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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から
 

第886回:抜きん出た女性たち その5

更新日2025/02/13


ジェーン・グドール(Jane Goodall;1934年~)

ジェーンは小柄で、細面、とても気品のある顔立ちをしています。私にはとても彼女のような気品はありませんが、よくジェーン・グドールに似ていると言われます。そのために特別な近親感を抱いているわけではありませんが、彼女の記録映画、記事はよく観、目を通します。

ジェーン・グドールは言うまでもなく、チンパンジーの研究というのか観察で有名な動物行動学者です。

ジェーンはロンドンっ子でアウトドア、自然に溶け込むような環境で育ったわけではりません。幼少の頃から動物好きな普通の少女だったようです。大戦前の1934年生まれですから、少女時代を戦時下で過ごしたことでしょう。

私立高校を出てすぐにオックスフォード大学で秘書の仕事に就いています。その頃から彼女は何としても、動物、自然がいっぱいのアフリカに行きたい、間近に野生の動物たちを見たいという願望がつのり、アルバイト的な仕事もしています。

当時、イギリスでは女性の仕事は秘書か看護婦、小中学校の先生くらいしかありませんでした。しかも、看護婦も教員職も、大学を出て学位を取るなどの資格が必要でした。ジェーンは大学に行っていませんから、そんな学位もなく、あるのは溢れるばかりの情熱だけでした。

しかし、何かを成し遂げるのに必要なのは情熱です。情熱と対象に向かう真摯な集中力がなくては何事も成就しません。ジェーンのアフリカ、そして野生の動物に対する熱い思いは、他の人、とりわけアフリカ、動物に関係している人に伝わったのでしょう、高名な霊長類の研究者ルイス・リーキー博士がジェーンを秘書として採用したのです。

ジェーンの資質を見抜いたリーキー博士は、彼女をタンザニアのジャングルでチンパンジーの生態を研究させるため、現地に彼女を送り込んだのでした。

そして、そこで有名なチンパンジーが道具を使う事実を観察し、報告したのです。
それまで、いかなる動物も道具を扱うことなど、しない、できないとされていたのを覆し、細い木の枝を蟻の巣に入れ、その枝に付いてくる蟻をスーッとなめり取るようにして蟻を食べ、また同じ棒を蟻の巣に突っ込み、蟻が取れなくなるまで繰り返す様子は記録映画、ナショナル・ジオグラフィック誌にカラー写真で載り、我々に衝撃を与えたものです。

チンパンジーはバナナの皮を剥いて食べる、高等な草食動物と考えられていましたから、蟻を食べることもショッキングでした。確かに蟻、昆虫はそれだけで完全食品に近い食料なのですが。

日本サルの研究、フィールドワークで観察する時、個々のお猿さんに名前を付け、また、盛大な家系図、血統図を作るのが当たり前になってきていますが、それをジェーンは野生のチンパンジーに対して行い、チンパンジーにも人間同様のアイデンティティ、個性があり、個体差が大きく、それぞれの個体に応じて、チンパンジー社会の構成員?になっていることを見極めたのです。

正規の大学教育を受けていないジェーンは、当初、マスコミ受けのする写真入りのレポートを次々と発表する、ド素人のアマチュア動物愛好家だとみなされ、学会からは白い目で見られていました。

ですが、ルイス・リーキー博士はジェーンのフィールドワーク、それに基づくレポート、論文は動物学会で立派に通用する論文であると、ジェーンを後押しして、ジェーンのために特別基金を設け、ジェーンをケンブリッジのダーウィン・カレッジに入れ、大学を卒業せずにいきなり大学院に入れ、ジェーンは1966年に博士号を取得しています。


打ち明けて言えば、私は地方の大学で教職にありましたが、明晰な頭脳を持ち、かつひたむきな情熱を持っている生徒さんは滅多にいません。何百、何千という生徒さんに接してきましたが、2、3人いたでしょうか…。


ジェーンは、その後もアフリカから楽しいレポートをたくさん送ってくれました。
同時にあちらこちらで講演を行い、チンパンジーの社会を世に知らせました。同時に、文字通り世界中の大学から、それまで全く無視されていたのが信じられないくらい、まるで手の平を返したかのように、引っ張りダコで、名誉教授職が殺到するようになり、京都大学から名誉博士号まで贈られています。

そして、野生動物の研究、教育、保護団体『ジェーン・グドール研究所』を設立しました。また、2002年には国連の平和大使に任命されたり、故エリザベス女王から勲章を貰うまでになりました。男性の場合は“サー”になるのですが、女性は“ディーム”と呼ばれるようになるそうです。

彼女が取得した“賞”たるや、ノーベル賞以外はすべて?ではないでしょうけど、ここに羅列するのさえ、うんざりするほどの数に上ります。

またまた、ジェーン・グドールに関する種本ですが、自伝は『チンパンジーの森へ』(1994年刊)が読みやすく、率直に自分を吐露しているように思います。もちろんチンパンジーの観察記録は膨大な数に上ります。

ジェーンは子供向けの本、孤児になったチンパンジーと犬との物語なども書いています。また、フィールドワークの時の食卓、料理の本と、彼女の幅広い人格そのものを表すように、動物保護、アフリカの自然保護の活動、講演を行っています。

ロンドンの下町生まれの少女は、体こそやせっぽちですが、白髪頭を無造作に後ろに束ね、自分の信じることのため世界を飛び回っているのです。

jane goodall

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ジェーン・グドール
(Jane Goodall;1934年~)


-…つづく

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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