第14回:アマゾンのオタクな人びと
更新日2005/04/21
こんにちは、めだかです。
ニホンのアニメが海外でも人気だという話はよく聞いていたし、各国にコアなファンがたくさんいて、マンガ専門店ができたり、アニメのイベントが開かれているという記事を読んだこともある。でも実際に自分の目で、しかも赤道直下のアマゾンでもそういう状況になっているのを見ると、こんなにすごいのかぁーと感動を覚えてしまう。
アニメ&マンガはもうすーっかりブラジルに溶け込んでいる。テレビでは吹き替え版の『ポケモン』『遊戯王』『聖闘士聖矢』etc.が毎日のように放映されているし、街のキオスクみたいな売店に行けば、『バカボンド』『カードキャプターさくら』などのポルトガル語版のマンガがずらっと並んでいる。こちらに来てから知った作品もけっこうあるくらい。
そしてベレンに来てからずいぶんと「オタク」の友だちや知り合いができた。しかもそれは剣道クラブが縁になっている。剣道とオタクなんてどうにも結びつきそうもないけど、そもそも剣道を始めるきっかけが、マンガの『るろうに剣心(新選組の話)』や『バカボンド(宮本武蔵の話)』だったりする場合が多いので、両者はしっかりつながっているのだ。
ここでは「オタク」に対するイメージは、発祥の地のそれとはちょっと異なる。ニホンだとこの言葉はあんまり歓迎されるようなものではなくて、「ほら、あの人オタクだから…」と他人の背中でこそっと言われるような少々不当な扱いをされてるけど、当地では明るく元気な女の子が、「わたしオタクなんだ~♪」とニコニコと自己紹介しているくらいで、ずいぶん印象が違う。
誘われてオタク関係のイベントにも何度か行った。その名も、「オタクの祭り」。まず何と言っても来場者が一番力を入れているのはいわゆるコスプレ。友人も何ヵ月も前から何に扮するかを決め、材料や資料を用意し、家のメイドさんにコスチュームを仕立ててもらっていた。さまざまなアニメ(マンガ)の登場人物に扮したブラジル人がずらっと並んでいる様は壮観。特にスタイルのいい女の子が『セーラームーン』なんかの格好をしてると、妙に似合っていてほぉーと感心してしまう。
色っぽいセーラームーン。
新選組ももちろんいます。なり切ってます。
そして会場の売店にはずらーっとマンガ雑誌やアニメのフィギア、同人誌などが並び、みんな真剣な表情で物色している。しかもポルトガル語版の本だけじゃなくて、オリジナルの「月刊マガジン」などもそのまま並んでいたりする。マンガがきっかけになって日本語を勉強し始める人もずいぶんいるという話だし、こういう雑誌を使って勉強しているのかもしれない。
売店は大盛況。売り子さんももちろんコスプレ。
ビニール製の桜がニホンらしさを醸し出している(?)
マンガ本に混じって"Yakuza"なんていう怪しげな本も…。
会場の奥には大きなスクリーンのある映画館みたいなスペースがあり、ポルトガル語字幕つきのアニメ番組やJポップのミュージックビデオなどを延々と流していた。お気に入りのアニメが登場するとやんやの喝采で、さすがブラジルのオタクだなーというノリだ。
アニメ以外でも、BoAとか宇多田ヒカル、ラルクアンシェルなどが画面に現れたときに「ウォー!」とすごい歓声があがったのには驚いた。もはやオタクの対象となるのはアニメだけではなく、ニホン文化全般の域に近づいてるのかも。
そう言えば、その証拠にというわけでもないけど、ベレンや近郊の地で日系人団体主催の夏祭りや七夕祭りなどが開かれると、オタクなブラジル人たちは手製の浴衣を身にまとい、こぞって参加している。それも彼らにとってはほとんどコスプレと同じような感覚みたいで、うちわを手にし、嬉々として盆踊りに興じている姿がよく見られる。
コスプレ大集合。地元のテレビ局も取材に来ていた。
そしてみんな一様に、「いつかニホンに行ってみたいな」と夢見るようなうっとりした顔つきで言うのだ。オタクな彼らにとって、彼の国はまさにアニメの聖地、憧れの地なんだろう。
子どもの頃から慣れ親しんできたアニメやマンガがこうして地球の反対側の国でも愛され、ほとんど崇拝されているような状況を見るのは不思議な気がするけど、やっぱりうれしい。8月にはベレンでまた大規模なオタク祭りがある。今度はいったいどんなコスプレが見られるのかなーと今から楽しみにしている。
第15回:こんなものを食べてます-その2