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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第615回:経済大国と小国主義、どっちが幸せ?

更新日2019/06/27



日本は体重別のように階級に分かれたスポーツではとても強く、国際大会で多くのメダルを獲得します。ボクシングや柔道から体重別の階級をなくしたら、そりゃ~ヘビー級が勝ってしまうことでしょう。モスキート級のチビで痩せっぽちが、スパーヘビー級の筋肉マンをノックアウトする光景を見たいものだとは思いますが、まず可能性ゼロでしょう。

人間は持って生まれた限定された条件、資質を生かして、その中で存分に発展、充足させるしかないのでしょうね。

人間の生き方を、国のあり方に当てはめるのことに無理があるのは承知の上ですが、国土が狭く、資源の少ない国は、あるものを使って国を治めていくほかありません。なにも大国の真似をしたり、他の国に攻め入ったりせずに温厚に暮らしていければそれで良いと思います。ブータンの国の人々が、幸福度、世界一なのですから、それ以上何を望む必要があるのでしょうか。 

日本の人口減少がユユシキ社会、政治問題になっていることが、ウチのダンナさんと時々話題になります。二人とも人生観というのでしょうか、価値観が似ているのであまり面白い議論にはなりません。共通しているのは、人口が減っても一向に構わないのではないか、経済大国になろうとせずに、小国の長寿国として生き延びる方向を探り、求めるべきだと、意見が一致してしまいます。

奇妙なことを良く知っているダンナさんが教えてくれましたが、老子は国は小さい方が良い、人口も少なければ少ない方が良い、産業などもない方が良い、牛車など使わずにどこへでも歩いていける程度が良い…と、今時、石垣島の観光客相手以外、牛車はないでしょうけど…、そのようにどこかに書いてあると言っています。

都市国家全盛時代のギリシャには、1,500(植民地的ポリスを含めて)からの都市国家があり、アテネは特別に巨大でしたが、それでも人口はたった20万人ほどでした。それでいて、あれだけ栄えたのです。もちろん、都市国家間で戦争をしたり、同盟を結んだり、政治や外交、それはそれは賑やかなものでした。プラトン…だったと記憶していますが、都市国家の理想の人口を5万人と言っています。

小さい国の話になると、必ずヴァチカン、モナコ、サンマリノ、リヒテンシュタインなどが登場します。しかし、これらの国は長い歴史的背景の下で生まれてきましたし、領土を接しているお隣さんやまるで全体を囲み込んでいる国に軍事外交を全面的に頼っていますから、一般的な概念での国家の範疇に入らないかもしれません。それに、ヨーロッパに散在するこれらのミニ国家は、国の歳入を観光資源に頼っているのが共通した特徴でしょうか。

今は昔…などと書き出せば、古今集のようですが、かれこれ50年近く前に、ダンナさんに引きずられるようにヨットで水上生活していたことがあります。十余年、地中海とカリブ海で過ごしました。カリブの島々はシラミツブシにほとんど回ったと思います。それまで聞いたこともない島国、サンタルチア(イタリア民謡ではありません)、セントヴィンセント、アンティーグア、ドミニカなど、超ミニ島国の島影にアンカーを入れました。

ヨーロッパ、アメリカなど西欧の毒牙から逃れることができたカリブの島はありません。軒並み植民地になってしまいました。西欧の国に言わせれば、それまで採取生活レベルだった島の人たちに教育(植民地的な)とチャンスを与え、医療を施し、キリスト教を説いた、島の原住民に大いなる恩恵を施した…ことになりますが、それらの島々の住人がキリスト教的文化人になりたがっていたわけではありません。

第二次大戦後、後は野となれ山となれとばかり、西欧の大国が投げ出すように植民地を独立させた背景もありますが、民族自立の波が押し寄せ、我も我もと独立しました。早く言えば西欧の国々はウマミのない植民地、資源が少ないか全くない植民地のサジを投げたのです。

カリブの島々のミニ国家を通り過ぎただけで、住んだことはありませんが、人間の心に染み付いた植民地根性、一度なんらかの利権を掴むと、それに一族郎党が群がり決して手放そうとしないことなど、嫌な面ばかり見せ付けられました。マ~、ヨットで来ているというだけで、私たちのような貧乏ヨット乗りも、お金持ちにみられるのは致しかたない面もあります。 

小さな島影にイカリを降ろす度に、入国手続のため、イミグレーション、港湾管理局、税関、警察と4ヵ所を回らなければなりません。それが、運が良くて一日仕事になります。私たちのヨットの登記書類、保険証、パスポート、ここに着く前にいた国(隣の島ですが)の出国証明書などをビニールの袋に入れ、精一杯ドレスアップして、と言っても汚れていないティーシャツ、潮まみれでない短パンですが、それを着こしめし、ディンギーを漕いで陸まで行きます。

まず、待ち構えていた子供たちの総攻撃を受けます。ディンギーを見張ってやるから、何がしかのお金をくれ…とタカラレるのです。もし、そこで番兵なんかいらないよと断わるか、相場以下のお金しか与えないと、ゴムディンギーならナイフで切られたり、穴を開けられたりし、ハードディンギーなら、間違いなくオシッコをそこいらじゅうに掛けられます。ヨット仲間で、どこそこの島(国ですが)のガキは始末が悪い…最低、5カリビアンドルくらいやらなければ酷い目に遭うとかの情報は前もって知っておくべきことです。 

このように小さい島国の洗礼を受けるのです。その後、四つのお役所をと言っても掘っ立て小屋以下のバラックなのですが、そこを回り、その都度、袖の下を公式に、あるいは非公式に渡さなければなりません。

貧乏な割りに悠然としているダンナさんは、「俺たちにとって、死ぬの生きるのって額じゃないし、彼らにとって貴重な収入なんだから、少しくらいやったっていいんじゃないか。それに彼らは西欧に痛めつけられ、ヤラズブッタクリに遭ってきたんだから、そのツケを俺たちがチョッピリ払わされているだけだ…」と言うのです。

私の方は不正は不正、理由のないお金は払わない。そんな風に小銭をばら撒くから、彼ら植民地人は何時まで経っても、チャンと独立した生き方ができない…と、意見が分かれるところです。 

歴史の針を逆周りにし、時間、時代を遡ることはできませんし、これだけ国際関係が複雑になってくると、一つの小さな国だけで自己充足し続けるのは難しいか、ほとんど不可能でしょう。

そんな分かり切ったことはここで書くまでもないと言われそうですが、すでに経済大国の道を歩んでいる日本に、少し方向転換、考え方を変え、人口が半分になっても小国として日本人が幸せに暮らせる方向を視野に入れるべきだと思うのです。すでに民度の高い日本が、カリブの島国のようになる心配は全くないのですから…。

-…つづく

 

 

第616回:“Liar, Liar. Pants on Fire !”(嘘つき、嘘つき、お前のお尻に火がついた!)

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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