第857回:今年のスキーシーズン・・・
もう6月だというのに、今年の天候はどうなっているでしょう。聞き飽きた異常気象という言葉が繰り返されています。
今年なってからすでに900以上の竜巻が発生し、収まる気配を見せず、これからもどんどんタッチ・ダウン(アメリカフットボールと同じ言葉を使っています)するトルネードが増えると見込まれています。
私たちが住んでいる標高2,000メートルの高原台地でも、未だに朝、氷点下を割るのは珍しくありません。でも、その次の日に30度Cを越す、カンカン照りになったりするのですが…。先週は雪まで降り、積雪は10センチ以下でしたし、お昼頃までにはすっかり溶けてしまいましたが…。アラパホ・ベイスン・スキー場は閉鎖するのをもう1週間伸ばす、スロープの状態が良ければさらに伸ばす可能性があると、蠱惑的なことを言っています。
季節外れの雪を見ると、今年のスキーシーズンを終えたばかりなのに、来シーズンの冬山、スキーのことに思いを馳せている自分にビックリします。雪山は魔法のような力を持っているのでしょうか。
ウチのダンナさんが2年前にアワヤというスキー事故に遭ってから、スキー場、雪山での事故は他人事でなくなってしまいました。
スキー場内で怪我は結構多くあっても、滅多に死ぬことはないのですが、それでもスキーヤー、スノボーダー同士が激突したり、木に正面衝突したりで、年に何人か死んでいます。
キイストーン・スキー場で木の間を縫うように滑っていたスキーヤーが木にぶつかって亡くなっています。普通、深雪をかぶった森の急斜面を滑る人はそれなりの技術を持つ、ベテランが多いのですが…。私も二度ばかり大ベテランの後を追うようにそんなところを降りた経験でいうと、あれはスリルに満ちた醍醐味があり、ヤミ付きになるのが分かるような気がします。
でもいくら上手な人でも、ちょっとした判断ミスが許される範囲は極めて小さく、日に何度もある、予測通りに曲がれない、オットトットは広いゲレンデなら修正できますが、あのような林間の急斜面、おまけに深雪では軌道修正が不可能で、大木、岩に突っ込むことになるのでしょうね。
ほとんどのスキー場では、トボガン(プラスティックの板に紐が付いただけ)や橇(ソリ、こんな漢字を書くんですね)を禁止しています。なんせ、あれはコントロールができないこと自体を楽しむようなものですから…。いくつかのスキー場では、大型トラックのチューブのような大きな浮き輪で渓流下りのように滑る特別コースを作り、そこに限り許可したりしています。
ですが、監視の目を盗んだのでしょうか、一人の若者がヴェイル・スキー場で、トボガンで滑り降り、木にぶつかって死んでいます。
珍しい事故は、リフトから落下して死亡したケースでしょうか。今ではほとんどのスキーリフトは体の前面に上から倒すような安全バーが付いていて、落下事故を防ぐようになっています。でも、朝一番でリフトに乗ると、夜中に降った雪がリフト係のお兄さん、お姉さんたちが箒で一生懸命リフトの座席の雪をはらってくれているんですが、とても滑りやすくなっています。ブレッケンリッジ・スキー場でお尻の下の雪を払い落とそうとした人が、雪だけでなく本人も滑り落ちてしまい亡くなっています。
これらのスキー場は、私たちが馴染んでいるところなので身近に感じられます。
でも、統計では全スキーヤーの0.01パーセントが何らかの事故に遭うのだそうで、数字だけ見ると、無視しても差し支えないくらいのものです。でも、私たちは統計で生きているわけではありません。
冬山事故はバックカントリー、ゲレンデスキーを離れ雪山に入り込むとグンと増えます。冬山に挑むのはそれなりに経験を積んだ人ばかりなのですが、それでいても遭難を防ぐことはできません。一つに予測不可能な雪崩に遭遇する危険が常に伴うからでしょう。猛吹雪に閉じ込められて…という遭難は、存外少ないのは、雪山に入り込む山男、山女たちがかなりの準備をし、装備に身を固めているからでしょう。
コロラド州では8名、お隣のユタ州では5名が雪崩に巻き込まれて亡くなっています。
事故が起こった後で、専門家は、表面が硬く締まった雪の上に大量の新雪が積もり、雪崩が起きやすい状況だったとか、連日の強風で山の峰に大きく、雪庇が張り出し、ほんの小さな衝撃でその雪庇が起爆剤になり、雪崩を起こしたとか解説しています。
私たちが常連として毎冬2ヵ月を過ごす、モナーク・スキー場でも、雪崩対策の講習会が開かれ、調査団が森林限界より上の岩山を回っていますし、人工雪崩を起こす大砲が週に何度も山全体を揺るがすように鳴り響いています。
ヤレヤレ、今年もスキー仲間全員怪我もなく無事でよかった。来シーズンも全員怪我をせず、思いっきり楽しむことができますように。
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