第137回:またまたオリンピックのこと
更新日2009/11/26
人間、誰でもそうでしょうけど、だから言ったじゃないの、やっぱり私の言った通りでしょう、と自分の先見の明を自慢したくなることがあるものです。
実際の本を読んでいないのに、ましてや外電だけから判断し、色々言うのは気がひけるのですが、あまりに"さもありなん"なので、それと、私にも人並みにある"だから言ったじゃないの"と言いふらしたい気持ちに負けて以下を書きます。
ソルトレイクの冬季オリンピック開催を決めるとき、当地を訪れたIOC委員に賄賂に近い接待があり、大きなスキャンダルになったことは有名です。その教訓を生かして、IOC委員の夜の接待を禁止し、投票権のある委員が個人で開催立候補地を訪れることも禁止しました。
しかし、接待や秘密の会談や取引はなにも開催立候補の町に行かなくてもできるのです。
中国オリンピック委員会の会長を務め、北京オリンピックの立役者である袁さんは、2004年にスイスで、こちらもIOC会長に立候補していたジャック・ロゲ委員に密かに会い、北京にオリンピック開催が決まるように、票マトメを依頼し、見返りとして次期IOC会長の選挙に、ロゲさんを推すと秘密の約束を交わしたと……袁さん(袁偉民、前の中国国家体育総局長、2008年北京オリンピックの立役者)が今だから言える式の暴露本を出版したのです。事前に、ことわったように私は中国語ができませんし、この本の英訳すら読んでいないのですが、さもありなんと思いませんか?
この秘密の取引の結果、北京にオリンピックは決まり、袁さんは北京オリンピックの立役者になり、ジャック・ロゲさんもIOCの会長に納まり、両者ともめでたしめでたしと相成りました。
アフガニスタンの大統領選挙では一回目に大量の不正票が見つかり、再選挙になりましたが、現大統領、カルザイ氏の対立候補者、元外務大臣だったアブドラ氏がもう一度選挙をしても、公正な選挙はとても期待できないとアッサリ降りてしまい、競争相手のいないカルザイ氏は無投票で大統領を続けることになりました。
このニュースは、世界中で大きな反響を呼びました。アメリカ国内では現実的に選挙の混乱、テロを避けることができたから、それでよし、という論評が幅をきかすほど、アフガニスタンで誰がトップに立つかは問題にしていません。アメリカ人は、誰がアフガニスタンの大統領になっても同じだ、どうせアメリカが、タリバン、アルカイダをやつけるまで、彼らは何もできないのだからと心の底で思っているのでしょう。
ところがIOCも同じようなもので、密談に応じること自体狂っているのに、その場で秘密の取引を交わすような人物が会長になる団体なのです。アフガニスタンの大統領と同じで、誰が会長になっても大勢に影響がないのかもしれませんが。
こうした、肥大化し、大金が動くIOCのスキャンダルに触れるたび、もともとあまり熱心でないスポーツファンの私は、完全にオリンピックに興味を失くしてしまいそうです。ロゲ元IOC会長さん、袁さんには(同類の人がたくさんいるでしょうね)、あなた方の行為がどれだけオリンピックを、スポーツを損ねているか知ってもらいたいと思います。
第138回:アメリカの予備校事情 その1