■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)




中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。



第1回:男日照り、女日照り
第2回:アメリカデブ事情
第3回:日系人の新年会
第4回:若い女性と成熟した女性
第5回:人気の日本アニメ
第6回:ビル・ゲイツと私の健康保険
第7回:再びアメリカデブ談議
第8回:あまりにアメリカ的な!
第9回:リメイクとコピー
第10回:現代学生気質(カタギ)
第11回:刺 青
第12回:春とホームレス その1
第13回:春とホームレス その2
第14回:不自由の国アメリカ
第15回:討論の授業
第16回:身分証明書


■更新予定日:毎週木曜日

第17回:枯れない人種

更新日2007/06/28


アメリカが離婚率の高い国であることは、広く知れ渡っています。

私の従姉妹を含め、叔父 叔母の親戚の離婚率を指折数えてみたら、なんと70パーセントでした。もちろんこの中に4回離婚している従姉妹が一人いてパーセンテージを高くしていますが。私の家族、親戚が特別離婚を繰り返しているわけではありません。親戚一同、中西部の田舎に住み、どちらかといえば保守的な、教会に毎週行くタイプの人たちで、離婚が年中行事になっているハリウッドとは無縁の人たちです。もっとも教会の牧師さんの離婚、再婚率はとても高いそうですが。

7、8年前に、私の叔父さん二人が続けて離婚しました。父方の叔父は離婚されたと言った方が当たっているでしょう。二人とも、すでに子供たちは成人し、孫までいまる60代の前半でした。夫婦には外から見てもなかなか分からないことが多いですから、離婚の原因はここでは話題にしませんが、その後、再婚の手早さの方にショックを受けました。

離婚された父方の叔父は離婚後、見る影もなくやつれ、げっそりと落ち込み、一挙に10歳は歳をとった様相だったのが、アレヨという間に再婚したのです。相手の女性は働き盛りの40代で成人した娘がいます。もう一人の叔父も彼より20歳は若い職場の女性とすぐに再婚しました。

例えは悪いですが、E-Bayのオークション市場に載せると、直ぐに売れる商品のように、離婚を何回も重ねていても、一旦離婚し、自由になり、結婚市場に売りたし、買いたしと名が出ると、リサイクルがとても早いのです。

そこには、もう結婚なんてコリゴリ、一人で生きていく方がズーと気楽といった逃げの精神はなく、いつまで経っても、オトコをやめない老人、艶やかな老女がいるのです。イタリア、スペイン、フランス人などラテン系は枯れない人種として知れ渡っていますが、一般の西欧人は、アメリカ人を含めそう簡単には枯れないようです。

おばあさんは亡くなるまでの数年を養老院で過ごし、私は足繁くそこを訪れました。養老院付属の病院でシーツを取り替えたり、シモの世話をする雑用係としてアルバイトをしていたのです。そこで、沢山の老人と接し、観察する機会を持ちました。その養老院には小さな教会があり、日曜ごとにサービスが行われますが、他の目的でも教会の使用度がとても高いのです。まず、老人ホームで病院もありますから、よくお葬式がよくありました。 

それと同じくらいの頻度で結婚式があったのです。週一回くらいのペースで結婚式があったと思います。新郎は85歳,新婦は78歳なんていうのは始終あり、二人合わせて180歳が記録だとか、一緒に働いていた看護婦さんが言っていました。

結婚式には、双方の家族、孫まで出てきておじいちゃん、おばあちゃんの新しい人生を祝ってあげています。当人同士も最高に幸せそうで、神経痛かリューマチか、ヨタヨタ歩きの新郎のおじいちゃんを逞しい肉づきのおばあちゃんがエスコートしながら赤い絨毯の上を歩くのを見るのはほほえましいものです。

いくら歳を取っても、人間はツガイで生きるのがいいのだと思いました。

日本の老人たちは、華やかな恋愛を繰り広げているようには見えません。何かの理由で離婚した人が再婚する率がアメリカと比べとても低いようです。とりわけ子供を連れた女性の場合は再婚が難しいようです。

男性の場合、中年以上になると再婚相手の女性を自分の世話をしてくれる女中さんのように見ている雰囲気があり、女性がそんなところに誰が行くもんか、と考えたとしても当たり前でしょう。それに、東洋人は早く枯れる人種のように思います。もっとも最近は例外がたくさんあるようですが。一般に人生の甘い辛いを味わいつくし、世俗の感情と離れた仙人のように、達観した老後を送っているように見えます。

すでに老境に入りつつある私も人事ではありません。日本の老人のように、細く枯れるように、この世から消えて生きたいと思ってはいるのですが。

 

 

第18回:アメリカの税金