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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第569回:アメリカのマリファナ解禁事情

更新日2018/07/05



コロラド州でマリファナが公認されていることは以前書きました。マリファナに掛けている25%の税金は教育関連にのみ使われることになっていて、それが存外上手く機能し、いつもお金に困っている学校に潤いをもたらしている…と知った隣の州も、何もコロラドだけに美味い汁を吸わせておくことはない…とばかり、マリファナ禁止を徐々に解除しつつあります。

高校時代の友達、大手の航空会社で一番最初に“マイルが溜まるとタダで飛べる”プログラムを作り上げた人ですが、文字通り悠々自適の年金生活に入りました。彼女は、“行きつけのマリファナショップで、恐らく最高、最大の店”に連れて行ってくれました。それが本当に大きな店、と言うより、日本の小学校の体育館ほどもあり、マリファナ博物館、博覧会のような場所だったのです。

マリファナにこんなにたくさんの種類があり、また産地があり、オーガニック、無農薬と、それぞれにファンタジー、想像力の粋を集めた名前が付いているのです。まるで香水かワインの名前です。

それに、マリファナの商品も大変な種類があり、マリファナのブラウニー、チョコレート、クッキー、ボンボン、マッフィン、ケーキ、紅茶、コーヒー、緑茶、哺乳瓶に入った赤ちゃん用のマリファナドリンクがあっても驚かないほどで、まるで想像力の限界に挑戦するかのようにマリファナ入りの商品開発をしているのです。

先週、“マリファナを存分に吸おう”ツアーのバスが事故を起こし、運転手さんとお客さん19人が警察に引っ張られました。バスはアイオア州のオマハからお客さんを集めてきていました。事故が起きたのはコロラド州内で、自宅で吸う分にはいくら吸っても構いませんが、パブリックスペースや運転中の吸引は法律違反になっています。それをバスの中で吸い、しかも運転手さんまでもがすっかりラリッていたのです。

事故を起こして話題になり、知ったことですが、こんなマリファナツアーが年に何千とバスを仕立ててコロラド州にやって来ていたのでした。これはコロラド州の税収入にとってありがたいことですが、お隣の州へ吸い残しを持ち帰れば、立派な犯罪行為になってしまいます。 州単位で法律が異なるアメリカ的な現象です。

私の高校時代の同級生も、ミズーリーの実家に帰る時、同窓会の時などに、一番のコロラド土産はマリファナだと公言してはばからず、どこどこ産の何種が良いと、まるでワインの通のようなことを言い、コロラド州から持ち出しています。途中の州、カンサス州、ネブラスカ州で万が一捕まったら、痛いお灸を据えられることでしょう。実際問題として、一日何百万台の車が州境を越えていますから、パトカーに止められ、持ち物検査なんかをやられる可能性は低いのですが、違法は違法です。

私が毎日通っている道は、高原大地の牧草畑の真ん中を走っています。その牧草畑の一番奥まったはずれ、崖下に一町角ほどの立派なフェンスに囲まれ、特別丁寧に耕され、管理されている畑があります。移動トイレまで設置され、大きな散水トレーラーがあり、いつも車が何台か止まっていて、大雑把なアメリカ中西部の農業とはそこだけまるで違った畑つくりなのです。収穫期になるとパトカーまでが来ます。マリファナ農園です。

いくらマリファナ解禁のコロラドでも、認可を受けた畑で、それなりの管理体制を踏んで育て収穫しければなりません。これは酒税と同じように税金をシカととるためでしょう。立派な柵は誰かがマリファナを盗みに入り込むのを防止するためでなく、牛や馬が迷い込み、大麻を食べて“ラリッテ”しまうのを防ぐためだろう…と牧童たちは言っていますが…。

元々大麻はその繊維を利用して、荒っぽい布やロープを作る材料としてしか利用価値のないものでした。それに一種の雑草のようなもので、放っておいてもどんどん増える、どちらかと言えば始末に困るシロモノでした。葉っぱなどに誰も見向きもしませんでした。ところが、今では周りの州が禁止してくれているおかげで、マリファナはコロラドの農業、果樹園、ワインを追い抜く勢いで成長しています。

このブームも周りの州が解禁すると打撃を受けるでしょうし、一番の大打撃になるのは大手のタバコメーカーがマリファナ入りのタバコを製造販売することでしょう。まだ法的な問題が解決できていませんが、いずれ“マリファボーロ”とか“キャメリファナ”などのブランドが現れるかもしれませんね。

日本でマリファナ、大麻を生産すべきだ、「日本を取り戻すことは、大麻を取り戻すことだ」と主張しているのが安倍首相の奥さん、昭恵さんだと知って驚いてしまいました。でも、よく見ると昭恵さんは、日本の神社ではしめ縄などが大麻で作られていた、元々日本の神道、天皇、国家は大麻で守られていた、大麻は神聖な植物だったと主張し、“日本ホーリーヴァジル協会”という組織に大いに共感し、関わったことがあるそうです。何でもホーリーヴァジル、神聖なる薬草、大麻は奇跡の草で、放射能を除染できる、大麻から取れる油で石油に頼らなくてもよくなる…と言うのですから、アメリカ中西部の牧草畑をすべて大麻、マリファナ畑にしたら、とんでもない石油革命になるでしょうね。 

昭恵さん、大麻の繊維の利用だけでなく、葉っぱの方の素晴らしい効用を味わいにコロラドにいらっしゃいませんか?

-…つづく

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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