音羽 信
第6回: サザンマン by ニール・ヤング
アルバム『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』より
南部人よ
お前たちがありがたがる本に書いてあることを
忘れないようにしたほうがいいぜ
いよいよ南部にだって
変化の時が訪れる。
お前たちの十字架だって
あっという間に燃え上がるぜ
南部人よ!
綿花畑を見た。
黒人たちがいた。
真っ白な大きな館と掘っ立て小屋
南部人よ
いつになったらやり返すんだよ。
悲鳴が聞こえた。
鞭で打ち据える音が聞こえた。
いつまでこんなことが
いつまで?
南部人よ
お前たちがありがたがる本に書いてあることを
忘れないようにしたほうがいいぜ
いよいよ南部にだって
変化の時が訪れる。
お前たちの十字架だって
あっという間に燃え上がるぜ
南部人よ!
真っ白な百合のような白人女
リリー・ベルにひざまづく黒人。
神に誓ったっていい
俺はあいつを許さない。
鞭で打ち据える音が聞こえた。
いつまでこんなことが
嗚呼、いつまで?
Southern Man -Neil Young
《After the Gold Rush》(1970)
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ニール・ヤングは、私が最も好きなロックアーティストの一人だ。彼がバッファロースプリングフィールズにいた頃から好きだったが、彼のアルバム『アフター・ザ・ゴールドラッシュ』が出た時、私は毎日まいにち繰り返し、飽きることなくアルバムを聴いた。ロック・ムーヴメントが峠を越え、世界中に吹き荒れた学生の反乱も消え失せ、私たちの大学のバリケードも機動隊に簡単に壊された。それは、何もかもが終わってしまったと感じていた当時の私の心の奥底にまで染みた。
ニール・ヤングほど真っ正直にロックの洗礼を受けたアーティストはいない。繊細なガラス細工のような感性と、砕け散ってしまった心を、だからどうしたと言わんばかりの勢いで踏みつけながら、哀しみを噛みしめるようにして前に進むニール・ヤングは、私の心の兄貴分のような存在だった。
アルバムのジャケットもカッコよかった。裏面にはツギハギだらけのジーンズの写真があり、そしてアルバムの曲はどれもどれも美しかった。恋人への、つまりは時代への別れを告げる『Birds』の中の「Tomorrow see the things never come today(明日は、今日という日が決して見れないものを見る)」というフレーズが、哀しくも優しく心に響いた。
そして『サザンマン』。アルバムの中で唯一の、激しい歌。ほかの歌の沈んだ気分を、理由もわからないまま心に淀んでしまったわだかまりのようなものを、全部まとめて投げつけるかのような歌、そしてギター。
カナダ生まれのニール・ヤングが、どうしてアメリカの南部のことを、こんなにも激しく歌ったのかはわからない。けれど、この歌を聴いていると、真っ黒い三角帽子を被った狂信的な集団KKKの不気味な映像が目に浮かぶ。あるいは、このアルバムの前年に公開された『イージーライダー』のラストシーンが目に浮かぶ。キャプテンアメリカを殺した南部の男たちのことが……
ニール・ヤングは実に不器用な男だと、改めて思う。不器用というのは、たとえ1000のわからないことがあったとしても、自分がそれをわからないことをわかっていても、自分にとって確かと思えることがもし三つあれば、もしかしたらたった一つしかなかったとしても、その一つの確かさを抱きしめて、1000のわからないことや、それ以外のすべてを無視して前に進むということだ。
だから、ニール・ヤングは「南部人よ!」と、吐き捨てるように歌う。それが南部人であろうとなかろうと、そんなことはどうだっていい。あれから50年以上も経ったのに、いったい、何が変わったというのか。どうでもいいことを後生大事に、言葉の意味もわからないままに声高に唱えながら、他人を無視し、あるいは虐げる奴らが、昔も今も、世界中どこにでもいる。それがますます増えている。
この歌を聴いた時、私は22歳だった。ニールヤングは25歳だった。それから2年後、ニール・ヤングは『ハーベスト』と言う素敵なアルバムを出した。その中の『Heart of gold(孤独の旅路)』の中でニール・ヤングが歌っていた。「I'm getting old」。「俺は歳をとりはじめている」。この歌詞も私の心に痛く刺さった。その時、私はまだ、24歳だった。
"Southern Man" by Neil Young
『After the Gold Rush』(1970)
https://www.youtube.com/watch?v=M8QeMJ1sv5I

Neil Young(1971)
-…つづく