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■店主の分け前~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと
第175回:ラグビーW杯まであと1年 (中)
更新日2010/10/21


前回は我がジャパンの展望を中心に書いてみたが、今回は全体について考えてみたい。くり返しになるが、W杯の予選プールを下に記してみる。()内の数字は今年10月4日現在の世界ランキングで、前回と変わっていない。

プールA: ニュージーランド(1) フランス(4) トンガ(16) カナダ(14) 日本(13)
プールB: アルゼンチン(8) イングランド(6) スコットランド(7) グルジア(17) 予選敗者復活戦勝利国
プールC: オーストラリア(2) アイルランド(5) イタリア(11) ロシア(18) アメリカ(15)
プールD: 南アフリカ(3) ウエールズ(9) フィジー(10) サモア(12) ナミビア(20)

それぞれのプールで上位2チームが決勝トーナメントに進むことになる。その決勝トーナメントの組み合わせは、

準々決勝第1試合 プールB1位通過チーム 対 プールA2位通過チーム
      第2試合 プールC1位通過チーム 対 プールD2位通過チーム
      第3試合 プールA1位通過チーム 対 プールB2位通過チーム
      第4試合 プールD1位通過チーム 対 プールC2位通過チーム

準決勝  第1試合 準々決勝第1試合の勝者 対 準々決勝第2試合の勝者
      第2試合 準々決勝第3試合の勝者 対 準々決勝第4試合の勝者
   
      〈3位決定戦 準決勝第1試合の敗者 対 準決勝第2試合の敗者〉

決勝  準決勝第1試合の勝者 対 準決勝第2試合の勝者
      (2011年10月23日、イーデン・パークにて)

  (以下、準々決勝=QF、準決勝=SF、決勝=F ex準々決勝第1試合=QF1、プールA1位通過チーム=A1)

予選プールで、比較的予想を立てやすいのはプールAとC。(もちろん、ジャパンはフランスに勝ちに行くわけなので、A2としなくてはいけないところだが)この二つのプールは、世界ランキングでも一見してわかるように、上位2チームとその下の力の差がはっきりしている。

順当にいけば、A1-ニュージーランド、A2-フランス、C1-オーストラリア、C2-アイルランド。現状のこの南半球2ヵ国の充実ぶりを考えれば、ほぼこれで決まりである。

予想が厄介なのはプールBとプールDだが、この二つのプールは別の意味で予想が立ちにくいのだ。

プールD。D1が南アフリカなのは動かないだろう。問題はD2。ウエールズ、フィジー、サモア、ここは力が拮抗している、いわば三竦み状態。以前からウエールズは南太平洋のチームを苦手としているところがあり、今回も苦戦が予想される。一歩抜きんでているフィジーがD2と予想したい。

プールB。今回のいわゆる「死のプール」である。観ているほうは、こんなに面白いことはない。プールDと違いいきなりの三竦みで、B1を決めることが難しい。アルゼンチンが前回の大会よりも力をだいぶ落としていること、W杯ではイングランドが前評判以上の力を発揮することなどを勘案して、B1がイングランド、B2にスコットランドが入ってくると思う

そうすると、準々決勝はこのようなことになる。

第1試合 イングランド 対 フランス
第2試合 オーストラリア 対 フィジー
第3試合 ニュージーランド 対 スコットランド
第4試合 南アフリカ 対 アイルランド

この中で、最も予想の難しいのが第1試合だろう。前回のフランスでのW杯では準決勝で当たった両チーム、試合前の下馬評に反してイングランドが14-9でフランスを下している。今回も総合力ではフランス有利だが…。私は自国開催の呪縛から解放されたフランスが大いに暴れて勝利すると予想したい。

第2試合以降は、左側にある予選プール1位通過チームが順当に勝ち進むだろう。先日まで行なわれていた南半球トライ・ネーションズで、1勝5敗と不甲斐ない成績に終わり不安視される南アフリカだが、負傷者が復帰すればこれほど怖いチームはない。アイルランドに負けることはないはずだ。

すると準決勝は、

第1試合 フランス 対 オーストラリア
第2試合 ニュージーランド 対 南アフリカ

現在の世界ランキング1位から4位までのチームが並んでしまった。ラグビーは意外性というのが大変に少ないスポーツなのでいたしかたないが、ありきたりと言われればありきたりな予想である。

第1試合。ニュージーランド人でありながら、オーストラリアの指揮を執るロビー・ディーンズ監督。マスコミからいろいろと非難を受けながらも、若手中心に辛抱強くチーム作りをして、今年のトライ・ネーションズの終盤では、将来性を大いに感じさせる、実に魅力的なゲームを見せてくれた。

課題は、チーム作りが「来年に間に合うか?」ということである。間に合えば、今年のヨーロッパシックス・ネーションズでグランド・スラムを果たしたフランスを凌駕することはできるだろう。贔屓目もあって、ここはオーストラリアの勝利と予想する。

第2試合。今年のトライ・ネーションズは、ニュージーランドが南アフリカに3戦3勝 (オーストラリアにも3戦3勝) 。ニュージーランドの良いところばかりと南アフリカの悪いところばかりが目立ったゲームが続いた。

ただ、このデータはあまり来年のW杯の決め手にはならない。先にも書いたが、南アフリカが史上最強のスクラム・ハーフと呼ばれているフーリー・デュプレアをはじめ主力選手を負傷などで欠いていたのだ。彼らが戻ってくれば、間違いなく全く違ったチームに変身する。そして、そのチームを破ることは並大抵なことではない。

一方のニュージーランドは、現在絶好調。まさに向かうところ敵なしの最強軍団だ。しかし、そこに落とし穴の危険性もある。この国は毎回毎回、W杯の優勝候補に挙げられる。けれども勝てない。どうやらピークの持って行き方に問題があるらしい。

こちらの課題は、チーム力が「来年まで持つか?」ということであろう。現在のチーム力を保つか、あるいはさらに磨きをかけたチーム作りができれば、問題なく南アフリカを倒すことができる。今の勢いならそれができるのかなという思いもあって、ニュージーランドの勝利と予想したい。

そこで決勝は、

オーストラリア 対 ニュージーランド

何よりこの2ヵ国間での決勝というカードは、今まで6回行われてきたW杯で一度も実現されたことがないのだ。舞台はニュージーランド・ラグビーのメッカ、イーデン・パーク。舞台も役者も完璧に揃ったこのゲームだったら、世界は今までになく熱狂することになる。ぜひぜひ観たいものだ。予想? どうかご勘弁願いたい。

-…つづく

 

 

第176回:ラグビーW杯まであと1年 (後)

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金井 和宏
(かない・かずひろ)
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1956年、長野県生まれ。74年愛知県の高校卒業後、上京。
99年4月のスコットランド旅行がきっかけとなり、同 年11月から、自由が丘でスコッチ・モルト・ウイスキーが中心の店「BAR Lismore
」を営んでいる。
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