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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第901回:マナーとエチケット

更新日2025/05/29


それぞれのお国柄でエチケットが違うのは当然のことでしょう。ちょっとした仕草でも、ある国ではマナー違反とみなされることがままあります。

私は日本を割りによく知っていると思うのですが、おまけに元日本人らしきダンナさんとかれこれ45年も暮らしているのですから、極端に日本的儀礼から外れた行いはしていないと信じたいのですが、確信はありません。どこかで日本ブームにあてられたとんでもなく滑稽な外人を演じていのるかも知れません。

アメリカ人はチューインガムをクチャクチャ所構わず噛む癖があります。確かにチューインガムは口内を乾燥させず、潤すために役立ちます。それに緊張を和らげるのでしょうか、野球やバスケットボールの選手も愛用しているようです。今では少なくなりましたが、チューイングタバコをクチャクチャ噛む野球の選手が一時たくさんいました。あれはペッツと唾を吐くので見苦しく、汚らしい仕草でした。何でも試したがるウチのダンナさん、初めてアメリカに来た時、チューイングタバコを買って試食?したのには驚きました。本人もウヘーッと言って、ひと摘み味見しただけで捨ててしまいましたが…。

テレビのニュースに登場するキャスター、インタヴューアーらは流石にチューインガムを噛みながらの人はいませんが、インタヴューされる側の人、答える人にまだクチャクチャとガムを噛みながら話す人は相当います。あれは非常に見苦しい、品のない行為に思えます。

チューインガムはチョコレートと共に戦後のアメリカ文化を象徴するモノかもしれません。それ以前では、日本にも、ヨーロッパにもチューインガムを噛みながら街中を歩く、話す習慣はなかったのではないでしょうか。食事の時以外人前で口にモノを入れ、口を動かしているのはいかにも品のない、エチケットに反する行為であったようです。

チューインガムやチョコレートは、グリンゴー、GIがジープから敗戦国の子供たちにばら撒き、一挙に広がったのでしょう。

今でもアメリカで人気がある食品は手で掴みでパクつける、ハンバーガー、ピサ、それにソフトクリーム、アイスキャンディー、大きな紙コップに入れたコーヒーが王座を占めていて、ナイフ、フォークなしで食べられるものが主流です。アメリカ人は、白いテーブルクロスにピカピカに磨き上げたナイフ、ファークが何本も並んでいる食卓は苦手なのです。余程気取ったパーティーでもない限り、パーティーといえばバーベキュー一本やりです。それも紙かプラスティックのお皿にカップで、ひょっとするとナイフ、フォークまでプラスティックの使い捨てです。

日本では、喫茶店はインテリアに凝り、一つの小宇宙を作っていて、そこでユッタリとコヒーを味わいながら、静かな良い時間を過ごすところです。それにしても、あのコーヒーカップの小ささ、もちろんとてもエレガントな焼き物なんでしょうけど、には驚かされます。三口啜ったらカラになるんじゃないかしら。どこかにあるのかも知れませんが、喫茶店でマグカップでコーヒーを出すところを知りません。まるで茶道をそのままコーヒーに持ち込み、日本式コーヒー道を作り出しているかのようです。

アメリカでいくら日本ブームで、日本食、ラーメン、お蕎麦、うどん、丼物のレストランが増えても、日本式の喫茶店はまだないようです。

最近の流行りはコーヒー・スタンドです。街の一角に小洒落たバンガローのような小屋で100%お持ち帰りの客だけを対象にしたコーヒーショップです。カップも小から特大まであり、ウチのダンナさん特大カップを観て、「オイ、ありゃ馬にでも飲ませるつもりか?」と言うほどバケツに近い大きさなのです。

こんなコーヒースタンドが谷間の大学町でさえ7、8軒はあるでしょうか、老舗のスターバックスなどを大いに脅かしています。お値段は中カップのミルクコーヒーで5ドルくらいしますから、決して安くはないのですが、これが結構流行っています。

多くは車で来てのお持ち帰りのようです。事務所や教室で飲むのでしょうね。大学でのことしか知りませんが、教室に水を、カッコイイ水筒を持ち込むのは当然のこととして通っています。そこから、授業を受けながらスポーツドリンク、ソフトドリンク、コーヒーを飲むのは当たり前になってきました。こっち、先生の方が喉をカラしてしゃべっているのに、それを聞く生徒さんの方は、どこだかのグルメコーヒーを飲んでいるのは、どうにも納得できません。
 
キャンパスでコーヒーなどのカップとスナックを持ち歩いてる生徒さんの多いこと、アメリカ流の歩きながらモノを呑む、食べる文化?の萌芽(難しい言い方を知っているでしょう!)を見るような気がします。

悪い意味でも素早くアメリカ文化を取り入れる傾向のある日本人、抵抗なく食べ歩きし始めたのは、ソフトクリームでしょうか。割り箸の片割れに付いたアイスキャンディーは子供の時なら舐めながら歩いてもお行儀が悪いですよ、と叱られなかったと想像しますが、ソフトクリームは舌をベロッと出して、下から上へと舐め上げますから、とてもお上品に食べ歩きできるモノではありません。しかも太った女性がこれ見よがしに舐めていると、チョット、カロリー摂取量を考えた方がいいんじゃない? と余計な心配もしたくなります。
 
でも、オモテで食べながら歩くためのマナーなんてありませんから、要は慣れの問題で、見慣れれば、そんなもんかで済んでしまうのでしょうね。咥えタバコで街中を歩いている風景と同様に、ちゃんと室内で吸うか、舐めるか、そのまま通りに出るかの問題に落ち着くのかもしれませんが…。

 

 

第902回:米語オンリー?

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えていました。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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