第903回:リズムに合わせみんなで踊ろう!
私の知る日本女性、と言ってもダンナさんの同級生や彼らの奥さんたち、それに義理のお姉さんたち、さらに加えて彼女らの少数の旦那さんも、皆さん相当立派なお歳ですが、何らかの踊りを踊っている人が多いのに驚かされます。
日本での一番人気はフラメンコだそうです。日本的感性とどう結びつくのか、フラメンコは典雅な日本舞踊とは180度異なると思うのですが、情熱的に身体をそり返らせ、腕をくねらすフラメンコが日本人の心を捕らえているようなのです。何にでも身を打ち込むように学ぶ姿勢のある日本人気質からでしょうか、私たちがスペインに住んでいた時にも、セビリヤーナス(Sevillanas;フラメンコ) の競技会で日本女性が優勝し、話題になっていました。
二番手は社交ダンス、ボールルームダンスでしょうか。ダンス教室が英会話教室並みにそこここにあり、また競技会も地方の大会から地区、全日本とあり、世界選手権では、日本人カップルがいつも上位を占めているようです。私も幾度かダンス教室のパーティーを覗き、競技ダンスの大会を観戦しましたが、イヤハヤ、あれは一種、別の世界ですね。ケバケバしい化粧、瞼が持ち上がらないくらい、長い付けまつげ、そしてキンキラの衣装、何よりも、その世界に浸り切っている人たちを見るのは、ショックでした。でも、社交としてダンスがどのくらい広がっているのかは測り知ることはできませんでした。
ダンナさんの同級生(女性です)はフラダンスに凝っています。ダンナさんが「ファラダンスって腰ミノつけて、ココナツを半分に割ったブラジャーをして激しく腰を振るヤツかい?」と冷やかし半分に訊いたところ、そんなんじゃなくてウエストのないムームーを着て緩やかに、柔かくクネクネと身体を動かすハワイ式?のフラダンスだよ、とスマホで観せてくれました。
日本の伝統舞踊の範疇に入るのでしょうか、カッポレに凝っている奥さんもいます。音楽というのか歌詞がひょうきんで、愉快で、メッポウ明るいモノなんですね。彼女を通して、私が全く知らなかった日本の伝統舞踊を知りました。
音楽に合わせて身体を動かすのは最高のボケ防止になる…ということですが、それよりも他の人に観てもらいたい心理、見て見て、私を見て、とばかりに踊るのは多分に観られることで自分を磨き上げる効果があるのでしょうね。
初めて日本に住んだ夏、盆踊りに出会いました。もちろん、私もその輪に加わり、紛れ込みかな、見様見真似で踊ったことは言うまでもありません。あれは良いですね。上手、下手、歩き始めた子供から、腰の曲がったお年寄りまで一緒になって踊るのは最高です。
四国の阿波踊りと北海道のソーラン節を掛け合わせた“よさこいソーラン”という大学生の新企画、踊りの祭典が大当たりし、外国からの参加をみるほどに成長しました。地方の小さな市町村から参加するグループが多く、このお祭りのために、一体どれだけ練習を積み重ねてきたのでしょう、ピタッと呼吸の合った群舞など、民族の踊りの祭典と呼んでも良いと思わせました。“よさこいソーラン”を見ていると、踊るのは一つの人間の本能ではないかとさえ思わせます。
民族といえば、民族、部族、人種は各々独特のリズムを体内に持っているようです。もちろん生まれてからの環境があってのことでしょうが、身体の中にリズムが脈打っているようにさえ見えます。
ベネズエラ、カリブの島々、そして長いこと住んでいたプエルトリコでは、音楽といえばサルサとメレンゲです。質の悪いラウドスピーカーでお店の中でも、通りに張り出したバールやカフェテリアでもサルサ、メレンゲを流しています。そして店内の人、通りがかりの人はそのリズムに無意識のうちに乗り、身体を揺すり、腰を振り、ステップを踏んでいるのです。あれは体内にあるリズムが外からの音楽に自然に共鳴しているとしか言いようがありません。
日本ではあまり馴染みのないサルサだと思っていたところ、ダンナさんを日本人だと識別していたプエルトリコの人から、何度も日本のサルサバンドがテレビに出ていて、しかも非常に上手いと指摘されたことがあります。ダンナさん、そう言えば日本のリズムは御神輿も学生のデモ行進でも同じリズムだなぁ~とのたまっています。
そして、日本に住み、日本通のスペイン人は、日本の歌、酒を呑んで酔っ払って唄う歌から文部省唱歌まで、皆同じリズムじゃないか? 二拍子か四拍子で簡単すぎないか、他にないのかと、言っていました。
私自身行ったことがないのですが、アルゼンチのタンゴ、ブラジルのサンバは国技、国舞と呼んで良いくらいの国の人挙げての凝りようです。ダンス、音楽といえばアルゼンチンならタンゴ、ブラジルはサンバでほかは全くかえりみません。そして、タンゴ、サンバとも世界中に浸透しています。フィンランドでの一番人気はタンゴダンス教室だそうです。
最近見かけなくなりましたが、派手なオレンジ色のローブを着て太鼓を叩きながら踊り、練り歩くハーリー・クリシュナーたち、あれはあれで案外、ストレスがたまらず、しかもボケ防止には最高に役に立っていたのかもしれませんね。
踊れ、踊れ、踊らにゃ損損というセリフはよさこい節のセリフだったかしら、リズムに合わせて身体を動かすのは、楽しくもあり、精神にも身体にもとても良いことなのなのは、間違いのない、補償付きのことのようです。
-…つづく
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