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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第380回:州や郡で消費税が異なるアメリカ

更新日2014/09/18



国を維持していくには大変なお金がかかります。軍隊やお役所、学校、道路や河川のメインテナンス、それに警察、消防と、よくぞこんな膨大な費用のかかるコトガラをまんべんなくまとめ上げているものだ感心させられます。とても私の給料から差し引いた税金や消費税だけではとても賄いきれるものではありません。どこかにものすごい税金を払っている人、団体がいるのでしょう。

誰からどのように税金を取るかは昔から大きな問題でした。取る方としては、いかに相手にできるだけ気づかれないよう、直接負担の少ないように上手に取るかに腐心します。

最近では、情報が行き渡り、知らない間に税金を取られていた…という事態は少なくなりました。ビール好きの人たちはよく冗談で、「私は(俺は)多額納税者だ」などと呑み席で言っていたものです。

日本では、ビールの値段の60%近くが税金だといいますから、これほど高い税金を払ってビールを飲でいる国民は、世界広しといえどもいないでしょう。良くしたもので、税制の目を潜り抜けた発泡酒なるビールもどきが現われ、ビール好きの人の懐を多少は救っています。

所得税を上げるとなると、どこの層からどのくらい取るかで大きな議論になり、手に取るお給料に直接響きますから、政府としてはなかなか手が付けられません。しかし、消費税は簡単に1、2%ずつ、なし崩し的に上げていくことができるし、買物をするときに余程大きなものでない限り、1、2%上がった内税が価格に含まれていることなど、すぐに慣れてしまい、大量の税金を払っているという感覚がなくなります。

首相の安倍さん、今年の4月に消費税を8%に上げたばかりなのに、来年さらに10%に上げるつもりのようです。恐らくそうなってしまうでしょうね。政治家にとってこれほど楽な増収の方法はないのですから。そして、すぐにもヨーロッパ並みに20%の消費税になるでしょう。

今年の春、クロアチアの島で過ごしたとき、気が付いたのですが、消費税が25%でした。すべて内税だったので、領収書を見て、アレッ、こんなに払っていたんだと、びっくりさせられました。しかも、買うモノがそんなにない村でのことです。もちろん朝、海から帰ったばかりの漁師さんから魚を買うときには領収書も何もありませんから、そのままの口頭価格だけでした。

アメリカでは州、郡によって消費税が異なりますが、10%の消費税を取る州はありません。逆に消費税ゼロの州があるくらいです。もし、ある州で消費税25%取り、隣りの州が消費税なしだとしたら、当然25%の州の住人は隣りの州まで出かけて買い物をするでしょう。逆に、25%の州では物が売れず、税収入が減り、自らの首を絞めることになります。

オレゴン州は消費税ゼロ州です。そして、隣りのワシントン州、カリフォルニア州は消費税が7%前後掛かっています。ちょっとした金額の張るものを買うとき、州境の人はオレゴン州に出かけることになります。その品物を申告せずにワシントン州、カリフォルニア州に持ち込むことはもちろん違法で、密輸です。

とは言っても、州境に検問所があるわけでなし、一日に何百万台も行き来する個人の車をすべてチェックするわけにはいきません。軽くてすぐにさばけるタバコ類は格好の密輸品目なのでしょうか、よく何百カートンの煙草を積んだ車が捕まったとか、小さな記事になって載ります。

オートバイで何ガロンもの自家製ウイスキーをアパラチア山脈の山奥から幾つもの州を越えて運んできたモサ(猛者)に会ったこともあります。そのウイスキーをゴショウバン(御相伴)にあずかりましたが、そうまでして運び込む価値のあるものなのかどうか、私の味覚では判断できませんでした。

もっとも、彼はそれで儲けようというのではなく、自分の作ったウイスキーを旧友たちに味わってもらおう、そして官憲の目をくぐって州境を越えることにちょっとした冒険を見出している風ですが。でも、捕まればかなり面倒なことになり、大枚の罰金を払うことになるでしょうね。

私たちが住むコロラド州でたった一つの品目だけ消費税25%です。マリファナです。この異常に高い?消費税は、使い道が厳しく限定されており、公務員の給料やボーナスになることはありません。すべて教育目的に使わなければなりません。

まだこのマリファナ税制は始まったばかりですから、どれほどの消費税が集まり、それをどのように使ったかの報告が出ていませんが、結果を見るのが楽しみです。そのうち、"マリファナ図書館" とか"マリファナ記念スタジアム"が建つかもしれません。

やはり、税金は必要だし、必要悪とまでは言いませんが、この社会で暮らす以上は仕方がない、支払う義務があります。しかし、もう少し明確に、上手に使ってもらいたい、誰がどのように使ったか、どこにどのように行ったのかはっきり知りたい、誰もがアクセスできるホームページにきちんと載せてもらいたと思うのです。

税金から支払われている人たちの給料は、すべて役職名だけでなく個人名も入れて公開してもらいたいと思います。こっちが払っているのだから、明細付きの領収書を受け取るのは当然のことだと思いませんか?

 

 

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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