りたくなるような、楽しい交通機関を作る必要があった。
しかし、浮かれた動機だけではなく、公共交通機関としての使命もきちんと果たしている。関東の私鉄各社が導入したプリペイドカード
"パスネット" に対応するし、通勤定期券や通学定期券もある。通勤定期券はディズニーや近隣ホテルの従業員が買っていそうだが、通学定期券は売れないだろう。沿線に学校はなさそうだし、このあたりは住む所もない。今どきホテルに住み込みの家族はいないだろう。ホテル住まいの裕福な人々はいるかもしれないが。
広いホームにかわいらしい制服の駅員がいて、客は家族連ればかりである。やはり実態はアトラクションとして利用されているようだ。モノレールの列車は6両編成で、先頭車は前向きの展望席がついている。そこはすでに満席のようなので、最後尾の車両に乗り込むと、こちらはロングシートであった。ディズニーリゾートラインは全線単線の環状線で、列車は反時計回りに走っている。先頭車両は常に先頭で、最後尾の車両が折り返して先頭になることはない。
海とソテツがリゾートらしさを演出する。
ねずみのキャラクターを型取った窓から、お城や山など、背の高いアトラクションの建物が見える。ディズニーランドの敷地を囲むように走る路線だから、海やホテルの端正な建物も車窓に現われる。道路には街路樹としてソテツが植えられており、南国のリゾートのような眺めでもある。一周5分、運賃200円。埋立地に作られた、人工的な風景と、海のきらめきが不思議と調和していた。
国道357号線を東進し、次に目ざすは千葉みなと駅である。ここから千葉都市モノレールが出ている。駅のそばに公園があり、そこの駐輪場にスクーターを停めると、頭上を2両編成のモノレール車両が通り過ぎた。千葉都市モノレールは懸垂式といって、車両をレールからぶら下げる。例えるなら巨大なカーテンレールのような構造だ。レールを見上げると、ふたつのカーテンレールが平行し、渡り線が2ヵ所ある。モノレールの分岐機が珍しく、しばらく佇む。
千葉都市モノレールは、千葉の都心の交通渋滞を解消し、宅地開発を推進する目的で建設された。路線は、千葉港から千葉市役所、JR千葉駅、千葉県庁を結ぶ1号線と、千葉駅から3つの大きな公営住宅団地を結んで千城台に至る2号線があり、すべての列車が千葉港を起点として、千葉駅で2方向に分岐する。
千葉みなとのホームは対向式で、県庁前行きと千城台行きで使い分けているようだ。まず県庁前行きに乗ってみる。モノレールの車両は定員79名の小さなもので、2両編成と短い。しかしこれは路線バス約3台ぶんにあたる。渋滞するバス通りから、バスが3台減るとなれば、たしかに渋滞解消の効果はあるにちがいない。ラッシュ時は4両で運行するので、バス6台分が空中を走る計算になる。
列車が発車するとすぐ、ポイントで右側左側のレールに移る。鳥かごのような独特の揺れがある。しかし、揺れを感じるのはここだけで、本線上はスムーズだ。カーブでも安定している。遠心力と車両の傾きが一致しているせいだと思う。
バス渋滞を解消するための"切り札"淵。
分岐駅の千葉駅は、ホーム2面、レール4本の大きな駅だ。モノレールでこれだけの規模の駅は珍しい。しかも千葉駅を出てしばらくはレールが4本並び、複々線区間のような規模である。モノレールが簡易な交通システムだと思ったら大間違いだ。
県庁前へ向かう路線は霞川という小さな川の真上を行く。商業が盛んな千葉駅付近と官公庁街を通る川で、モノレールには好都合だ。駅付近は公園風に整備されて、都市のオアシスとして機能する。しかし、ビルの谷間なので陽が当たらず、寒そうである。
県庁前には円形の歩道橋があり、ぐるっとまわって見たけれど、興味を引くものはなかったので、地上に降りずに千葉に引き返す。日曜日なので役所に用がある人もいない。車内は閑散としていた。
しかし、千葉駅の千城台行きホームはたくさんの人が並んでいた。商業の地と住宅地を結ぶ路線であるし、今日は快晴の土曜日である。千葉都市モノレールは2号線が稼ぎ頭なのだろう。
列車は国道16号線を北に向かい、京葉道路の穴川インター付近で右折する。片側2車線の道路の上をスイスイと走っている。眼下にはゴー・ストップを繰り返す自動車の列がある。赤色に光る信号機の真上をノンストップで通過すると優越感がある。モノレール沿線に住んだら、千葉へクルマやバスで出かけるなんて酔狂なことだと思うだろう。しかも、ビルの3階くらいの高さなので、陽射しが入り、眺めもいい。トンネル工事費がかさむ地下鉄よりも、精神的に健やかで快適だ。私はモノレールのファンになった。
自動車の上を通過する快感!
車窓左に観覧車が見えて、動物公園駅についた。園内が見渡せるけれど、土曜の夕方なのに閑散としている。観覧車は回っていたが、稼動していない遊戯施設も多い。ディズニーランドと比較するべきではないかもしれないが、地元の娯楽施設としても人気がないのだろうか。乗降客は少なかった。
みつわ台、小倉台、千城台北の各駅は住宅団地のどまんなかにある。千葉から乗った人々が降りていき、同じくらいの人々が乗る。終着駅の千城台は団地の真ん中で、大きなスーパーマーケットが隣接している。途中駅から乗った人たちは買い物客であった。
帰りの車窓から、街に沈む夕陽を見た。広い空、シルエットとなった建物の向こうに、一日の役目を終えた太陽が姿を消す。車内からは見えないが、銀色の車体は茜色に輝いていることだろう。
帰りにポートタワーに立ち寄る。
千葉みなとからはスクーターで3分。
2004年1月31日の新規乗車線区
JR:0.0Km 私鉄:20.2km
累計乗車線区
JR:15,616.7Km 私鉄:2,430.8km
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