■生き物進化中~カッパのニューヨーク万華鏡日記

原園 綾
(はらぞの・あや)


お友達による原園綾紹介 
黍野美有紀(きびのみゆき)編


原集合、ウオーミングアップ後のポジション発表。
息子(7歳)は「やったぜ!僕はMFだ!」
コーチの指名はFWだったのに、「僕はMFの方が自信があります」
消極的で内向的だった彼の強い自己主張。
試合中の彼は私の知らない男だった。
いつもの「心の優しい浩太朗」ではなく、闘志みなぎる強さがあった。
私はありったけ大声で息子の名前を叫んで、応援していた。
試合終了寸前に息子はゴールをきめた。
一瞬、信じられなかった。
「あの、鈍くさい息子が__」
そしてPK戦
「浩太朗、行け!」とコーチ。
私は思った、「うそーやめて。彼は緊張に弱いんだよ」
コーチに背中を押されて、彼は走ってキーパーの正面に堂々と立ち、屈伸をしていた。
試合終了。息子は私の胸に倒れ込むように抱きついてきました。
興奮、緊張、闘志、自信、喜び、悔しさ__。
「僕を応援してくれてありがとう」
私は感動しました。
原園綾は、この私の小さな息子に感動してくれる人です。
私は息子の一番のサポーター。
私は原園綾の人生のサポーター。
原園綾は私の人生のサポーター。




第1回:帰り道はセントラルパークを抜けて
第2回:カッパ、アートの現場すきやねん。
第3回:ダンス三昧の夏、NYの夏
第4回:カリフォルニア温泉ぶらり旅
第5回:カッパ夏休みボケ克服の巻
第6回:いろんなお鼻そろってまーす
 
最終回:カッパ、師走だ走れ!

更新日2002/12/26

「あー期末試験が終ったー」と思ったら、もうクリスマス目前!! 家にこもりがちだったので、久しぶりに街中に出て愕然! ピカピカな巨大ツリーに、大きな買い物袋を下げた人、人、人。この時期は全米からクリスマス・プレゼントのショッピングにニューヨークに人が来るんだった─。もう寝不足カッパには人混みでゲンナリ。セールもあるけど、購買欲ゼロ。フラフラ歩いていたら、大急ぎの大荷物の人たちにぶっ飛ばされちゃうのだった。もう、おうち帰ってキュウリかじって横になりたい。

カッパ、理想のクリスマスの図

期末モードに突入する前に、一週間オランダに行ってきたカッパ。アート関係の人に会うためだったので、ニューヨークからもアーティスト情報をということで、アーティストを探せるファイルに行ってリサーチしてみた。Non-profitのアート・スペース※でアーティストの登録ファイルがあるところは、ニューヨークだけでも5、6ヵ所はある。

ニューヨークは世界的に名前の知られたアーティストもたくさんいるけど、実際はその何百倍ものアーティストが存在する。当然アメリカ人以外のアーティストも多い。ヨーロッパで活動していたけれど、活動の幅が広がるにつれニューヨークにいた方が便利だし、世界市場だし、と売れてから移ってくる人もいれば、新進のチャンスを求めてやってくる人もわんさかいる。特に若い人はアート系の大学に進学するためにやってきて、そのまま残って制作する場合も多い。

今回は膨大なファイルから探すため、日本人で写真を扱っている作家に絞って見てみた。作家ごとに作品のスライドが20~30点入っているので、特に写真作品だとだいたいの感じはわかる。スライドを見た上で気になる作家にコンタクトしてみた。20~30代の若手日本人、皆各々異なる状況の中でたくましくやっていた。作品を扱ってくれるギャラリーがあったり、補助金の出るプログラムに参加して新作をつくったり、コンテストで受賞したり、夫婦ともども作家だったり、作品とは別に雑誌の仕事をしたり、大学で教えたり。とにかく十人十色。作品も皆違うのに外国で制作している日本人という共通項からか、「アイデンティティー」「記憶」「定まらないもの」「うつろうもの」「はかないもの」といった言葉が当てはまる。

オランダでは、アーティストだけでなく、ギャラリー、美術館、美術大学院、また建築、デザイン業界の人にも幅広く会えた。「売れ線と新進」というニューヨークのアートシーンからみて、アムステルダムは「中堅」の層が充実して見えた。とてもいい作品なのに、ニューヨークではまだ見たことがないような作家がたくさんいる。ある作家に素晴らしい作品を見せてもらっていたら、「これはベルリンに送る分、これはパリ」と言っていた。ヨーロッパの中で十分発表する場もあって、作品も売れて生活できて、うらやましい環境だなあ。まあ、なにはともあれ、いい作品だからなんだけど。

たぶん、ヨーロッパの中で制作するということは、いわゆる西洋美術史の延長にいるわけで、西洋史のなかで試みて否定され、あるいは肯定されたあらゆるものがいろんな形で作品に見えかくれする。奥深く、でも(キリスト教的ですが)罪深いような人間の存在、そして世界の存在が痛いけど美しく表現されてしまった時なのかなあ、ため息が出てしまうのって、どっかシャープで、かつ光ってないとねっ。

アーティストといってもいろんな局面があって、一人のアーティストの中にもスタイルを確立してゆく段階、発展してゆく時、変わってゆく時など。ニューヨークにはその最初の段階の若い芽がたくさんあって、自分達で展覧会をやったり、スペースを作ったり、場がたくさんある。しかし、その先、プロフェッショナルになってゆく過程が突然なくなるような感じで(ただ私にはまだ見えてこないだけで、全くないわけないのだが)、あとは一流のイケイケのギャラリーと市場に食われてしまっているようで、時々、キュウリ食べ過ぎたみたいに、お腹がいたくなる。うーっ!(ダダダッッ)

※Non-profitのアート・スペース
作品を売るための商業的な画廊ではなく、個人からの寄付金や公共の助成金などで運営している非営利団体、いわゆるNPO (Non Profit Organization)。目的は新進アーティストに発表する場を与えるというものが多い。個展よりはグループ展で一度に多くの若手アーティストの作品を紹介している。

 

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