第8回: 悪夢のハンガリー・スロヴェニア徒歩越境
更新日2002/05/09
はじまりは、リュブリャーナにあるバスターミナル案内所の偽情報。
「ハンガリーのブタペストへの国際バスはないよ。鉄道が通ったからね。ただ国境の街まで行けばハンガリー行きのバスがあるからそれに乗ればいい」。
バスの出発まで1時間。鉄道の出発までは8時間も待つ必要がある。到着時間を聞くと、「10時間かかる」と言われ、そんなに時間がかかる距離でもないのに、と一抹の不安。しかし、待ち時間にうんざりしていたこともあって、バスのチケットを買った。
国境の街に着いたのは夜の10時、予定より3時間も早い。バスターミナルで国際バスについて聞いてみると、不安が的中。
「誰だそんなことを言ったのは…。ハンガリーまでのバスはあることはあるけど、定期路線じゃないよ。安宿? そんなの知らない。国境まで7キロだからとりあえず行ってみたら」。
そんなやりとりを聞いていたターミナルのスタッフが、家に帰るついでに国境まで連れて行ってくれることになった。国境までは10分もかからなかった。国境のゲートに入ると、スロヴェニアの国境係官が集まってきた。
「徒歩で国境を越えるのか? ハンガリー側で迎えは来ているのか? LINTIという街まで10キロ、歩くかタクシーを電話で呼ぶしかないよ。まったく、なんで鉄道で行かないんだ。ところで、ユーロは持っているのか?
ハンガリー側は両替所がないけど、ユーロがあればなんとか使えるよ」。
そう言われて、歩いて5分の通関事務所へ行って、ユーロの少額紙幣を用意。戻ってきて国境を出ると、今度は50メートル先にハンガリー側国境。ここでは完全な不審者扱い。スタンプだらけのパスポートを持っているので、余計に怪しまれて徹底的に調べられた。
「入国スタンプ押してやるよ。街まで歩いていくしかないな」。国境係官が指差す先は、ほとんど真っ暗。答えはひとつ。ヒッチハイクしかないと思い、国境から出てくる車の前に立ちはだかる。
「何でこんなところに一人でいるんだ。駅まででいいか?」。運よく最初の車でいい人に巡り会い、強引に乗せて貰った。駅に着くと、中はホームレスだらけ。駅員も誰もいない。「これはヤバイ」と、大急ぎで駅を後にして暗闇の道をトボトボ。もうどうにでもなれとヤケクソ気分。約30分歩いてパブを発見。時間はもう深夜の1時。中に入ると、一斉に視線が集中。突然入ってきた東洋人を見て唖然としている。
とりあえず熱いコーヒーを飲んでから、お店のマスターに事情を説明。
「代金をユーロで払いたい」と言うと、ユーロを初めて見たとかで、計算に一生懸命。両替にも応じてもらって、タクシーも呼んでくれた。
タクシーの運転手もとてもいい人だった。一番安い一泊10ユーロのレストラン兼ホテルに連れて行ってくれ、ブタペスト行きの時刻とバスターミナルへの地図も書いてくれた。英語ができないホテル従業員との通訳もしてもらった。
こうしていろんな人の親切に支えられて、何とか無事にベッドで就寝。長い一日は終わった。そして普通に列車で国境を越えていれば、一生立ち寄ることはなかった"LINTI"という街がとても好きになった。
「海外移住情報」東欧写真集
http://www.interq.or.jp/tokyo/ystation/eep.html
→ 第9回:今時の卒業旅行者たち