■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から


Grace Joy
(グレース・ジョイ)




中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。



第1回:男日照り、女日照り
第2回:アメリカデブ事情
第3回:日系人の新年会
第4回:若い女性と成熟した女性
第5回:人気の日本アニメ
第6回:ビル・ゲイツと私の健康保険
第7回:再びアメリカデブ談議
第8回:あまりにアメリカ的な!
第9回:リメイクとコピー
第10回:現代学生気質(カタギ)
第11回:刺 青
第12回:春とホームレス その1
第13回:春とホームレス その2
第14回:不自由の国アメリカ
第15回:討論の授業
第16回:身分証明書
第17回:枯れない人種


■更新予定日:毎週木曜日

第18回:アメリカの税金

更新日2007/07/05


今年も、やっと税金の申告を終えることができました。やれやれ!

毎年、年末年始の頃になると、税務署からちょっとした町の電話帳くらいの厚さの印刷物が送られてきます。"税金申告の手引き"です。それも10年前には50ページくらいのカタログ風だったのが、年々複雑になり、200ページ以上の、こんな厚さになってきました。

アメリカでは誰もが、個人個人で税金の申告をしなければなりません。日本のサラリーマンように会社の経理財務の人が保険も含めてやってくれるようなことはありません。税金の申告は国民に課された辛い義務なのです。私も18歳でアルバイトを始めてから、今まで毎年、毎年、外国住んでいようが、いまいが、欠かさず申告してきました。

税務署はIRS(Internal Revenue Service)と呼ばれ、泣く子も黙る怖いところなのです。シカゴで全盛を誇ったギャング、アル・カポネも税金をごまかした罪で牢屋に入り、それが彼の凋落の元になったくらいです。

そんな分厚い手引き書を始めから最後まで目を通し、正確に申告するのは、この手引書を作った人でも不可能ではないにしても、とても長い時間と忍耐が必要でしょう。去年、私は病院に支払ったお金を控除する過程で小さな間違いをしたところ、ちゃんと追徴金の通達がきました。私のように乏しい収入の人の申告でも厳しく、細かいところまでチェックしているのに感心しました。

自分で商売をしている人やサラリーマン、果ては日雇いの労働者はそんな込み入った手引書を読んで、自分で申告する暇も忍耐力も(能力も)ありませんから、大多数の人は、その道のプロ、税理士を利用します。私の住んでいる人口10万人足らずの町でも税理会計事務所が46軒もあり、全米に支店を持つ大手の税理事務所H&R Block社は4つも支店を設けています。

H&R Block社はアメリカ全土に12,500軒のチェーンを持ち、海外にも1,300の支店がある税理事務所の大手で2,000万人の顧客を持っています。それに続く2番手、3番手の税理事務所、ローカルな事務所などとサービスを競争しあっています。

アメリカで大きくてきれいなビルは保険会社、銀行などの金融関係と決まっていましたが、その仲間に税務事務所のビルも加えなければなりません。税金を納める手続きをしてもらい、その手数料でこんな大企業に発展するのは驚きです。私が払った手数料が、カンサスシティー本社の素晴らしいビルのガラス1枚(にもなってませんが)に変わっていると思うと奇妙な気がします。

高い手数料を払っても、自分ではとてもできないことですし、税理事務所に頼む方がその道のプロだけに色々な控除の仕方を知っているので、結局は節税になると考えている人が多いようです。

否、そんなところを使わずに、自分でやるという人のためにには、Tax CutとかTurbo Taxなどの商品名でたくさんの会計ソフトが出回っています。個人用のソフトは、あらゆる条件に沿うようバラエティーに富んだ設定のものが、価格も手頃な20ドルから100ドルくらいまであり、順番にYesかNo、収入、出費、経費、家などのローンなどの長いリストに数値を細かに打ち込んでいくと、自動的に計算してくれ、幾ら払いなさいと提示されます。それをそのままインターネットでIRSへ、クレジットカードか銀行振込みで送るのですが、便利であるはずのソフトを使っても一日仕事でした。

税金を払うことは当然の義務ですから構いませんが(その使い方には不満や言いたいことはどっさりありますが)、支払う方法がこうまで複雑化して、ただ税金を払う手続きをするサービス業に頼らなければ税も納めることができない税制は狂っています。政府が意図的に税制を複雑にし、個人での申告を不可能に近くしているのではないかと疑いたくなるほどです。しかもそれが毎年変わるのです。

税金を納めるのも大変な仕事ですが、この複雑化した税金を一々チェックする税務署の人々にとっても大仕事でしょう。このようないわば生産性のない仕事に膨大な人が従事していることに、アメリカの将来の不安を感じるのは私だけでしょうか。 

アメリカの良さ、強さは、農業、鉱業などの第一次産業ををはじめとして、モノを作り出し、売ることにあったはずです。

 

 

第19回:初めての日本


 
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