■TukTuk Race~東南アジア気まま旅


藤河 信喜
(ふじかわ・のぶよし)



現住所:シカゴ(USA)
職業:分子生物学者/Ph.D、映像作家、旅人。
で、誰あんた?:医学部で働いたり、山岳民族と暮らしたりと、大志なく、ただ赴くままに生きている人。
Blog→「ユキノヒノシマウマ」





第1回:Chungking express (前編)
第2回:Chungking express (後編)
第3回:California Dreaming(前編)
第4回:California Dreaming(後編)
第5回:Cycling(1)
第6回:Cycling(2)
第7回:Cycling(3)
第8回:Cycling(4)
第9回:Greyhound (1)
第10回:Greyhound (2)
第11回:Greyhound (3)
第12回:Hong Kong (1)
第13回:Hong Kong (2)
第14回:Hong Kong (3)
第15回:Hong Kong (4)
第16回:Hong Kong (5)


■更新予定日:毎週木曜日

第17回:Hong Kong (6)

更新日2006/04/13

香港へ来たら必ず乗りたくなる乗り物のひとつに2階建てバスがある。ジャッキー・チェンなどの香港映画を観れば、香港の路上に張り出すネオンや狭い路地を所狭しと駆け回り、このタイプのバスの2階席へ飛び乗ったり飛び降りたりするシーンが多く登場する。

乗ってみれば分かるのだが、確かに場所によっては自分の頭が当たってしまうのじゃあないかという錯覚を起こすほどに周りの建物や看板と乗客との距離は近い。これが夕暮れ時などには非常に気持ちの良い乗り物で、オープンになった2階席に乗ってただ街中を乗り流していると、それだけでも贅沢な時間を過ごすことができる。

香港にいる間にこの2階建てバスと、香港島とカオルーンを結ぶスターフェリーに何度乗ったことだろう。シートにただ腰掛けて、焼けついたアスファルトの熱気が冷めていくのを味わう時の心地良さったらない。

香港文化博物館は、広東オペラに関するコレクションが充実しており、中には劇場などもあってなかなか楽しませてもらえる。しかも展示物の説明に関するガイド、演劇のすべてが無料なのだ。

物腰が柔らかく、眼鏡の奥に優しい笑みをたたえたガイドのヤムさんは、お母さんが日本人らしく、香港で生まれ育ちながらも日本への興味が強くあり、日本人観光客への日本語ガイドとしてここで働いていた。

話しを聞いていると、広東オペラに対する適切な解説とともに、彼の話しのふしぶしに日本への憧れが見え隠れする。いずれは日本人女性と結婚したいとまで言う彼は、香港人らしく語学に堪能で、広東語、英語、日本語を流暢に操る。こういう国籍に囚われない考えや言語能力は、島国の日本で育つ身としてはなかなかかなうものではない。

香港での生活もリズムを持ち始めた頃、次の目的地である中国本土へ渡るビザを取るために中華旅行社へ向かった。日本人である自分は、2週間までは観光目的であればビザの申請をしなくてもよいのだが、アメリカ人であるエリカの場合、香港島はビザ申請の必要がなくとも、中国本土へ渡るには観光ビザの申請をする必要があったのだ。

そして、中国の次に向かう予定をしているベトナムについても、エリカには申請の必要があったので、ベトナム大使館へも行かなければならなかった。

こういうビザに関しては、日本人である自分は非常に恵まれていると、これまでに何度も思ったものだ。アメリカ人というのは本国があまりに強大な国であるだけに、世界中何処へ行ってもアメリカ人というだけで、時たま明らかに嫌悪感を示されることがある。

そういう理由でこれまでに我々が旅をする時には、不必要な議論や不当なサービスを避けるため、そういう類の人達に出会うとエリカは、シカゴとはほぼ同じアクセントと人種構成を持つカナダ国籍や、流暢に話せるドイツ語の能力を生かしてドイツ国籍を名乗ったことが度々あった。

ビザの申請に関しては特に問題もなく、意外にあっさりと済ますことができたので、拍子抜けといえば拍子抜けであったが、安宿暮らしで貧乏旅行の生活が徐々に身についてきたこともあって、ビザ申請に必要な料金というものが馬鹿げて高いものに思えた。

彼らの本国での人件費や物価を考えると、彼らはこれを観光収入の一部として重宝しているに違いないとすら思えるほどに高かった。

…つづく

 

第18回:Hong Kong (7)