第227回:同性同士の結婚と州法
アメリカでは州によって民法が異なります。保守的な州もあれば、常に先進的な法案を次々と可決していく州もあります。ルイジアナ州では、1800何年だかに、フランスでナポレオンが創った民法をそのまま英訳して使っているくらいですから、日本に長く住んでいる有名なガイジンが、「フランスでは……」とフランス訛りで言うように、一般化して「アメリカでは……」とは、とても言えません。
でも、人口が多く、経済力がある大きな州が一つの法案を通すと、他の州に大きな影響を及ぼす…ということは多々あります。
ニューヨーク州で同性同士の結婚が認められるようになりました。
結婚は一つの社会的な単位ですから、その国のあり方、宗教などの影響を受け、一夫多妻があったり、一妻多夫があったり、公に同性愛が認められている社会があったり、逆に同性愛が重い犯罪とみなされる時代や社会があったりで、私たちの意識も流動的に変化してきています。
生物学的に"種の保存、発展を危うくし、種を絶滅に陥れる可能性のある行為は不道徳"とされてきた時代は過ぎ去ったようです。
テレビのニュース、新聞、雑誌で見ただけの印象ですが、男同士、女同士の待ちに待った結婚をしているカップルのほとんどが中年以上のかなりお年寄りが多いことに気が付きました。ヤング・アンド・ビユーティフルなカップルは見あたらず、もう長いこと一緒に暮らしてきた者同士が晴れて"お上公認の夫婦"になることができた……ということのようなのです。
同性同士の結婚には法的な意味合いが濃く、夫婦という名のもとに保護されている財産譲渡の権利、社会保障、被保護者としての健康保険、税金の申告など、私たちが結婚している上で当たり前だと思っていた権利がやっと同性の間でも認められることになったのです。
今働いている大学で、私も古株になりましたので、新しい教授や助教授を採用する時の雇用委員会のメンバーに担ぎ出されることが多くなりました。自分よりズーッと優れた学者さんたちを面接し、採用か不採用かを決定するのに(実際には学長が最終決定権を持ち、委員会は勧告、推薦をするだけなのですが…)奇妙な感じを捨て切れません。
そんな面接の時、相手に尋ねてはいけないタブーがあります。基本的には、彼もしくは彼女の専門以外のことだけに質問を絞り、プライベートなことを訊いてはいけません。
中でも、宗教のこと、何教を信じており、毎週教会もしくはモスク、神社に行くかなどは質問禁止事項です。加えて、教条主義キリスト教、過激なモスリムの運動をどう思うかなどとも訊くことは禁止です。どの政党を支持するかなどと訊くのもダメですし、あらゆる人種問題についても質問できません。
個人的な情報、何歳であるかも願書に書く必要がなく、尋ねることもできません。でも、これは面接で直接顔を会わせれば30代と60代は見間違うことはありませんし、何年にどこそこ大学卒業とあれば、それに今までの職歴を見れば、およその年齢は割れてしまいますから、形式的な条項かもしれません。
もちろん、同性愛主義者かどうか尋ねることも厳禁です。これも、なんとなく雰囲気でそうじゃないかな??程度には面接で分かりますが、採用のマイナス点には全くなりません。
それどころか、今までの数例ですと、同性愛の先生たちの方が優れた学者であり、教師である場合が多いことに気が付きました。同性愛主義者の方が、学問の分野でそれなりの活躍していますし、生徒さんの評判も良いのです。生活のために教職に就いているのではなく、勉強が好きな上、相手に対する思いやりがあるような気がするのです。
昨年採用したW先生もそんな人です。最高の先生で、彼女を採用したことは大学にとっても、生徒さんにとっても、本当に良かったと思っています。
学期の初め、終わりに開かれるパーティーには、自分のパートナー(同性の)と一緒に出てきてくれます。
まだ保守的な風土の残るコロラドの田舎町の大学で、彼ら、彼女らが少しずつ偏見に打ち勝っていくことを願わずにはいられません。
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