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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第524回:オリンピックいろいろ

更新日2017/08/10



東京オリンピックまであと何年と話題になるほど間近に迫ってきました。メインスタジアムの設計、建築費用や各競技場の施設の問題が取り沙汰されていますが、経済力のある日本の、しかも首都の東京での開催ですから、毎回オリンピックを主催する都市について回る“懸念”に比べると、問題はほとんどないに等しいと言ってよいと思います。

オリンピック自体が、商業主義になりすぎ、異常にお金がかかる催しモノになってしまい、よほど大きな国のお金廻りの良い町でなければ主催できなくなっていることの方が問題なのですが、アフリカやアジアの貧しい国でもオリンピックが開催できるようにならなければウソです。

オリンピックにも色々あり、先日、国際数学オリンピックで日本チームが金二つ、銀二つ、銅二つと、6人の参加者全員がメダルを獲得したニューズがインターネットに流れました。この数学オリンピックは1959年にルーマニアで開催され、当時は旧共産圏の教育促進、向上のためでしたが、現在では世界中から参加者がある大きなオリンピックになりました。数学ほかに物理、化学、情報、生物、地学などの分野でもオリンピックが開かれています。

今回の国際数学オリンピックで金メダルを獲得した高谷悠太君は、3年連続でメダルを獲得しています。スポーツのオリンピックと違い、数学オリンピックでは参加者の上位8パーセントは金メダル、銀メダルは上位17パーセント、銅メダルは25パーセントと振り分けられていますから、金メダルを貰った生徒さんは8、9人いることになります。

参加基準は20歳未満という年齢制限がありますが、下限の制限がなく、最年少記録の金メダル獲得者は10歳の香港系のオーストラリアの少年で、その後、彼は24歳の若さでアメリカ、カリフォルニア州の大学UCLAの教授になっています。

各国から6人まで出場者が認められています。日本の場合、この出場権を得るのは150倍もの難関で、日本代表としてオリンピックに出場できるだけでも、スポーツのオリンピックと同じくらい大変なことなのです。

今回は111ヵ国から615人の参加者があり、国別で常勝中国がトップの座を韓国に譲り、国別では1位韓国、2位中国、3位ベトナム、4位アメリカ、5位イラン、そして日本は6位でした。

すべての競技がそうであるように、出場者、メダル獲得者は選び抜かれたエリート集団で、底辺にいる何千、何万、それとも何千万いる数学音痴の子供たちとはほとんど無関係だ…という意見もあるでしょう。でも、教育者のハシクレである私はそうとは考えません。トップクラスがいれば、そのトップクラスが自然底辺を広げていくものなのです。

チョット話は飛びますが、日本の将棋界で14歳の中学生、藤井聡太君がオジサンプロに勝ち続け、破竹の29連勝しましたが、彼の影響で若年の将棋層が格段に広がりました。

確かに、このような数学オリンピックでは、提出された問題を様々な方向からアプローチして解決していくのですが、数学者は問題を見つける、作り出すことの方が肝心だそうです。そうなると、やはり尽きるところは創造力の問題になります。

私は数学が大好きで、よほどその分野進もうかと考えたこともあります。しかし、私にはそのような創造力がないと自認していましたから、とても数学者にはなれない…と諦めました。

ウチのダンナさんによれば、日本は数学、とりわけ関数の問題を和算で解く伝統があり(過去にあった?)、問題を鮮やかに解いたものを額に入れ、神社に奉納していたといいますから、アマチュアの数学好きがたくさんいたのでしょう。数学が流行る国なんて聞いたことがありませんし、他にないでしょう。

今回の、数学オリンピックがきっかけになり、世界中でもっともっと数学が流行れば良いと思います。数式や理論には美しさがあると思うのです…と偉そうなことを書いてから、数学オリンピックの問題を見たところ、私には第一問題の意味すら分からなかったことを告白しなければなりません。頭の体操に初等数学を始めようかと…思っていたのですが、ハナからクジケテしまいました。

 

  

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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