■ニューヨーク・カッパ便り~USアート見聞録

原園 綾
(はらぞの・あや)


在ニューヨーク。アーティストおよびアート・プログラムについて気ままにリサーチ中。ハンター・カレッジ人類学修士課程では知覚進化やアートの起源がテーマ。新しい趣味は手話と空手。2004年はいい感じ。

 

 
第1回:アートな旅
~サンタ・フェ&ラス・ベガスの巻

第2回:美術館でダンスの
展覧会を観るの巻

第3回:アングラ、ライブ、ビデオ、
エッチング…etc
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第4回:幻想的な空間を楽しめるビジュアル本をご紹介
第5回:春だよ、イースターだよ、
ピョンコちゃんだよ!

第6回:中間試験が近づいてきたあ…ゲロ!

第7回:ギリヤークさんのスワン・レイクに胸キューン!


■連載完了コラム
Gallery 1 by 4
~新進アーティスト・ガイド from New York

[全33回]

生き物進化中
~カッパのニューヨーク万華鏡日記

[全15回]

只今、生き物進化中
~カッパ的動物科学概論
[全15回]

■更新予定日:隔週木曜日

第8回:春のウィリアムズバーグ

更新日2004/05/06


ソーホーからチェルシーへコンテンポラリー・アート・ギャラリーのほとんどが移動したと同時に、ブルックリンウィリアムズバーグ にも多くの若手の画廊がここ6、7年で一挙に集まったね。

ちなみにチェルシーには200以上。ウィリアムズバーグには50近く。98年、初めて出張で行った時は、そのウィリアムバーグにあるアーティストのスタジオにて打ち合わせで、地域のことがよくわからなかったのでタクシーで行ったなあ。マンハッタンから橋を渡って時間は長くなかったけど、気分的には、「おー、これぞニューヨーク!」って感じのちょっと荒れた、そしてエスニックな(英語が通じなかった)所で、面白いカルチャー・ショックを味わったものじゃった。地下鉄でマンハッタンからすぐだったのだけど。

しかし、今や新たなるソーホーというか原宿というか、ギャラリーやパフォーマンス・スペースだけでなくレストラン、クラブ、ショップなどが並び、週末は若者が沢山集まって、かなり賑やか。そしてスペースを求めてウィリアムズバーグにスタジオを持ったアーティストの中には、ビルがアパートに改築されると立ち退きさせられたり、家賃が上がって引っ越したり、出て行く人も。

でも、マンハッタンにスタジオを持つのと比べたらまだまだお得だし(ウィリアムズバーグの中でも端にいけばまだスペースは入手しやすいはず)、ちょっとしたアートなコミュニティーもあるし、なかなか元気ではあるわけだっ。


リーの個展オープニング
奥の横顔、赤いスカートがリーちゃん。


リーの写真作品
Works by Leigh Tarentino

以前Gallery 1 by 4で紹介した リー・タレンティノ Leigh Tarentino の個展が行われたのもウィリアムズバーグの画廊。白いフレームに入ってきれいに展示された作品には、もういくつか売約済みの赤丸が! おめでとう! 

大きい画面の新作や写真作品も発表していた。いずれもミラー効果で水平や垂直にイメージをダブルにした構成。オープニングは、一般のお客さんにリーのアーティスト仲間や家族も交ざって楽しいレセプションでしたよ。主役のリーは髪をくりくりにカールしてカワイかったね。


リーの新作
Works by Leigh Tarentino


リーのドローイング作品
Works by Leigh Tarentino

そして、先週末はウィリアムズバーグにスタジオを持つアーティスト総勢75名が、一斉にオープン・スタジオを開催しました。オープン・スタジオとはアーティストが制作しているスタジオ、時には住まい(スタジオと住まいが一緒のことも多い)を解放して作品を一般の人たちに見てもらい、直接販売する機会。

ギャラリーで発表するより作家がお客さんと話せる時間が持てるし、作品だけでなくスタジオや住まいも含め作家の雰囲気を感じられるというのは中々面白い。直接買えるし、この手のイベントは若手のアーティストが多いため、価格も手ごろなものに出会えたりするのよー。


オープン・スタジオ開催中の目印。

とてもいい天気の週末で、道行く人の手元にはスタジオ一覧の地図がちらちら見えたね。いくつかのビルにはスタジオが集中して、20軒ぐらい入っていたりする。私は、チラシが目に留まって去年オープン・スタジオで訪ねたことのあるアーティスト、ティム・リンチ Tim Lynchの新しいスタジオに行って来た。


ティムのスタジオにお客さん
Works by Tim Lynch


ティムのペインティング Works by Tim Lynch

彼の場合は住まい兼スタジオ。台所に無理矢理ベッドを押し込んで、奥の二部屋を使ってティムの絵画、そしてパートナーのローレンの写真を展示していた。彼のペインティングは去年見たものもあったけれど、新作もたくさんあった。キャンバスの作品と紙の作品。自分で黒い箱状のフレームも作ったグワッシュとオイルの紙の作品がなかなか良かった。キャンバスの絵画でやっていることが、素材やサイズを変えることで、どこかが少しずれるというのか、曖昧になるというのか、決して悪い意味ではなく、かなり見る方も作品自体も違った居心地を見出せたような。


ティムの新作
Work by Tim Lynch

同時にローレン・ナイトン Lauren Knighton の写真もオープン・スタジオならではの思わぬ発見。現代のアメリカの色ではない、少しレトロな、空気はちょっとヨーロッパな写真。部屋を撮っているのだけど、人気のない空間はそれだけで発酵しているような、凝縮されたものがある。プラスチックのゴミ箱から単にサランラップがはみ出ているところを撮った作品は、とても静かでスチール・ブルーがきれいで、ラップではなく水がはじけているのかと思ってしまった。



ローレンの写真
Works by Lauren Knighton

ティムは4月下旬からアトランタのギャラリーで個展が始まったばかり。いつ行ったの? との話から、作品をギリギリまで描いていたので、前日に作品を積んでアトランタまで、車で片道1,400kmノンストップ、丸一日かけて行ったそうです。元気だなあ。ま、ローレンも一緒だったからね、楽しいドライブだったかな?!


ティムとロレーン、オープン・スタジオの一日
Tim & Lauren

 

第9回:徹底的おバカ映画と素晴らしきオタク映画