第331回:高いことは、良いこと? 高層ビルの人気度は…
バベルの塔を築こうとした大昔から、人間にはどうにも、高い物、ビル、タワーを建てようという願望が潜在しているとしか思えません。建てるのが一つですが、それに登りたがる人が結構たくさんいるのも驚きです。逆に高いところに登りたがる人が多いから、そんな建物、タワーを建てる人が出てくるのかもしれませんが…。
東京のスカイツリーが完成したときのバカ騒ぎは、チョット信じられないくらいでした。私は今どき東京の濁った空気の中に立つそんなタワーに誰が登るのか、大人気ない世界一高いタワー競争に勝ったからといってそれが何なのだ、と非常に懐疑的でしたが、私の予想は見事に裏切られ、連日大変な混雑のようです。
ニューヨークにあった世界貿易センターツインビルが9.11で崩壊し、その跡地に建築中の超高層ビルが完成に近づいています。1,776フィートの高さというのは、アメリカ建国の年1776年に合わせたもので、メートルに直すと541mになります。もちろん、アメリカで一番高いビルになりますが、世界にはもっと高いビルがたくさんあります。
世界貿易センターのツインビルがテロで潰れた時、そこにまた高いビルを建てるアイデアは確固たる方針だったようです。常識的に考えても、そこに同じような高いビルを建てれば、アルカイダなどの、アラブの狂信的グループがシカリキになって壊そうとするでしょうし、第一、そんな標的にされやすいビルに誰がは入るの…と思っていました。政治、経済音痴の私の懸念は、半分当っていました。
やはり、今までに半分も入居者が決まっておらず、入居規準をガクンと下げて、中小企業でも、弱小企業でも入居できるようにしてもガラガラ、スカスカの状態だそうです。見栄、ハッタリが必要な日本の怪しげな企業も今なら入居できますよ。
今一番、お金のあるハイテック産業の企業はもっと実践的です。マイクロソフト、オラクル、グーグルにしても、そんな通勤に不便で、テロの危険に曝されている高層ビルには見向きもせず、広々としたところに緑に囲まれた独自のビル、コンパウンドを創っています。
こんなビルに入るのは、押し出しや見得が必要な外国の銀行、投資会社、保険会社が多く、自分の国で、私の会社は、銀行は、あのビルに事務所を構えている…と言いたいために借りるケースが多いのだそうです。
テロの危険性の非常に少ないアラブの国、ここではアラブ首長国連邦、ドバイにあるビルの入居状態を見たところ、エメリタス・タワービルは32%の入居率、ブルジカリファ・タワービルは29%しか入居していません。中国のツフェンビルでも30%です。ということは、高層ビルは時代遅れの発想で、実用的でない…とそれを利用する企業が気が付き始めたということでしょうか。それに供給が多過ぎるのかもしれません。
スペインのリゾート地に建てられた分譲高層マンションは、高層化の波に乗ろうと建築を急いだのでしょうか、ビルが完成し、まずまず分譲マンションも売れたのだそうですが、少し急ぎ過ぎたのでしょう、エレベータを付け忘れ、20階、30階の入居者がキャンセルしたり、裁判に訴えたりしています。
ウチの甥っ子が日本に遊びにきた時、頭にタンコブが消えませんでした。彼はそのとき16歳でしたが、すでに身長が198cmあり、普通の家のシキイ、カモイに額をぶつけるだけでなく、電車の乗り降り、天井から下がっているランプなど、普通の背丈の日本人なら意識しない、ありとあらゆる障害物に当たりまくっていました。おまけに横になったらなったで、布団から足が長大にはみ出るともこぼしていました。彼曰く、「標準より高過ぎて良いことはひとつもない」。
バベルの塔は、神の怒りに触れて破壊されました。
第332回:他人のお金と国家予算
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