第6回:産業高速「101」~その2
更新日2001/05/17
(前回から続く)
レッドウッドシティからさらに南へ下ると、101はスタンフォードエリアに入る。ハイウェイの西側にはアカデミックな雰囲気が漂うパロアルト(Palo
Alto)の街があり、さらにその奥には名門スタンフォード大学の広大なキャンパスが鎮座する。
パロアルトは、その洗練された雰囲気ゆえに、シリコンバレーでもっとも人気の高い街として知られており、小規模ながらもダウンタウンには、それを象徴するかのようにカフェテリアつきの大きな書店をはじめ、ギャラリーや瀟洒なホテル、レストランなどが軒を連ねている。
スタンフォード大学。写真奥に学舎が立ち並んでいるが、この場所もすでにキャンパスのなか。
これとは対称的に、101をはさんだ反対側にはイースト・パロアルト(East Palo
Alto)と呼ばれる後進地区がある。かつては全米でも指折りの犯罪都市という、ありがたくない名声を手にし、学校内暴力をテーマにした映画「デンジェラス・マインド」の舞台にまでなった土地である。
シカゴやフィラデルフィアの若いギャングたちが「箔」をつけるためにわざわざやってくるという話の真偽のほどは定かでないが、101のイースト・パロアルト側の道路沿いには、なぜか高い塀が延々と続いており、その街並みをうかがうことができないことを不思議に思うビジターも多い。市内に銀行が一つもない街として紹介されていたのはほんの数年前までのことである。しかし、近年、サンマイクロシステムズが研究開発部門の社屋をベイサイドの埋立地に新設するなど、シリコンバレーの隆盛は遅ればせながらこの街にまで及びつつある。犯罪発生率は年を追うごとに低下し、かつてはさびれて陰気だった街のあちこちが、再開発によって次第に明るくなっている。
南に続くマウンテンビュー(Mountain View)はパロアルトの街並に似た閑静な住宅地と整備されたハイテクプラザを抱える緑豊かな街である。春先からは、生い茂った街路樹が美しい散歩道を演出している。ダウンタウンの目抜き通りとなるカストロ・ストリートは再開発によって生まれ変わってまだ間もない。ここに中国系をはじめとするアジア諸国の人々が次々と飲食店舗を構え一種不思議な街並を作り出している。
マウンテンビューからサニーベールへ差しかかるあたりで左手に異形をさらす大きな建設物が現われる。長年にわたり海軍によって所有されていたモフェット・フィールド(Moffett
Field)航空基地は、1994年に航空宇宙局(NASA)の管理下に移され、リサーチセンターとして生まれ変わった。高速道路からひときわ目立つ背の高い建物は、その昔、内部に巨大な飛行船を収納するハンガーだった。夏に実施される教育プログラム「スペースキャンプ」への参加は、シリコンバレーのみならず全米中の子供たちの憧れになっている。
サニーベールに差しかかるあたりで、サンフランシスコ・ベイもいよいよ南端に近づく。東方面に分岐するニ三七号線はベイの淵の広大な干潟を突っ切って、対岸のミルピータス(Milpitas)に続く。
サニーベールからサンタクララを過ぎるエリアはかつてのシリコンバレーの中心地だ。道路の両手には、いかにもハイテク企業のテナントビルらしき建物が遥か遠くまで林立している。一攫千金を狙う新進企業が累々としている。ここで起業し、やがて夢のIPOを成し遂げ巣立っていったネット企業はいくつもある。反対にいつのまにか消えてしまう看板も多い。
右手の奥にはシリコンバレーへアクセスするもう一つの空の玄関口、サンノゼ国際空港がある。
ここまで来ると101号線によるシリコンバレー縦断の旅もクライマックスだ。ほどなくしてサンノゼダウンタウンのビル街が近づいてくる。
ハイウェイからサンノゼダウンタウンを望む。
Photo by Yukio Yoshinari/Image Works
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