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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第228回:美男、美女はお金持ちになるってホント?

更新日2011/09/22


テキサス大学で経済学を教えている先生が、魅力的な美しい人は男女を問わず、ブス、ブ男よりお金持ちになる、収入がはるかに良い……という本を書きました。"Beauty Pays, Why attractive people are more successful"という題の本ですが、プリンストン大学から出版しました。

この先生、ダニエル・ハーメルメッシュ博士(Daniel Hamermesh, Ph.D.)は、労働力の質と量がいかに経済全体に大きな影響を及ぼすかという硬い"Labor Demand"という本を書いていますから(もっとも、私はこのムヅカシそうな本は読んでいないのですが)、"ウケ"ばかりを狙ったマスコミ学者ではなさそうです。

ですが、今度の本はかなりマスコミに取り上げられ、ちょっとした時の人にまでなっています。

ダニエル先生、まず人の外見を五つに分けました。随分乱暴なヤリカタですが、見る人によって、キレイだ、美男だ、美女だ、鼓動が早鐘のように打つほどの美形だ、吐き気がするほど醜悪だと、意見が違ってくるのを承知の上で、統計を取るための必要に迫られてでしょうか、ある程度荒っぽい分類しています。

さすがにランキング最下位はブス、ブ男を"吐き気をもようさせる"などとはせずに、"Homely"=素朴な……という表現を使っています。その次、下から2番目は"Quite plain"=ありふれた容姿とても訳したらいいでしょうか、真ん中はもちろん"平均的な"顔かたち、スタイルで、4番目は"Good Looking"=なかなかハンサム、美人、 5番目の最高ランキングが"Strikingly beautiful"=息を呑むほどの美しさ、と5段階に分けています。

この分け方には必ずしも賛成しない人もたくさんいるでしょう。でも、トップクラスの美形がブス、ブ男クラスよりはるかに多くの収入を得ているというデータを示されると、反論の余地がありません。怪しげなナイトクラブでのチップやウエイトレス、ウエイターのチップの話ではなく、広範な実業の世界のことなのです。

第4ランキング以上の見てくれの良い男女は、第3ランキング以下の平均もしくはそれ以下の人に比べ、生涯での収入に2千万円以上の差がつくというのですから、オダヤカではありません。

こんな調査では、女性の方に大きな差がでる……と予想していたところ、なんと男性の方がその差が歴然と出ているのです。第4ランキング以上の男性は、第3ランキング以下の容姿のオトコより17%も収入が多いというのです。女性の場合は12%の差しかつきません。

哀しい現実を打ち明ければ、私の妹二人のうち、一番下の妹は誰が見ても最大級の褒め言葉を口するほどの美人で、スタイルも良く、街で皆が振り返るほどです。プロとしてのキャリアーも高く、事業も成功し、当然、収入も私の何倍か恐らく十何倍かあります。

真ん中の妹も第4カテゴリーに入るくらいの美しさだと思います。彼女も当然、私よりはるかに高給をもらっています。どうにも、私たち3姉妹に、ダニエル先生のセオリーがイヤになるくらいピッタリと当てはまるのです。こうなると、私の立場がまるでなくなってしまいます

もっとも、大学の先生という薄給の職場には、服装、外見に無頓着な人が多く、今ツラツラ思い起こしてみると、なるほど第4ランキングに入れてもいいような先生はほとんどおらず、第5ランキングに至っては皆無であることに気が付きました。もともと、外見には無神経な教授連ですから、ハリウッドやテレビのスカウトの目に留まるような先生は皆無なのです。

この罪深い本を書いたダニエル教授の写真を見てみますと、ウチの仙人を細めにした、ハゲ、白髪、白ヒゲにメガネをかけた老人で、ご自身は自己採点で第3のクラス、平均値を与えています。でも、この本が結構売れてお金持ちになると、男前も上がるのかもしれませんが……。

こんな罪深いレポート、本は興味本位の暇つぶしになるだけだ、人は天から与えられたものを大切にして、精一杯生きるしかないのだ……と自分に言い聞かせていますが、負け惜しみのように響くのは、やはりどこかに自分も美しく生まれていれば違った人生を歩むことができたかもしれない……という愚痴が心の片隅にあるからでしょうか……。

 

 

第229回:見せるための台所と家の心

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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