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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第906回:外国人は辛いよ・・・

更新日2025/07/03

 

トランプ大統領の掛け声でアメリカにテロ、または反米活動を行う可能性?がある国の人の入国が完全に閉鎖されました。自分が先に攻撃、爆撃を仕掛けたイランを筆頭に、北朝鮮、ミャンマー、ソマリア、イエメン、スーダン、リビア、タンザニア、ナイジェリア、アフガニスタン、などで、ハッキリとモスレムの国々それにどこが共産なのか訳の分からない独裁国家の北朝鮮、キューバなどです。この他にも入国制限、厳しい審査の対象になる国々が数ヵ国列記されています。
 
私の甥はメキシコ女性と結婚し、4歳になる娘がいます。それに彼女の連れ子、12歳の男の子がいます。二人の子供はトランプが2回目の大統領になる前に米国で生まれていますから、その時の法に基づいてアメリカ国籍を所有していますが、問題は母親、甥の奥さんの方で、彼女は十代の頃、親に手を引かれるようにしてアメリカに移住しました。いわば正式の手続きを踏まずにアメリカに居住していました。

オバマ大統領の時、そんな風に子供の時に移住してきた外国籍の者に特別処置として、アメリカ人の子供と同じように学校教育を受けさせる権利を与え、その後も基準をクリアすれば滞在・就労許可を与える法案を通過させました。ところが、今外国人追放に躍起になっているトランプ大統領はオバマ前大統領が布いた法案をすべて無効にし、主に中南米の人たちを締め出しにかかっているのです。

甥の家族は、四人揃って奥さんの故郷、メキシコにお里帰りができなくなったのです。メキシコに入る分には問題はないのですが、戻ってくる時には奥さんだけアメリカに入国できない可能性が強いのです。彼女は完全なバイリンガル(2ヵ国語を話す)ですから、オレゴン州の二つの郡の教育庁で新しくアメリカに移住してきた子供、家族のカウンセラーの仕事をしてるにも拘わらず、なのです。

州の法律と合衆国の法律とが食い違っているのです。外交、軍事、国境の管理などは合衆国が司っているのです。いくら州がこの人は州の教育庁で働いていると言っても国境の入国管理局には通じないのです。おまけにICE(氷ではありません;Immigration and Custom Enforcementの略で、国家安全局の下部組織、訳せば移民と税関施行局ですが、語感としては水戸黄門の“お札”のように、泣く子も黙る、外国人全般、移民を取り締まる絶対権力を持つ、すべての州法を超越する合衆国政府直属の機関なのです)がどこにでも乗り出してきて、逮捕状なしに、疑わしきはショッピキ出しました。地元のお巡りさんは傍観するだけです。
 
アメリカで学ぶすべての留学生ビサの発行を停止していましたが、今度は願書を受け付けることになりました。それにはレポートを書かなければなりません。レポートだけなら何とでも言えると移民局は考えたのでしょう、加えて過去にソーシャルメディア(SNSなど)に書き込んだ文書のすべてを提出することを要求しているのです。そこに米国の利益に反する書き込みが少しでもあれば、反米感情が匂えば当然ビザ発行が拒否されます。

このようにSNS、ソーシャルメディアの書き込みをチェックするのは一種の踏み絵で、思想、信仰の自由を踏みにじる行為です。まず一番無力なアメリカに住む外国人を手始めに施行し、徐々に少数民族、黒人、インディアン、ラテン系、アジア系のアメリカ人に広げていくことが目に見えています。
 
ナチス・ドイツのやり方をそのまま踏んでいると言っても大袈裟ではないでしょう。
ナチスがユダヤ人、ジプシー、反ヒットラー的な人物を次々と収容所に送りましたが、トランプ大統領もラテン系の移民を収容所に大量に送っています。当然、収容所は満員になり、サンフランシスコ湾にあるアルカトラス島の監獄をそれに当てるとか言い出しましたが、現在、観光資源になっている監獄を使えるようにするには大変な費用がかかるところから、フロリダ州の湿地帯の真ん中に収容施設の建設を始めています。この湿地帯はワニがたくさん住んでいるので、逃亡しようと湿地帯に足を入れ、泳ぎ出せば、あとはワニが始末してくれるという魂胆です。
 
このような移民、外国人のための強制収容所がアメリカ国内にあることを、私たちはまだかすかに残っている報道の自由!のおかげて知ることができます。それにしても、ナチス・ドイツがユダヤ人やジプシー、精神障害者狩りを行い、どこかの収容所に送っていたことを当時のドイツ市民は知らなかった、気づいていなかったのでしょうか? 街中でユダヤ人が経営する雑貨屋、洋品店などの窓やドアにダビデの星マークをペンキで塗り描き、そのユダヤ人家族がゲシュタポに連行されて行くのを知らなかったとは思えません。そして、彼らが強制収容所という名の大量殺人、処理場で殺されているのを知らなかったのでしょうか? もっとも、人は知ろうとしなければ、そんな情報は耳に入ってこないようにできていると言えますが…。普通の市民であれば、程度の差こそあれ、薄々感づいていたと思うのですが…。

第二大戦中、日系人を収容所送りにしたのもアメリカ政府です。恐ろしいことですが、それは正しい処置だった。アメリカに対し奇襲攻撃をしたのだから、日系人(アメリカの国籍を持っているアメリカ人だった)の強制収容は当然のことだ、原爆を落とされても当たり前だと考えているアメリカ人がまだたくさんいるのです。

歴史的事実を認めないように、現在においても、事実を見ようとする目を開かなければ何も見えないのです。

2025年6月14日にトランプ大統領の音頭取りで、自分の誕生日と軍事パレードが行われました。と同時に、反トランプのデモ『王様はいらない』が全米2,000以上の町でありました。何十万人を見込んだ誕生、軍事パレードの方はガラガラでしたが、『王様はいらない』デモの方は1,000万人以上が参加し、この手の市民運動デモとしては大成功と呼んでも良いくらい歴史的なものでした。

ところが政府発表では、例えば私たちの住む町グランド・ジャンクションで200人の参加者と報道されていますが、実際にデモに参加した隣人が撮った写真ではその何倍もいたのは確実で、主催者によれば10倍の2,000人以上の参加者だったと言っています。
 
このような『アメリカに王様は必要ない』デモは平均的といえば良いのかしら、普通の市民が主体になっていることで、ベトナム反戦デモのように学生中心の運動とは明らかに性格を別にしています。こんな市民運動が存在し、広がっていくことは微かな希望を抱かせます。

このような市民運動の広がりがどのくらい現行の政策に影響を与えるかは分かりませんが、少なくとも数百万人のアメリカ人が政治意識を持っているのを知っただけでも良かったと思っています。

-…つづく

 

 

第907回:アメリカ的弁護士社会

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えていました。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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