第796回:少子化と超老人の時代 その2
私が日本の家族主義的な老人ホームの方を選ぶというのは、ウチのダンナさんの母親が最後の3年間を過ごしたところを何度も訪れ、その施設の運営の仕方、そこで働く人たちをツブサに観たからです。
日本のすべての施設があのように素晴らしい環境だとは思いませんが、基本的にとても人間的、家族的なのです。私の持論ですが、老人ホームは設備がある一定の水準に達しているなら、そこで働いている人たちの良し悪しで決まると信じています。
私たちが歳をとり、人生の最終段階に入ると、どうしても大なり小なり今までの生き方を引きずった生活になります。それまでの生き方のツケ、帳尻が回ってくるモノだと思うのです。中にはとても幸運な老後を過ごす人もいるでしょうけど、ウソ八百、デタラメ人生を送ってきたイジワル婆さん、爺さんは、惨めな老後を過ごさなければならなくなって当然なのです。
私の義理の母親がいた施設は、少子化で閉鎖になった小学校を改造して老人施設にしたところで、コモンスペースは広いのですが、各部屋はベッドにソファーを置くと歩くスペースがないくらい狭いつくりでした。でも、ボケが進行してきた老人には広い部屋など必要ないのです。どうせ、一度ベッドから出ると、老人たちは終日、食堂のある応接スペースで過ごすのですから、職員の方々の目の届くところにいた方がはるかに安心でしょう。
日本の介護保険は、世界中から注目されている…と言って良いでしょう。それは私営の営利保険会社ではありえないくらい、払う保険料の割に、受けるサービスが巨大だからです。アメリカなどの儲け主義一本槍の保険会社のやり方ですと、どのように転んでも、大きなビルディングを主要都市に構えた保険会社が損をするようなことはしません。老人が増えれば増えるほど会社が儲かるようにできています。
ですが、いくらお金持ち(赤字負債が膨らんでいる)日本でも、65歳以上の人口が29.8%(2021年調べ、ダントツで世界一です)で、その上、平均寿命は伸びる一方で84.4歳ですから、国民保険、介護保険は膨大な赤字を抱えています。例えば、発展途上国(ナイジェリアなどアフリカの国々など)では65歳以上の老人が占める割合は4%前後です。しかも、日本の出生率が1.3人ですから、ますます人口ピラミッドが頭デッカチになってきています。
幼児の死亡率も日本はとても低く、それはそれでとても素晴らしいことなのですが、何と言っても、日本の若者は赤ちゃんを欲しがらない、つくらないので、いくら少なく生んで大事に育てるのがモットーだとは言え、いくら何でも少なすぎるのです。このままで行くと、人口ピラミッドは誰も押さなくても自然に倒れかねません。
アメリカ、カナダを含めたヨーロッパの国々も、人口全体の老齢化問題を抱えています。日本と全く違った観点から、ある程度のハードルは設けているものの、移民を受け入れています。人口1,000人に対する移民の割合は日本の1.5人に比べ、西欧の国々では平均で3.3人と、倍以上の比率で移民を受け入れています。
キリスト教的人道主義の影響もあるでしょうし、民族移動、移民の長い歴史の背景もあるでしょう。その点、日本は島国なので渡って来るだけでも大ごとだという自然の条件もあるでしょう。ですが、日本の政府の方針、制度では、移民を積極的に受け入れ、日本語教育をし、日本社会の一員として税金を払い、新しい日本人になるように、生み出すようにはできていないようなのです。早く言えば、日本人が厳しい労働を嫌うようになり、その穴埋めとして東南アジアの国々からの出稼ぎ労働者を期限付きで受け入れているだけなのです。
技術研修というカタチで最下層の労働力を確保し、5年間下働きをし、その間、最低賃金法以下の劣悪な条件で不満も言えずに働かされているのが現状でしょう。出稼ぎに日本にやって来る東南アジアの人たちも、日本に永住しようとは夢にも思わず、僅かばかりのお金を貯め、母国に持ち帰るだけなのでしょう。これでは、少子化問題、老齢化問題はとても解決しません。それを一挙に解決する妙案などはありません。
日本の老人福祉、医療保険は素晴らしいモノです。少子化問題も子供たちを安心して育てることのできる社会を作り、そこに海外からの移民を積極的に受け入れ、新時代の日本人になってもらう方向で動かなければならないと思います。
アメリカやカナダで働く優秀な看護婦さんの大半…とまではいきませんが、多くはフィリピン、インドネシア、ベトナムからの移民で、怠け者のアメリカ人を尻目に嬉々として仕事に就いています。彼らはいち早く市民権を取り、アメリカ人、カナダ人に同化しようとしています。新世代のアメリカ人なのです。
日本も新世代の日本人をもっと増やし、新しい日本を築いていくのが良いと思うのです。大量の帰化人を受容し、日本に新しい文化をもたらした過去の歴史を大いに学ぶべきです。
-…つづく
バックナンバー
|