原園 綾
(はらぞの・あや)

1967年生まれ。世田谷区立赤堤小卒。ニューヨーク在住。大きくなったら何になろうかな?

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第12回:オメテペ島の吠えるサル、君の名はマントホエザル その1

ゴォーッ、ゴー、ゴー、ホッ、ホッ、ホッ……君たちは大きい声で鳴くんだねえ。あっちのサル達が鳴いたかと思えばこっちのサル達と、リレーのようにぐるぐるまわって大合唱。

実はクリスマスの翌日から4週間、ニカラグアに行ってきたのだ。「Primate behavior and ecology」という霊長類(サル)の生態調査の授業と実習の合宿でした。ニカラグア湖に浮かぶオメテペ島。地図でみればわかるように湖としてはかなり大きい、面積で比べると東京都、神奈川県、埼玉県を合わせたぐらい!島は二つの火山が水面から突き出てくっついた8の字形の小さい島(西表島ぐらい)です。一つは富士山のような形でさすがに雪はないけど雲を頭にのせているのでとても似てる。

12月から1月は夏の雨期が終わり乾季で、たまにザッと雨が降るぐらい。夏には水が流れているらしい丸い石がゴロゴロした干上がった川底が沢山あった。NYから行くと湿気を感じたけど日本の夏よりはずっとまし。26-34℃ぐらいで林の中では日陰が多いので熱帯とはいってもわりと過ごしやすかったなあ。幸い毒ヘビが多くないため、林の中でおっかなびっくりということもなかった。でも合宿所にはかの『ナショナル・ジオグラフィック』のテレビクルーがヘビの取材にきていたから、いる所にはいるらしい。ヘビ博士がヘビに無線を埋め込んでその後の生息地域を観察中で、その取材。カメラマンは最近ヘビ番になっているけど、ヘビは動きがつまらないから哺乳類とかやりたいんだって。そうかもね。

私も林の中をツタなどかき分けながら進んでいる時、なんだか太くて鮮やかなツタだなあ、と手でよけようとした時、昨日たまたま道端で見たとぐろを巻いたままひかれていたのと同じヘビではないか!!でも太いコワイ感じでないから写真とったりしたんだけど、合宿所でデジカメの写真を見たヘビ博士いわく「毒はないけど噛むよ」!あとはカエルとか小さめのトカゲ、ヤモリ、特大ゴキブリと基本的には安全系。しかし合宿所で我々を賑わしてくれたのは、ベッドの下からサソリ、そして壁にソソッソーと動くタランチュラの出現でした。しかもいつも夜。ビデオでとりたいから照明を当てろとか、部屋に入っちゃうからあっちに持っていってとか、ギャーギャー大騒ぎ。なんせ私以外二十歳過ぎの若者達ですから。

まあ背後には林に包まれた山があり、眼前には湖が開ける合宿所で、ハンモックにユーラユラされながら夕陽なんて見て贅沢だなあ……と思ったのも束の間、前半は授業を缶詰状態でこなして小テストと期末試験まであり(単位がとれるため)。後半はフィールドでの自分のテーマを決めつつ、過去の研究論文を読んで自分の研究成果をまとめる所までやらないといけないので、毎日一杯。

朝は日の出(5:30頃)には林に入りたいので暗い内からキッチンで朝食と昼食分のパンにピーナッツバターをぬって、オレンジや時にはスイカ、メロンを丸ごとリュックに入れて出陣。吠えるのが聞こえてきたらその方向に進む。時にはフェンスやダニの密集地、刺や毛羽立ったチクチクする植物に道を遮られながらも、その声の元へずんずん進む。実際はその声の手前にグループを発見することも多い。どうも同じグループ内でいくつかに別れて動いているためらしい。ウッキッキーじゃないよ、ゴーゴーと息を吸いながら吠える、ちょっと犬の鳴き声にも似ているね。前日の夕方に落ち着いた寝場所(毎日同じ場所に寝る訳ではない)に朝行けばいるはずなのだけど、朝一番から出かけるとたいてい午後2-3時には観察終了して、データの集計などの作業をするため、寝場所を確認できないため、たいてい朝は「吠え」を頼りにまずグループを探すわけ。ホエザルは木の上、高さ15m前後で生活しているので、斜上を見ながら進み、実際観察する時は真上を見上げることも多く首に下げている双眼鏡の重みも手伝ってかなりしんどかった。後半はもう筋肉がついたのかすっかり慣れてしまった!とまあこんな環境でホエザルさんをジッと見てきたのです。

 

→ 第13回:君の名はマントホエザル~その2

  

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