第134回:オリンピックに想うこと その3
更新日2009/11/05
失敗したオリンピックの筆頭は開かれることなく中止に追い込まれたオリンピックですが、開かれたオリンピックでもソビエトのアフガニスタン侵略に反対し、まず時の大統領カーターが言い出し、西側の諸国が(日本もアメリカに追従して)参加しなかった1980年のモスクワ・オリンピックは失敗の典型でしょう。
それでも国の援助なしで、イギリス、フランス、イタリア、スペインなどの国の選手は参加し、メダル授与式には国歌演奏はなく、オリンピック賛歌を演奏しました。それこそ、オリンピックの精神"参加することに意義がある"を地で行った行為だと思うのですが、どうでしょうか。
1984年のアメリカ、ロサンジェルス・オリンピックでは、モスクワ・オリンピックのボイコットに仕返しするように、ソビエトをはじめとした東側諸国がアメリカ軍がカリブの島、グレナダを侵略したことに対してボイコットしました。
冷戦の尾を引くようなこの二つのオリンピックは後味の悪い祭典になってしまいました。IOCも強大な2ヵ国の間に挟まれ何もできませんでした。
1972年のミュンヘン・オリンピックで、アラブ・テロリストがイスラエル選手を虐殺した事件はよく知られていますが、1968年のメキシコシティー・オリンピック開催の前日に、議会に民主主義的な参政権を求めたデモ隊が、軍の掃射を受け数百人殺されたことをご存知でしょうか。このようにオリンピックを政治的なショーの場として利用するなら、必ずボイコットやテロを誘発します。
IOCはスイスのローザンヌに本部を置く、純粋に私的な団体で国連とは全く関係がありません。従って、経理、会計を公開する義務はありません。委員の公徳心だけが、この団体を運営しています。
現在、参加国は205ヵ国で、IOCのメンバーは115人です。オリンピックをここまで発展させてきた努力と政治力を認めないわけにはいきませんが、いかにも保守的なジェントルマンクラブ的体質は大いに変えていく必要があります。ブランデェージ元IOC会長は、激しい反共産主義者で自分の考えを隠そうともしませんでした。
開催地をめぐる評価委員の接待も、やっと夜の方は禁止になりましたが、最近までそんなやり取りが平気で行われていたことの方が驚きです。と言うことは、まだ昼の接待は許されていることになるのでしょうね。
理想は高く清らかに語るのは耳に響きよいものです。しかし、常に現実には負けてしまいます。プロスポーツ、アメリカのフットボール、バスケット、野球、サッカーの組織の方が、IOCよりはるかに巧く運営されているように見えます。それは、恐らくお金がすべてで、ひいては利益をもたらす観客を大切にする、そしてもっともっと多くのファンを獲得していく姿勢があるからでしょう。
広島と長崎が共同でオリンピック開催を示唆しています。オリンピックと政治はすでに切っても切れない関係があるのですから、オリンピックは、世界から核兵器なくそうという方向を明確に打ち出す祭典としては最高の舞台です。政治的意図を打ち出す以上、それがいかに平和的なものであるにしろ、反対勢力の攻撃、しいてはテロが起る可能性が付きまとい、そんな危険性を受けて立つ覚悟が必要です。
でも、核拡散防止条約の批准をためらっているインド、中国、イランが広島、長崎にもう一度原爆を落す可能性はないでしょうけど。
オリンピックはまだまだ利用する価値のある世界的イベントなのですから、広島、長崎でオリンピックが開かれ、それを契機に核兵器が地球上からなくなることを祈らずにはいられません。
そして長崎、広島の二つの都市による開催が先駆けになり、サッカー・ワールドカップで日本と韓国が共同で開催したように、オリンピックがアフリカやアジアの貧しい国での2国、3国で開催できるようになることを期待しています。
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